ドラグ・ショベルで鋼管束を荷下ろし作業中、ベルトスリングが切断

発生状況

 この災害は、道路整備工事現場において、車両積載型トラッククレーンからドラグ・ショベルで鋼管の束を下ろす作業中に発生したものである。
 災害発生当日、工事現場では、谷側の土止め、作業用道路等を整備することになっており、ダンプトラックとクレーンを使用して、型枠、鋼管を資材置場から工事現場に運搬し、搬入する作業を行っていた。
 荷下ろし作業は、当初の計画では、荷を運搬してきたトラッククレーンを使用する予定であったが、現場の地盤が軟弱なためトラッククレーンを荷下ろしする場所に接近させることができなかったため、現場で使用していたドラグ・ショベルで荷下ろし作業を行うこととした。
 そこで、鋼管束を両端アイ形のベルトスリングで1本吊りとし、ドラグ・ショベルのバケットに取り付けたフックに掛けて吊り上げて旋回したところ、ベルトスリングが切断し吊り荷が落下し、近くで道具小屋の建築作業に従事していた被災者が、落下した鋼管束の下敷きとなって死亡した。
 なお、ベルトスリングは事故後の調査で、一部に損傷が見られた。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 鋼管をトラッククレーンで運んできたにもかかわらず、そのクレーンを使用せずにドラグ・ショベルを使用したこと
2 ドラグ・ショベルによる荷の吊り上げ、運搬作業の方法について事前の検討が不十分で、適切な作業計画も作成されていなかったこと
3 ドラグ・ショベルの旋回範囲内に作業者が立ち入ることを禁止するための具体的措置を講じていなかったこと
4 ベルトスリングの1本が鋼管に挟まって取り出すことが出来なくなったために、残りのベルトスリングで荷を1本吊りで玉掛けして作業を続行したこと
5 ベルトスリングの点検が適切に実施されていなかったこと
6 安全管理体制が確立されていなくて、安全管理が不十分であったこと
7 作業者の安全意識が低調で、危険区域への立入禁止を指示されていたにもかかわらず、指示に従わなかったこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 荷下ろし作業には、作業の性質上やむを得ない場合を除きクレーンを使用すること
2 荷の積み下ろし作業を行う場合には、吊り荷の下方に作業者の立ち入りを禁止するための措置を講じること
3 荷の積み下ろし作業方法については、作業の開始前にその安全性について十分な検討を行って決定すること
4 吊り具には、十分な強度を有するものを選定するとともに、所要の安全率(ベルトスリングの場合5以上)を確保すること
5 機械設備等は日常点検および定期点検を適切に実施すること
 ベルトスリング等の吊り具については、点検・検査方法と廃棄基準を設けるとともに、管理責任者を定めて、定期検査を実施し、使用開始時期、点検検査結果が判るように台帳管理を行うとともに、使用頻度等を勘案して廃棄等の管理を行うことが必要である。
6 安全管理体制を整備するとともに、作業者に対して安全衛生教育を徹底すること

型枠上に鉄筋を仮置き作業中、型枠が倒壊

発生状況

 この災害は、鉄筋コンクリ-ト造の事務所新築工事現場において型枠が倒壊し、作業員3名が被災したものである。
 当日、この工事現場では、2階床の型枠建て込み作業、1階の型枠解体作業、2階への鉄筋荷上げ作業、2 階の配筋作業等が行われており、現場には元請の職員6名と、一次下請および二次下請から鉄筋工等23名の作業員が入場していた。
 朝の打合せ後作業が開始され、被災者達は、まず2階の床に配筋するための鉄筋約20トンを現場に設置されたタワ-クレ-ンを用いて、トラックから2階床に上げる作業にとりかかった。
 まず、トラックで搬入された鉄筋のうち約4 トン分を2階床の型枠上の何か所かに分けて荷上げし、次いで約4 トンの鉄筋を2階中央部分の何か所かに分けて荷降ろしを行った。
 続いて、トラックに残っていた約2 トンの鉄筋を型枠の中央部分に降ろそうとしたところ、突然中央部分の2階床の型枠が倒壊した。
 このため、荷外しをしていた3名のうち2名が鉄筋および型枠材とともに1階スラブ上に落ち、また、1階で型枠の解体作業の打ち合わせをしていたとび工の2名のうち1名が落ちてきた鉄筋、型枠材などに当たり負傷した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 型枠支保工の組立てが終了していないのに重量物を仮置きしたこと
2 関係作業者同士の連絡を十分に行なわずに作業を進めていたこと

対策

 この災害は、鉄筋コンクリ-ト造の事務所新築工事現場において型枠が倒壊し、作業員3名が被災したものであるが、その対策としては次のことが考えられる。
1 鉄筋等の重量物を仮置きするときには、型枠支保工等の強度を確認すること
2 関係作業間の連絡調整を十分に行ったうえで、作業を開始すること
3 ノンサポ-ト工法についての検討と安全教育を実施すること

旋回したドラグ・ショベルと煙突との間に挟まれる

発生状況

 この災害は、ゴミ焼却施設の建設工事現場において型枠部材の運搬中に煙突とドラグ・ショベルとの間に挟まれて発生したものである。
 災害発生当日、ケーブル用配管の埋設工事と電気ケーブルの接続中継点となるマンホールの据付工事を請負った4 次下請の会社に所属する被災者は、土工作業員として他の3 名の作業者とともにドラグ・ショベルによる掘削作業に従事していた。
 被災者が、掘削箇所のならし作業を行っていたところ、近くで作業をしていた同僚の型枠工から「型枠に使用する木片を取ってきてくれ」と依頼されたので、ゴミ処理施設の煙突の近くにある木片を取りに行き、それを持って現場に戻るためにドラグ・ショベルと煙突との間を通り抜けようとした時、ドラグ・ショベルが旋回してきたため、被災者はドラグ・ショベルと煙突との間に挟まれ死亡した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 車両系建設機械の稼働範囲で危険な区域への立入り禁止措置を行っていなかったこと
2 安全通路脇にセメント袋を積んだことにより、通路として利用しにくくなっていたこと
3 危険予知訓練(KYT) 等安全教育が不十分であったこと

対策

 この災害は、ゴミ焼却施設の建設工事現場において型枠部材の運搬中に煙突とドラグ・ショベルの間に挟まれたものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 車両系建設機械が運行する場所等については、立入禁止の措置を徹底すること
2 建設機械との接触防止等に関する安全教育を徹底すること
3 安全通路を確保し、そこを通行するよう徹底すること
4 危険予知訓練(KYT) 等安全教育を実施すること
5 作業計画を作成し、これに基づき作業を行わせること

換気口内地下ピットに溜まった雨水を内燃機関付ポンプで廃水作業中、一酸化炭素中毒

発生状況

 この災害は、ピットに溜まった雨水の排水作業中に、使用したガソリンエンジン付ポンプの排気ガスにより一酸化炭素中毒が発生したものである。
 当日の作業は、ドライエリアと呼ばれる地下換気口内のピットに溜まっていた雨水をガソリンエンジン付ポンプで屋外に排水するものであった。このドライエリアは、開口部は縦約5m、横約2m、深さ約9.5m、地下約4.5mのところに平らな中段があり、その下に更に開口部縦約0.6m横約0.9mの入口を持った最下層の空洞部分、いわゆるピットにつながっている。
 Aは同僚と二人で、午前8時半頃からドライエリア内の型枠片付け及びピット内の雨水の排水作業を行うこととなった。まず、雨水を排水するためドライエリア内に持ち込まれていたガソリンエンジン付ポンプで作業を開始した。ところが、雨水が思ったよりも多いため、もう一台をピット内に持ち込んで作業を行うことになり、同僚を他のベテラン作業員Bと交代させて、AとBは10時半に作業を開始した。
 その後、昼食時になっても2人が事務所に戻らないため、同僚のCがドライエリア内を探したところA及びBは、深さ約9.5mの最下層ピットで倒れていた。そこでCは、近くにいた作業員に声をかけ、7人で救出作業を行ったが、次々と全員が具合が悪くなった。

原因

 この災害の原因としては次のようなことが考えられる。
1 ドライエリア内が十分な広さでないにもかかわらず、作業能率だけを考えて排水ポンプを一台から二台に増設して作業を行ったこと
2 非常に狭いピット内に、ガソリンエンジン付ポンプを持ち込んで作業を行ったこと
3 換気装置を設置するなどピット内の換気をしないで、ガソリンエンジン付ポンプを使用したこと
4 作業開始前に、酸素濃度測定が行われていなかったこと
5 作業者に対して、当日の作業を考えた安全教育が実施されていなかったこと
6 救助方法等に対する対策が、全く行われていなかったこと
7 朝礼がマンネリ化していて、十分な危険予知が行われていなかったこと
8 作業方法の変更についての指示系統が、はっきりしていなかったこと
9 作業員の交替を行ったにもかかわらず、この作業員に対して安全作業について指示を行っていなかったこと

対策

 この災害は、新築工事現場内の換気口内ピットの排水作業中、使用したガソリンエンジン付ポンプによる一酸化炭素中毒により災害が発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1 自然換気が不十分な場所においては、ガソリンエンジン付ポンプを使用せず、電気による水中ポンプを使用すること。
2 ガソリンエンジン付ポンプはレンタルであったが、作業方法を検討してポンプの種類を選定すること。
 ガソリンエンジン付ポンプは、自吹式エンジンポンプ(最大揚程34m、最大揚水量550l/min、所要動力3.5ps/3600rpm)であった。
3 やむを得ず、内燃機関付ポンプを使用する場合は、送風機等により内部の換気を十分行うこと。
4 作業指示は、事前に作業計画を立て、具体的な作業指示をすること。
5 作業者に対する安全衛生教育を実施し、作業における危険認識・安全意識の高揚を図ること。
6 作業員の判断で作業方法を変更する場合は、届出を行わせること。
7 ピット内等狭い場所は、酸素濃度測定など酸素欠乏症対策を行うこと。

高所作業車を運転中、工事中の建物の壁と作業車の間に挟まれる

発生状況

 この災害は、6階建の工事現場の地下室において、コンクリート壁の仕上げのため、高所作業車に乗り移動中の被災者が、扉取付部の下がり壁と高所作業車の手すりとの間に挟まれたものである。
 当日の作業は、コンクリート打設後の壁面に残った型枠材接続用金具の跡をモルタルで埋めて仕上げる「Pコン埋め」と呼ばれる作業であった。
 作業は、職長と被災者及び同僚の3名の合計5名で行われ、職長と被災者はそれぞれが単独で高所作業車を運転して高所作業車上で作業を行い、他の2名は一組となって高所作業車上の作業及び高所作業車の下での作業、他の1名は単独で足場上で作業を行っていた。
 当日は、午前8時30分頃から地下での作業を開始したが、職長は職長会に出席するため途中で作業場所を離れ、他の4名は昼食時間をはさんで午後1時30分頃から午前と同じ分担で作業を開始していた。
 職長は、午後2時頃に作業場所に戻ったが、このとき、被災者と高所作業車1台が作業場所にいないことに気がついた。
 午後2時45分頃、被災者が、地下1階の下がり壁と高所作業車の手すりとの間にはさまれているのを他の会社の作業者が発見した。
 被災者は、直ちに近くの病院に運ばれたが、同日の午後3時30分に死亡した。

原因

 この災害の原因としては次のことが考えられる。
1 被災者は、高所作業車(作業床高さが10m未満)の運転について特別教育を受けていないため、高所作業車の運転に対する知識、技能が十分でなかったこと
2 高所作業車を用いて行う作業に関する作業計画が定められていなかったこと
 また、高所作業車を用いて行う作業の指揮者も定められていなかったこと
3 通り抜けようとした扉取付用開口部の寸法に対して、使用していた高所作業車の余裕がなかったこと

対策

 この災害は、6階建の工事現場の地下室において、コンクリート壁の仕上げのため、高所作業車に乗り移動中、扉取付部の下がり壁と高所作業車の手すりとの間に挟まれたものであるが、同種災害を防止するためには次のような対策の徹底が必要である。
1 高所作業車の運転の業務には、技能講習または特別教育を修了した者の中から、事業者が指名した者を就かせること。
 また、指名された者以外の者が運転することのないよう、「キー」の保管を確実に行うこと。
2 高所作業車を用いて作業を行うときは、あらかじめ、作業場所に適応する作業計画を定めること。
3 作業開始前に作業の場所、手順、分担、安全上配慮すべき事項等について十分な説明、打合せを行うこと。
 また、指揮者を定めて作業を行うこと。4運転者について、技能向上のための教育を実施すること。

ビル工事現場においてコンクリート打設作業中、型枠支保工が倒壊

発生状況

 この災害は、地上5階建て、鉄筋コンクリート造建物の建設工事において5階のB工区で、コンクリート打設中に発生したものである。
 当日は、5階B工区のコンクリート打設作業を計画していた。コンクリート打設作業は午前8時30分から開始され、コンクリート圧送車を2台使用し、2ヶ所に分けて実施されていた。
 午前中、B工区の約1/4のコンクリート打設作業を行い、計画通りに終了した。昼の休憩後、12時30分頃から残りのコンクリート打設作業を開始した。災害は、4本の柱と大梁に囲まれたスパンの内(B工区中の一部)で発生したものでその部分は、小梁を境にして階高が異なっていた。また小梁の片側は、午前中に施工した部分と同様の階高であったが、小梁の反対側は、下階(4階部分)が車路スロープとなっており、階高が他の部分よりも高くなっていた。
 午後1時頃、小梁を境に階高が低い側のコンクリート打設を行った後、階高が高い残り部分のコンクリートを打設していたところ、突然小梁の箇所が陥没し、打設部分のスラブが抜け落ちた。
 その結果、当該部位のスラブ上で打設作業に従事していた作業員6名全員が、階下の4階及び車路スロープ部まで型枠部材と共に墜落し、被災した。

原因

 この災害の直接的な原因は、型枠支保工として用いたパイプサポートの座屈によるものと考えられる。
 労働安全衛生規則第242条には、「パイプサポートを支柱として用いるものにあっては高さが3.5mを超えるときには、高さ2m以内毎に水平つなぎを二方向に設け、かつ、水平つなぎの変位を防止すること。」と規定されている。
 この災害においても、支保工の横変位を防止するための水平材は、上記の様に設けられていた。しかしながら、小梁と平行な方向の水平材は、壁まで達しており、その方向については拘束されていたと考えられるが、小梁に直交する方向の水平材は、壁まで達しておらず、支保工の横変位防止に寄与できていない状態であったと考えられる。さらに、この水平材は、全ての支保工に取り付けられるべきであったにもかかわらず、支保工の数本毎に配置されていた
 そのために支保工が、座屈を起こし、その支保工で支えられていた小梁が、落下したものと考えられる。

対策

 建設現場における作業効率促進のため、施工方法の標準化は、各施工業者毎に作製されており、施工性及び安全性の向上について、成果が上げられている。今回の災害は、この様な、標準化を過信した結果起きた災害であると言える。
 同種災害の再発防止のためには、次のような問題を繰り返さないことが重要である。
1 施工計画の整備
 この災害が、発生した部分は、標準組立図では対応できない部分であったにもかかわらず、標準組立図で対応してしまい、安全性の確認を怠った。
2 施工の実施
 支保工は、45cm間隔で組み立てられるべきところ、90cm間隔で組み立てられていた。また、支保工の横変位を防止するための水平材は、直角2方向に堅固な壁に達するように、に設けらる必要があるが1方向の水平材は、壁まで達しておらず、支保工の横変位防止に寄与できていない状態であった。さらに、水平材の数もサポート数本ごとにしか設置されていなかった。この様に、組立図に合致した施工が、正確に行われていなかった。
3 施工管理体制の不備
 前記したように、支保工の施工に不備があったにもかかわらず、形式的に点検されているだけで、支保工の間隔、水平つなぎの不備について、確認していなかった。

移動吊支保工の組み立て段取り作業中、型枠トラス梁を吊っていたワイヤーが切断

発生状況

この災害は、自動車PC橋架設の上部工事中に発生したものである。
 この工事は、移動吊支保工式架設工法(以下「支保工」という)により施工するもので、当日は、支保工を橋脚から橋脚へ前進させ、支持台に固定し、型枠トラス梁2本を一組に組立てる作業を行うことになっていた。
 組み立て方法は、メインガーターからチェーンで片側だけをつり下げている2本一組の型枠トラス梁を、2.8トンのホイストクレーン4台で同時に吊上げていくもので、左右の型枠トラス梁が密着し水平になった後、中央の連結部をピンとボルトで一体化するものである。
 これらの作業を繰り返し、8組目の型枠トラス梁が、ほぼ水平になり、連結部をピン及びボルトの孔が合致する状態になったので、クレーンによる巻き上げを止め、連結部にピンを差し込む段取り作業を始めた。
 そこで被災者が、トラス梁の中央部で段度作業を行っていたところ、載っていたトラス梁を吊っていたワイヤー2本がほぼ同時に切断した。
 そのため、外側の吊りチェーンを支点として型枠トラスが下方に落ちて、載っていた被災者は約16メートル墜落した。

原因

この災害は、自動車PC橋架設の上部工事中に、被災者が段取り作業のために載っていた型枠トラスの吊りワイヤーが切断したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1 2本のワイヤーのうち、いずれが先に切断したのかは特定できないが、切断部の状況、ワイヤーの損傷状況、6ヶ所の支持点のうち最も荷重のかかるのが切断したワイヤーであること等から推定するとこのワイヤーが先に切断したものと考えられる。
2 切断した12ミリワイヤーにかかる荷重は、吊り角度を考慮すると、最大時で2.73トンとなる。
 ワイヤーが新品の場合には、切断荷重が7.24トンであるが、繰り返し使用されているため、2.73トン前後の荷重に耐えられなかったのに、被災者が型枠トラスに乗り込んだ衝撃荷重が加わったものと推定される。
3 事故後の調査では、切断したワイヤーの点検が十分に行われていなかった

対策

1 新規の移動吊支保工工法で施工する場合は、計画段階で危険性の評価及び安全対策の検討を十分行うこと。
2 玉掛け用ワイヤロープの取り替え時期等が遅わないように、明確な廃棄基準・点検時期及び点検者を定め、点検の実施結果を記録する等点検体制の徹底を図ること。
3 玉掛用具の点検者等に対して、その日の作業開始する前の点検は勿論のこと、作業の実態に応じた点検回数、点検事項について、適切に行うことが出来るよう教育を行うこと。
4 玉掛用具の使用にあたっては、極端な曲げや鋭角なものと直接接触する吊り方等は、ワイヤロープの強度を低下させるだけでなく、その使用頻度によっては、切断することもありうるので行わせないこと。
5 連結作業時における安全な作業手順等を定め、責任者はそれを関係者に周知し、それを遵守させること。

コンクリート打設中、型枠が崩壊

発生状況

本災害は、火力発電所建設工事のうちの防波堤建設工事において発生した。
 本工事は、海底から海面上約1.7mの高さまで設置されたケーソン上に、さらに高さ2.5mの上部コンクリートを打設するものである。コンクリート打設作業は、ケーソン1函分の面積を6分割して1回の打設を行っていたが、災害が発生したケーソン北西部については、後日ケーソン上面に降りるための階段を設置するため、一部を空間として残す不規則な形状となっていた。このため、北西部のうちの南側の幅2.8m×長さ13.0m×高さ2.5mを災害発生日の前前日に打設し、災害発生当日は、幅2.0m×長さ8.6m×高さ2.5mを打設する予定であった。
 鋼製型枠の固定は、既設コンクリートに埋め込んであるセパレータに、当日施工する箇所の型枠を固定するセパレータを連結することにより行う予定であったが、上述のとおり不規則な形状であったため、既設側のセパレータの位置と型枠側のセパレータの穴の位置が合わなかった。このため、既設コンクリートにアンカーボルトを打ち込み、これにセパレータを取り付ける方法に施工方法を変更した。
 型枠を組み立て、コンクリートを打設していたところ、高さ約1.5mまで打設したとき、突然型枠2枚が崩壊して海中に転落し、型枠に設置されていた張り出し足場上でコンクリートの締め固め作業を行っていた作業者2名が型枠及び張り出し足場とともに海中に墜落、1名が海底で型枠の下敷きとなり死亡したものである。

原因

(1) アンカーボルトの引き抜き耐力、既設コンクリートの硬化の程度等について強度上の検討を十分に行わずに、型枠の支持方法としてアンカーボルトを使用したこと。
(2) 型枠の組立方法について、事前に十分な検討がなされておらず、具体的な施工計画が作成されていなかったこと。
(3) 施工上問題が生じた場合の対応方法があらかじめ明確に定められておらず、組織的な協議、検討を行わずに施工方法を変更したこと。

対策

(1) 型枠の構造について、生コンの側圧による崩壊を防止するため、十分な強度を持つ丈夫な構造のものとすること。
(2) 型枠組立に係る工法、作業手順、強度等について、事前に十分な検討を行った上で具体的な施工計画を作成し、これに従って作業を行うこと。
(3) 施工方法を変更する場合の手続きをあらかじめ明確にしておくこと。
(4) コンクリート打設作業について、打設速度等の打設方法について遵守すべき事項を関係作業者に周知しておくこと。