切り株の除去作業中、携帯用丸のこ盤で切創を負い死亡

発生状況

 この災害は、プレハブ倉庫新設工事において、敷地を整備するために敷地内の立ち木を伐採する作業を行っている際に発生した。
 作業者Aが所属するZ社は、この工事の2次下請として、倉庫を新設する敷地内の2本の立ち木(いずれも直径約70cm)の伐採と伐採後の敷地の整地の作業を請け負った。
 Z社は災害発生の前日までに、2本の立ち木を伐倒したが、整地のためには切り株を取り除く必要があり、ドラグ・ショベルを用いて地上に引っ張り出そうとしたが、根が地中深く張っていたため不可能ということが分かり、1次下請のY社と打合せを行った結果、切り株を地面の高さ以下まで削った後、その周囲を埋め戻す作業に変更した。
 災害発生当日、Aは、同僚の作業者Bと2人で切り株を削る作業に従事した。この切り株を削る作業は、元々予定されていなかったことから、Z社は必要な道具類を現場に持ち込んでおらず、AとBは、Y社が現場に持ち込んでいた携帯用丸のこ盤、電動ドリルおよびなたを借りて、作業に当たった。
 午前の作業を終了し、昼の休憩の後、取りかかった午後の作業では、Aは携帯用丸のこ盤を使用し、Bはなたを使用して、互いに背を向ける格好で作業していた。しばらくして、Bは、Aの悲鳴を聞き振り返ったところ、Aは切創を負い、出血していた。Aは、直ちに病院に搬送されたが、約2時間後に死亡した。
 災害発生の前日のY社とZ社の打合せでは、切り株を削ることは確認したが、具体的な作業方法は検討していなかった
 また、切り株があった地面は、傾斜しており、切り株の北側と南側とでは約40cmの高低差があり、AおよびBは、不安定な作業姿勢を強いられていた。
 さらに、Z社では作業者に安全衛生教育を実施しておらず、AおよびBは携帯用丸のこ盤の安全な使用方法についての知識が乏しかった。

原因

 この災害の原因として、次のことが考えられる。
1 斜面の切り株を取り除くために、安全な作業方法等を検討せず、携帯用丸のこ盤を用いるという無理のある作業方法を採用したこと
2 立ち木を代採する作業や携帯用丸のこ盤の使用について、作業者に安全衛生教育を行っていなかったこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 携帯用丸のこ盤を用いて斜面の切り株を取り除くこと自体無理な作業であるので、他の機械や工具を用いた安全な作業方法を検討すること
2 立ち木を代採する作業や携帯用丸のこ盤の構造、安全な使用方法等について安全衛生教育を行うこと
 作業者に対し、安全衛生教育を行い、携帯用丸のこ盤の構造、安全な使用方法等について周知させるとともに、危険な使用を行なわないよう徹底させる。

フォークリフトとともに廃材焼却ピット内に転落

発生状況

 この災害は、型枠工事を行うZ社の焼却場において、フォークリフトで廃材を焼却ピットに投入する作業中にフォークリフトとともに焼却ピットに転落し、作業者が死亡したものである。
 災害が発生したピットは、建築現場へ搬入する型枠資材の加工の際に発生する屑材や、建築現場より脱型された資材で再利用できない廃材を焼却するためのもので、構造は、地面を深さ2m掘削して表面をコンクリートで固めたものである。
 災害発生当日、作業者Aは、型枠資材の廃材を資材置き場からフォークリフトで運搬し、焼却ピットに投入する作業を行っていた。フォークリフトを投入口前に止め、フォークを揺すってフォークに載せた廃材を焼却ピット内に振り落としていたところ、フォークリフトが前に傾き、フォークリフトとともに焼却ピット内へ転落し、死亡した。
 焼却ピットが作られた当初は、ピットの手前70cmのところに高さ90cmの車止めが設けられていたが、その後、取り外されていた。
 Z社では、焼却ピットに廃材を投入する作業について、作業手順書を作成しておらず、安全衛生教育も実施していなかった。また、作業者がピット手前にフォークリフトを止めてフォークを揺すりながら廃材を投入しているのをZ社の経営者や管理者は日頃目撃していたが、転落防止のための対策を立てることなく黙認していた。

原因

 この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 焼却ピットの投入口に、フォークリフトが転落することを防止する設備がなかったこと
 焼却ピットが作られた当初は、投入口のピットの手前70cmのところに高さ90cmの車止めが設けられていたが、その後、取り外されたままになっていた。
2 作業手順書がなく、安全衛生教育も行われていなかったこと
 ピットに廃材を投入する作業について、作業手順書を作成しておらず、作業者への安全衛生教育も実施していなかった。
3 安全管理が不十分であったこと
 車止めがない投入口でフォークリフトを止めてフォークを揺するという危ない作業をZ社の経営者や管理者が黙認していた。

対策

 同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 転落するおそれのあるピット等の開口部には、作業者の墜落、転落を防止するための措置を講じること
(1) 開口部に作業者が近づくおそれのある場合には、作業者の墜落、転落を防止するための防護柵等を設置する。
(2) 開口部にフォークリフト等の車両を接近させて作業する場合には、車両が逸走してピットに落ちることを防止するための車止め等を設置する。
2 作業手順書を作成し、安全衛生教育を実施すること
 ピットへの廃材投入作業について、安全に作業を行うための作業手順書を作成する。さらに、作業手順書の内容を作業者に教育し、安全な作業方法を周知徹底する。
3 安全管理を徹底すること
 経営者や管理者による職場巡視を定期的に実施し、設備の不安全な状態や作業者の不安全な行動があった場合には、すぐに適切な措置を講じる。

5階建て新築工事において、資材の荷揚げ作業準備中に移動式クレーン(つり上げ荷重45t)が転倒

発生状況

 本災害は、鉄筋コンクリート造5階建て新築工事において、資材の荷揚げ作業開始前に発生した移動式クレーン(つり上げ荷重45t)の転倒事故である。資材の荷揚げ荷下ろし作業を請負った一次下請業者が引き起こしたものである。
 移動式クレーン転倒防止のためアウトリガおよびフロントジャッキの敷角として角材(木材)をそれぞれ2個ずつ敷こうとした。しかし、車体右後方の分1個が不足したため、代わりにバタ角4本(木材)を井の字型に組み合わせ敷設した。その後、荷揚げ準備開始の合図を受けて、ブームを下ろした。ブーム傾斜角度を50度まで下げたところ過負荷防止装置によりブームが自動停止し、移動式クレーンは転倒した。災害発生後の調査によると、車体右後方のアウトリガの下に敷角として使用していたバタ角が破損していたのが判明した。
 建物等の損壊はなく、物的損害は転倒した移動式クレーンの破損のみであった。なお、事故発生時の天候は晴れ、ほぼ無風であった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
 事故発生の直接的原因としては、移動式クレーンのアウトリガの下に強度不十分なバタ角を敷いたため、そのバタ角(高さ20cm、幅20cm)が折損したことがあげられる。バタ角が折損し、その厚さ(20cm)だけ移動式クレーンが落下したことより、移動式クレーンが転倒した。また、つり上げようとしていた型枠材は、移動式クレーン設置位置の後方36.3mの箇所に仮置きされていた。移動式クレーンの最大作業半径は32.65mであり、実際には、つり上げることはできない位置に設置されていた。このため、クレーン運転手は無理にブームを下げたおそれがある。
 一方、間接的原因としては、元方事業者が移動式クレーンを使用する作業に関し移動式クレーンの配置および転倒防止に関する計画を作成していないこと、この移動式クレーンの運転手は新規入場者教育を受けていなかったことなどがあげられる。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
 移動式クレーンを設置する場合、十分な広さおよび強度を有する鉄板等を敷設し、その上に移動式クレーンのアウトリガおよびフロントジャッキを張り出して作業を行うこと。また、事前に移動式クレーンの種類に応じた移動式クレーンの転倒防止方法を検討する。作業開始前、それを基に、荷揚げする資材等と移動式クレーンの設置位置の関係、荷揚げ作業の作業手順等を関係者で確認することもあげられる。
 さらに、元方事業者は移動式クレーンの転倒防止およびその配置に関する計画を作成し、この計画に基づき、新規入場者教育を実施し、適切な転倒防止措置を講じるよう関係請負人および関係請負人の労働者に必要な指導をすることもあげられる。

フォークリフトが走行中に転倒し、運転者が下敷きになる

発生状況

 この災害は、コンクリート打設用の型枠資材置場の敷地内において、フォークリフトが転倒し、運転者が下敷きになったものである。
 事業場は、コンクリートの型枠工事を業とするものであり、宅地造成工事の型枠工事を請け負って作業を行った。
 災害発生当日、小型トラッククレーンで午前9時頃現場に到達した被災者ら3名の作業者は数日前から始めた工事現場の型枠解体作業を開始した。
 午後3時頃、解体作業は終了したので、ベニヤなどの残材の一部をトラッククレーンの荷台に積み込み、会社の資材置場に持ち帰った。
 トラッククレーンを入り口近くに止めた被害者は、ヘッドガード付きフォークリフト(最大積載荷重2t 前進走行最高速度19km/h)を使用して、荷卸しを行った。
 フォークの爪の部分を使用して荷を卸し、フォークリフトを走行させて少し離れた置き場まで運ぶ作業を4~5回行って作業を終えた後、駐車場に向かった。かなり早い速度で走行していたが、駐車場の手前でブレーキをかけながら右にハンドルを切ったとき、フォークリフトが転倒した。
 被災者は、頭部をフォークリフトのヘッドガードを支える鉄枠とコンクリート路面との間に挟まれた。
 なお、被災者はフォークリフトの運転については無資格であった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 フォークリフトの運転を無資格者が行ったこと。
 最大積載荷重1t 以上のフォークリフトをフォ-クリフト運転技能講習修了者でない者が運転した。
2 フォークリフトのキーの保管管理がなされなかったこと。
 キーが差しっぱなしになっており、フォークリフトの運転が無資格者でも自由にできる状況にあった。
3 特定自主検査等点検整備が行われていないフォークリフトが使用されていたこと。
 全輪ともに磨耗限界を大幅に超えたタイヤが装着されていたため、コーナー部の旋回時にスリップしハンドルをとられ転倒した。
4 曲り角付近にもかかわらず、フォークリフトを前進走行最高速度近くの速度で運転したこと。
5 安全管理が行われていなかったこと。
 安全作業基準が作成されておらず、作業者の安全教育も不十分であった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画を作成し、関係作業者全員に徹底すること。
 作業計画を変更する場合には、フォークリフトの運転等資格を有する作業については、特に誰が行うかを明確にして関係作業者に指示することが重要である。
2 フォークリフトのキーを厳重に管理すること。
 運転無資格者が絶対に運転できないように、キーは、鍵の掛かった保管庫に保管する等責任者が管理する必要がある。
3 特定自主検査等点検整備を確実に行うこと。
 特定自主検査は毎年定期的に行うとともに、作業前点検及び月次検査を確実に行う必要がある。検査の結果、タイヤの摩耗等による不良箇所については、遅滞なく修復しなければならない。
4 最大積載荷重1t 以上のフォークリフトの運転は運転技能講習修了者が行うこと。
5 安全管理体制を整備確立して、安全管理を徹底すること。

高所作業車のデッキ上で型わくの解体作業中、デッキ手すりと橋桁下面との間にはさまれる

発生状況

 この災害は、有料道路上方にパーキングエリアをPC橋梁構造で設置する工事現場において、橋梁上部工橋桁の型わく解体作業中に発生したものである。
 当日の作業は、朝礼後、作業者数名が以前から使用している定型図表を用いてKY活動を行った後、それぞれに分かれて高所作業車(作業床高さ14.8m)による型わく解体作業を開始し、被災者は同僚1名とともに橋梁上部工橋桁の底板部分の型わく解体を開始した。
 作業は順調に進み、予定した底板の型わく解体が終了したので、被災者は高所作業車を操作してデッキを収納しようとしたが、操作を誤ったためにブームが逆に伸びてしまい、デッキ上の操作盤の手すりと橋桁底部との間に身体をはさまれた。
 そのとき、同僚もデッキの手すりと橋桁底部の間に身体をはさまれそうになったが、とっさに身をかわし助けを求めた。
 その後、45m離れた場所で作業を行っていた他の作業者が災害を知って駆けつけ、この高所作業車の旋回台部にあるもう1つの操作盤で操作し救出したが、7日後に死亡した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 無資格者が高所作業車の運転を行ったこと
 被災者が会社に提出していた高所作業車運転技能講習修了証の写しは、偽造されたものであり、会社はそれを確認することなく作業床の高さが10mを超える高所作業車の運転を行わせた。
2 作業指揮者の指名等を行わずに作業をさせたこと
 会社は、高所作業車を用いた作業を行うに際し、作業計画を策定せず、また、作業指揮者の指名、直接指揮の下に作業を行わせなかった。
3 作業空間が狭かったこと
 橋桁の型わく解体作業であったため、高所作業車のデッキ(作業床)と橋桁型わく底板との間が狭く、デッキ収納の操作を誤ったときに是正の操作を行う余裕がなかった。
4 KY活動等が形式的であったこと
 作業開始前にKY活動が行われたが、全員参加ではなく、また、形式的なもので災害防止効果の面で不十分であった。
 また、元方事業者による下請事業者が行う安全教育等に対する指導援助も不十分であった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 高所作業車の運転は有資格者に行わせること
 作業床の高さが10mを超える高所作業車の運転は、技能講習を修了した有資格者に行わせる。(安衛法第61条、令第20条第15号)
 また、事業者は、高所作業車運転技能講習修了証(技能講習修了証明書を含む)を写しではなく原本で確認する。
2 安全な作業計画の作成等を行うこと
 高所作業車を用いて橋桁の型わく解体作業等を行うときには、あらかじめ作業場所の状況、高所作業車の種類及び能力等について十分な検討を行い、適切な作業計画を策定するとともに、作業指揮者を指名して作業計画に基づく作業を直接指揮させる。(安衛則第194条の9、10)
3 作業開始前の作業打ち合わせ等を十分に行うこと
 その日の作業を開始する前に、全員参加でその日の作業に関する打ち合わせを行うとともに、実効あるKY活動を行わせる。
 また、元方事業者は、下請事業場に対して安全衛生教育などについて指導援助を行う。
4 定期自主検査等を確実に行うこと
 作業床の高さが2m以上の高所作業車については、1年以内に1回の有資格者による定期自主検査(特定自主検査)、1月以内に1回の定期自主検査、作業開始前の点検等を確実に実施し、必要な補修等を行う。(安衛則第194条の23~28)

運搬した廃材を焼却場のピットに落とす作業中、フォークリフトと共にピット内に転落し死亡

発生状況

 この災害は、建築用の型枠製造を行っている事業場の資材置き場で発生した廃材をフォークリフトで場内の焼却場まで運搬し、焼却用ピットに落とす作業を行っていたとき、フォークリフトがピット内に転落し、フォークリフトを運転していた作業者が死亡したものである。
 災害発生当日、資材置き場の責任者である作業者Aは、フォークリフトを使用して焼却用ピットへ廃材を投入する作業を行っていた。
 作業は、フォークリフトに載せた廃材をピットの手前まで運搬し、その場所でフォークを上下させ、その振動によって廃材をピット内に投入していたが、Aは誤ってフォークリフトとともに深さ約1.5mのピット内に転落した。Aはピット内から逃げられず、焼死した。
 10年前に焼却場を建設した当初、ピットの手前約1mに車止めがあり、ピット内への廃材投入作業は、その位置に停車したフォークリフトから作業者が廃材を運び、手で投入しており、当時作成された作業手順書にも、その方法が明記されていたが、その後、フォークリフトの衝突により車止めが破損したが修復されなかった。また、作業者が熱や煙を嫌ったことから、災害発生時点では、作業手順書が守られず、日常的にフォークリフトから直接、廃材を投入する方法で行われていたおり、事業者も黙認していた。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ピットへフォークリフトが転落することを防止する措置がなかったこと
 もともとピット手前1mに車止めが設置されていたが、その後、破損しても修復されなかった。
2 作業者が作業手順書を守らず、また事業者もこれを黙認していたこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 ピットへのフォークリフトの転落を防止する措置を講じること
 ピット手前に車止めの設置等、ピットへのフォークリフトの転落防止措置を講じるようにする。また、車止めの破損等によりその機能が維持できない状況が生じたときは、修復するまで間、誘導者を配置し、フォークリフトの誘導をさせるようにする。
2 作業手順書に従い、フォークリフトを停止し、手で投入する作業を行うよう作業者に周知徹底すること

建築中のマンションの地下ピットに入り酸素欠乏症となる

発生状況

 この災害は、大型マンションのバイク置場となる地下ピットの型枠解体作業中に発生したものである。
 被災者の所属する会社は、コンクリートのはつり、型枠の解体を業としており、この建設工事では型枠解体の作業があるときだけ現場に入っていた。
 災害発生当日は、コンクリートを打設した後、約4か月間放置してあったバイク置場となるピットの型枠を解体することになり、朝から5名が作業に着手した。
 このピット(ダメ穴)は、雨水が入ることを防ぐためスラブ型枠材で密閉してあったので、まずピットに入るためダメ穴部の鉄筋を切断して曲げ、次いでベニヤ板を鉄パイプで突き破りピット内を投光器で照らして中に入った。
 次いで、ピット外に居た作業者Bがピット内に入った作業者Aに投光器を渡そうと投光器を中に入れたが、受け取ろうとしないのでおかしいと思いピット内をのぞいたところ、作業者Aが壁に寄りかかるように倒れていた。
 これを見た作業者Bは、ピット内に水が溜まっており、作業には電動サンダー等を使用することから漏電で感電したと思い、他のピットにポンプを入れる準備をしていた別の作業者に電源を切り、また、作業者Aを救出するため他の作業者を呼ぶように依頼した。
 そして、作業者Bは、作業者Aを救出するためピット内に入ったが自分もピット内で意識を失って倒れた。
 その後、2人は救出されて病院に移送されたが、低酸素脳症のため作業者Aは2か月、作業者Bは1日の休業となった。

原因

 この災害は大型マンションのバイク置場となる地下ピットの型枠解体作業中に発生したものであるが、その災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 ピット内が酸素欠乏危険場所になっていたこと
ピットは4か月にわたり密閉され、しかも雨水が滞留していたため酸素欠乏危険場所となっていた。
 なお、消防署員が被災者らを救出後、ピット内の酸素濃度を測定したところ12.9%であった。
2 酸素欠乏危険について認識がなかったこと
被災した2人の作業者は、作業のためにピットに入る前に酸素濃度の測定をせず、また、ピット内の換気も行わないままピット内での作業および救助を行った。
3 安全衛生管理が不十分であったこと
 この建築工事は、大規模でかなり長期間に亘って実施されていて災害が発生した地下ピットのようにコンクリートを打設したのち密閉した状態で放置している場所もあったのに、元方事業者をはじめとして酸素欠乏危険のおそれがあることを誰も意識していなかった。
 そのため、密閉されていたピット内での作業に先立って酸素濃度の測定や換気等を実施していなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業開始前に酸素濃度等を測定すること
長期間密閉しているピット内で雨水等が滞留している個所で作業を行う場合には、その日の作業開始前に酸素濃度、炭酸ガス濃度、硫化水素濃度等を測定し、作業個所の安全を充分に確認したうえで作業を指示する。(酸欠則第3条関連)
2 換気を十分に行うこと
 酸素欠乏危険場所で作業を行わせる場合には、作業場所の酸素濃度を18%以上(硫化水素の発生がある場合には10ppm以下)に保つよう十分に換気する。(酸欠則第5条関連)
3 作業主任者を選任して次の職務を履行させること
 (1)作業の方法を決定し、労働者を指揮すること
 (2)作業開始前、再び作業を開始する前に酸素濃度を測定すること
 (3)測定器具、換気装置、空気呼吸器等を点検すること
 (4)空気呼吸器等の使用状況を監視すること
4 酸素欠乏危険について教育を実施すること
 労働者に対しては、あらかじめ酸素欠乏症等の危険およびその防止対策について特別教育を実施する。(酸欠則第12条関連)
5 安全衛生管理を行うこと
 事業者および特定元方事業者は、酸素欠乏等の危険の有無についてあらかじめ検討を行うとともに、その防止対策、教育実施等について十分に安全衛生管理を実施する。(安衛法第30条関連)

橋台用の型枠を吊り上げ中に墜落

発生状況

 この災害は、国道新設工事のうち橋台の建造作業中に発生したものである。
 この工事は、2つの橋台と1つの橋脚で構成される橋梁を建設するものであるが、災害は橋台の型枠組立に付随する型枠の荷上げ作業中に発生した。
 前日までに橋台の型枠7段目までのコンクリート打設が終了しており、災害発生当日は、被災者の会社から世話役を含め9人の作業員、それにオペレーター付の移動式クレーン(25t)で朝から型枠の組立作業が行われ、午前中には8段目と9段目の鉄筋組立てと型枠の取付けが終了した。
 午後は、最後の10段目の型枠取り付け作業を行うことになり、被災者は地上で型枠の束の玉掛けをして足場に昇り、移動式クレーンの運転士に合図をして荷の取込み、玉外しを行っていたが、型枠6枚を束にして吊り上げたところ、風で荷振れしたので、再度地上に降り、6枚束を2組にして玉掛けをしたのち足場(高さ約13m)に昇り、合図して吊り上げたところ、型枠で被災者の姿が運転士の視界から一瞬消えたときに、足場上から転落し、肺挫傷、大腿骨骨折などにより同日中に死亡した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1   風が強い中で作業を強行したこと
   午後の作業を開始したときには、山間部でもあり、かなりの風が吹いていたので移動式クレーン運転士が「無理だから止めよう」と再三言ったのに、被災者が「大丈夫」と言って、荷振れを止めるため型枠を倍にして吊り上げさせるなど作業を強行したことが原因の一つである。なお、現場付近の風速は、4~5m/秒と推定される。
2   墜落防止措置が不十分なまま荷の取り込み作業を行ったこと
   墜落直前の被災者の動作の目撃者はいないが、被災者の立っていた足場には92cmの高さにパイプ手すりが取付けられていたので、通常の状態では墜落することが考えられないので、足場の高さに来た型枠を手で取り込もうとしたときに、手すりを乗り越えたか、手すりと足場の作業床との間から墜落したものと推定される。
   なお、被災者は、命綱は着帯していたが、使用はしていなかった
3   安全管理を行っていなかったこと
   朝のミーティングで現場責任者から「風が強いから気をつけるように」との注意があったが、作業が開始されてからのち、現場の状況を見ながら適切な指示などは行われていなかった。
   また、被災者は、大工職であり、玉掛けの資格者ではないのに、玉掛け・玉外しの作業を行わせるなど安全管理を行っていなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。

1   風の強いときには荷上げ作業を行わないこと
   10分間の平均風速が10mを超える場合には移動式クレーンによる作業は禁じられている(クレーン則第74条の3)が、それ以下の風速であっても荷振れ等を増幅するおそれがあるので、現場責任者はその時々の状況を判断し、作業の中止などを命ずることが必要である。
2   無資格者に玉掛け作業を行わせないこと
   吊り上げ荷重が1t以上の移動式クレーン等の玉掛け作業は有資格者でなければできないことになっているので、そのような作業の場合には必ず有資格者を配置しなければならない。
3   墜落防止措置を講ずること
   作業床と手すりとの間隔が90cmもあるときには、中間に中さんを取り付けること、又は命綱を取り付けて確実な墜落防止を行うことが必要である。
4   安全管理を徹底すること
   現場責任者は、ミーティング等において抽象的な注意を行うだけではなく、具体的に指示をするとともに、作業状況をチェックし、作業中止などの適切な指示を行うことが必要である。
   また、あらかじめ、作業に必要な人員、資格者の配置を行うとともに、作業方法・手順を明確に定め指示することが必要である。