真夏の木造家屋建築工事現場にて、作業に従事していたところ、休憩中にふらつき、ろれつが回らなくなり、痙攣し始めた

発生状況

 被災者は、朝方より木造家屋建築工事現場で家屋の基礎の型枠材の加工、組み立て作業に従事していた。休憩は、1時間に1回(50分労働の後、10分の休憩)、昼休憩は12時から13時まで、午後も1時間に1回の休憩をとっていた。
 夕方の休憩時、被災者がふらふらし始めたので、頭に水をかけて冷やした。しかし、その後ろれつが回らなくなり、痙攣を起こしたので、空のポリタンクを枕にして寝かせた。
 それでも回復する兆しがなかったので、救急車の出動を要請したが、搬送された後「熱射病による多臓器不全」により死亡した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 高温下での作業であったこと。
2 監督者による水分、塩分の摂取量が把握されていなかったこと。
3 休憩時間における遮光されている場所がなかったことに加え、被災者の作業衣も保熱し易く、熱中症対策が十分でなかったこと。
4 熱中症予防のための指標であるWBGT(Wet-bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)値の測定を行っていなかったこと。
5 ろれつが回らない状態である時は、直ちに救急要請を行う等、熱中症に関する安全衛生教育が不十分であったこと。
6 元請による作業場所の巡視が、3日に一回程度と少ない頻度であったこと。

対策

 類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 監督者は、水分、塩分の定期的な摂取の程度を把握し、不足する場合は摂取させること。
2 作業場所又はその近傍に、臥床することができる冷房を備えた休憩所、又は日陰等の涼しい休憩場所を確保し、また、冷たいおしぼり等身体を適度に冷やすための、物品及び設備を設けること。
3 熱を吸収し、保熱し易い服装は避け、通気性、透湿性の良い服装、及び通気性の良い帽子等を着用させること。
4 作業の休止時間、及び休憩時間を確保し、高温多湿作業場所の作業を連続して行う時間を短縮すること。また、作業の状況に応じ、身体作業強度(代謝率レベル)が高い作業を避け、作業場所を変更するなどの対策を実施すること。
5 熱中症の症状、予防方法、応急処置等について、労働者、作業を管理する者並びに関係請負人に、安全衛生教育を実施すること。
6 WBGT予報値、熱中症情報を事前確認のうえ、実際にWBGT値を測定し、身体作業強度の区分に応じた作業となるよう活用すること。14時から17時の炎天下等でWBGT値が基準を大幅に超える場合は、連続作業時間及び作業時間を短縮し、長めの休憩時間を設ける等、作業時間の見直しを行うこと。
7 監督者の現場巡回回数を増やし、上記の措置を講じること。

フルハーネス特別教育について

型枠工事は作業床があることがほとんどであるため、型枠工事での事例がなく、分かりにくく難しい点がありました。

  • 高さ2m以上の構造の足場組立・解体又は作業変更において、作業過程の一部に作業床を設けることが困難な個所では、墜落防止措置として、安全帯を使用しなければならない(事前に特別教育を受けなければならない)
  • 落下距離が5m以下でのフルハーネスの使用は地面に激突する可能性がある(落下距離を5m以上にする、もしくは落下距離が短くても問題が無いように別途安全装置を備える、または胴ベルトを使用する)
  • 体重に応じた器具の選定(85kg以上の体重の人は注意)
  • フック位置が腰より低い場合は、第二種ショックアブソーバーを使用する
  • フルハーネスは、二丁掛タイプのダブルランヤードにする(掛け替えのさえ、必ず片方が掛けてあるようにする)
  • フルハーネスの装着は緩めない(動きづらくても緩めない)
  • 1本の水平親綱を二人で使用しない
  • 装着前に器具の点検
  • 救助は10分以内(二次災害に注意)
  • ヘルメットには使用期限がある

ガイドライン上、フルハーネス型墜落防止措置を必ず使用しなければいけない落下距離は6.75m以上(建設業は5m以上を推奨)ですが、手すりのありなしや、安全ネットの設置状況で変わるのか、ややはっきりしない部分もあります。基本的に建設現場では様々想定がされるため、文字ですべて表すことはできないのかもしれません。あくまでも墜落する可能性がある場所という定義になります。

落下距離が5m未満なら銅ベルト型安全帯(フルハーネスだと激突するため意味がない)、5m以上ならフルハーネス型安全帯の使用になると思います。

今後、落下距離が短くても、フルハーネスが使用できるような装置が開発されれば、全フルハーネスになる気がします。現時点では、落下距離が5m未満(落下距離が短くても作動する安全装置がない場合)でフルハーネスを使用することは逆に危険であることは十分に理解しないといけません。

ダブルランヤードはとても重いですね。しかし命を守るために装着しましょう

新型コロナワクチンの接種指針改定

WHO=世界保健機関は、新型コロナウイルスワクチンの接種指針を改定しました。健康な成人や子どもには定期的な追加接種を「推奨しない」としています。

WHOが28日に発表した新たな指針では、新型コロナワクチンの対象者を接種の優先順に3つのグループに分類しています。

最も接種を優先すべき対象としては、高齢者・重い併存疾患がある成人・免疫不全の人・妊婦・医療従事者を挙げ、「6か月から12か月ごとの定期接種を推奨する」としました。

2番目のグループは健康な成人らで、1回の追加接種は推奨するものの、2回目以降は、公衆衛生上の効果が比較的低いとして、「推奨しない」としました。

3つ目の、生後6か月から17歳の健康な子どもについては、ワクチンは安全で効果はあるものの、感染したとしても負担が軽いことから、接種は費用対効果などにより国ごとに判断するよう勧めています。

小型移動式クレーンが転倒し、作業者がジブに押されて墜落

発生状況

 この災害は、桟橋上に設置した小型移動式クレーンで足場用単管の束を4m下の台船に下ろそうとしたときに発生した。
 災害発生当日、港湾工事を行うため、桟橋に停泊している台船上で単管足場の組立て作業を行っていた。桟橋から台船への足場部材の揚重作業は、桟橋上に設置した小型移動式クレーン(つり上げ荷重2.32t、4本のアウトリガーを有するクローラクレーンで、通称「カニクレーン」と呼ばれるもの)で行い、作業者A~Cの3人が作業を担当した。
 午前中は、Bが移動式クレーンを運転し、AとCが玉掛けを担当して足場部材を3回に分けて台船に下ろした。昼食後に行われた4回目の揚重作業は、Aが1人で行うことになり、単管18本(重量290kg)の束を玉掛けした後、移動式クレーンを運転して、つり荷を台船の真上の位置に持って行くためジブを旋回および起伏したところ、つり荷が桟橋上に置かれた資材カゴに引っ掛かった。そこで、Aは移動式クレーンの運転を停止し、移動式クレーンの傍らの運転位置を離れて資材カゴからつり荷を外そうとしたときに、移動式クレーンが横転したため、Aはジブに押されて桟橋から台船上に墜落した。
 移動式クレーンが横転したとき、アウトリガーの張り出し状態と作業半径から定格荷重は160kgであったが、つり荷は290kgと過荷重の状態であった。また、設置場所が狭かったため、左右のアウトリガーの張り出し状態が異なっていた。なお、この移動式クレーンのアウトリガーは4隅に設けられていて、張り出し方向と張り出し幅をそれぞれ3段階で調整できるようなっていた。
 さらに、Aは玉掛け技能講習を修了していたが、小型移動式クレーンを運転するための資格(移動式クレーン運転士免許又は小型移動式クレーン運転技能講習修了)は持っていなかった。

原因

 この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 つり荷を移動中に過荷重になったこと
 移動式クレーンが横転したときのつり荷の重量は290kgであったが、アウトリガーの張り出し状態と作業半径から定格荷重は160kgであり、過荷重となっていた。さらに、アウトリガーの張り出し状態が左右で異なっていたため、横転しやすくなっていた。
2 資格がない者に移動式クレーンを運転させたこと
 小型移動式クレーンを運転するための資格の有無を確認しないまま、資格がない者に小型移動式クレーンを運転させた。
3 1人作業であったこと
 つり荷を玉掛けし、周囲の状態を確認しながら移動式クレーンを運転する作業を1人の作業者に行わせていた

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 移動式クレーンの定格荷重を超える荷をつり上げないこと
 移動式クレーンを用いて作業を行うときは、作業計画、移動式クレーンの設置場所とその周囲の状況から定格荷重をあらかじめ確認しておき、定格荷重を超える荷をつり上げないようにする。さらに、アウトリガーの張り出しを左右同じにし、移動式クレーンを安定した状態で使用することも重要である。
2 移動式クレーンは資格のある者に運転させること
 移動式クレーンは、その能力(つり上げ荷重)に応じた資格を有する作業者に運転させなければならない。つり上げ荷重が1t以上5t未満の小型移動式クレーンについては、移動式クレーン運転士免許を受けた者または小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者に運転させる必要がある。
3 移動式クレーン作業は2人以上の作業者に行わせること
 移動式クレーンによる荷の移動作業では、移動式クレーンを運転する作業者1人、荷の玉掛けとつり荷の確認を行う作業者1人のほか、必要に応じ監視人等を配置し、周囲の安全にも注意しながら作業を行わせる。

フォークリフトを運転中、曲り角で転倒し、運転者が死亡

発生状況

 この災害は、フォークリフトを運転して移動中に発生したものである。
 災害発生当日、職長Aおよび作業者BとCの3人は、工事現場に搬送する大型の掘削機械をトラックに積み込むための作業を資材置き場で行っていた。午前中は掘削機械をトラックの荷台に乗る大きさに解体し、午後、解体した機材を積み込むことにした。しかし、資材置き場に常備されているフォークリフトが他の作業で使用されていたため、敷地内の本社事務所のフォークリフトを借りることになった。
 そこで、AはBにフォークリフトを取りに行くよう指示し、Bは本社事務所でキーが挿入されたままのフォークリフト(最大荷重3t)を運転して資材置き場まで移動中、建物の角で右折したところ、フォークリフトがスリップし、転倒した。Bは運転席から投げ出され、転倒したフォークリフトのヘッドガードの下敷きとなった。Bは病院に搬送されたが、死亡した。
 Bは、フォークリフト運転技能講習を修了しておらず、AもBがフォークリフト運転の資格を持っていないことを知っていた。
 また、転倒したフォークリフトは、毎朝の作業前にエンジンオイルと冷却水を点検していたが、タイヤはすり減っていて溝がなかった。さらに、月例検査、年次検査(特定自主検査)は実施されていなかった。

原因

 この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 フォークリフトの運転を無資格者に指示したこと
 Aは、Bがフォークリフト運転技能講習を修了していないことを知りながら、Bにフォークリフトの運転を指示した。
2 フォークリフトの点検や整備が適切に実施されていなかったこと
 転倒したフォークリフトを毎朝、作業前に点検していたが、タイヤがすり減っていて溝がないなど整備が適切でなかった。また、月例検査、年次検査(特定自主検査)を実施していなかった。
3 フォークリフトにキーが挿入されたまま誰でも使える状態で置いていたこと

対策

 同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 フォークリフトの運転は、資格者に行わせること
 最大荷重1t以上のフォークリフトの運転は、フォークリフト運転技能講習を修了し、運転に必要な知識、技能を持っている者に行わせる必要がある。また、最大荷重1t未満のフォークリフトの運転は、フォークリフト運転技能講習またはフォークリフト運転特別教育を修了した者に行わせる必要がある。
 事業場では、フォークリフト運転の資格者名簿等を作成し、管理者等関係者に周知するとともに、無資格者の運転は禁止する。
2 フォークリフトについて、月例検査および年次検査(特定自主検査)を実施するとともに、作業前の点検を適切に行うこと、また、点検、検査の結果、異常を認めた場合は、補修整備した後に使用すること
3 フォークリフトは、無資格者が使用できないように管理すること
 運転者がフォークリフトを離れるときは、必ずキーを抜き、確実に保管し、無資格者が運転することのないようにする。

フォークリフトで持ち上げた作業台が転落し、乗っていた2名が被災し1名が死亡

発生状況

 この災害は、Z社の工場建屋の増設工事において、既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げるため、フォークリフトで持ち上げた作業台に乗って作業していた2名の作業者が、作業台とともに転落したものである。
この増設工事は、Z社(発注者)がY社(元請)に発注して工事が進められ、増設フロアの建設工事がほぼ終わった後、既設フロアから増設フロアに生産設備を移設する作業をY社から請け負ったX社が行っていた。
 移設作業の初日、X社の職長Aと同僚の作業者B~Dの4人は、まず、既設フロアと増設フロアを仕切っていたブルーシートを取り外した。その後、既設フロアで生産設備を解体し、これを増設フロアに移動する作業を行った。1日の作業を終えて現場を去ろうとしたとき、Z社の担当者Eから「その日の作業を終えたらブルーシートを元通りにつり下げておくように」との指示があった。そこで、A~Dは、現場付近にあった作業台(パレットの周囲を手すりで囲ったもの)をフォークリフトで持ち上げ、ブルーシートのつり下げ作業を行うことにした。BとCが作業台に搭乗し、Dはフォークリフトの運転を、Aは作業の指揮を行った。
ブルーシートのつり下げ作業を終えて、作業台を降下させたとき、作業台がブルーシートに引っかかったので、Dがフォークリフトを後退したところ、作業台が傾いて落下し、BとCは作業台とともに4mの高さから墜落した。2人は直ちに病院に搬送されたが、Bは間もなく死亡した。
生産設備の移設作業期間中も作業時以外は既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げておくことは、Z社からY社に伝わっていなかった。そのため、Y社がX社に示した計画書にはブルーシートのつり下げ作業は含まれておらず、高所作業用のローリングタワーや高所作業車を用意していなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1 発注者(Z社)と元請(Y社)との連絡調整が十分でなかったこと
 生産設備の移設作業期間中も作業時以外は既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げておくことは、発注段階でZ社からY社に伝わっていなかった。さらに移設作業期間中のブルーシートつり下げ作業もZ社の担当者が直接X社の職長に指示したため、Y社はこのことを認識しておらず、Y社がX社に示した計画書にはブルーシートのつり下げ作業は含まれておらず、高所作業に必要なローリングタワーや高所作業車を用意していなかった。
2 高所作業を行うため必要な措置を講じないまま高所作業を行ったこと
 足場を組み立てる、ローリングタワー又は高所作業車を使用する等の措置を講じないまま、作業台をフォークリフトのフォークに載せて持ち上げ、高所作業を行った

対策

 同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 発注者と元請との連絡調整を十分に行い、安全な計画を立て作業を行うこと
 安全な作業計画を立てるためには、発注者と元請が工事開始前に連絡調整を十分に行い、発注者からの伝達事項や要望の漏れがないようにする。また、臨時の作業が発生した場合には、まず発注者と元請が必要な機械・設備を確認し、安全な作業の手順を検討し、これを下請けを含めた関係作業者に周知徹底することが重要である。
2 高所作業を行うため必要な措置を講じた上で高所作業を行わせること
 フォークリフトの乗車席以外の箇所に人を乗せることは原則として禁止されている。足場を組み立てる、ローリングタワー又は高所作業車等を使用するとともに、十分な安定度を確保、作業者に保護帽や安全帯を使用させる等の墜落防止措置を講じた上で高所作業を行わせることが重要である。