運搬した廃材を焼却場のピットに落とす作業中、フォークリフトと共にピット内に転落し死亡

発生状況

 この災害は、建築用の型枠製造を行っている事業場の資材置き場で発生した廃材をフォークリフトで場内の焼却場まで運搬し、焼却用ピットに落とす作業を行っていたとき、フォークリフトがピット内に転落し、フォークリフトを運転していた作業者が死亡したものである。
 災害発生当日、資材置き場の責任者である作業者Aは、フォークリフトを使用して焼却用ピットへ廃材を投入する作業を行っていた。
 作業は、フォークリフトに載せた廃材をピットの手前まで運搬し、その場所でフォークを上下させ、その振動によって廃材をピット内に投入していたが、Aは誤ってフォークリフトとともに深さ約1.5mのピット内に転落した。Aはピット内から逃げられず、焼死した。
 10年前に焼却場を建設した当初、ピットの手前約1mに車止めがあり、ピット内への廃材投入作業は、その位置に停車したフォークリフトから作業者が廃材を運び、手で投入しており、当時作成された作業手順書にも、その方法が明記されていたが、その後、フォークリフトの衝突により車止めが破損したが修復されなかった。また、作業者が熱や煙を嫌ったことから、災害発生時点では、作業手順書が守られず、日常的にフォークリフトから直接、廃材を投入する方法で行われていたおり、事業者も黙認していた。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ピットへフォークリフトが転落することを防止する措置がなかったこと
 もともとピット手前1mに車止めが設置されていたが、その後、破損しても修復されなかった。
2 作業者が作業手順書を守らず、また事業者もこれを黙認していたこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 ピットへのフォークリフトの転落を防止する措置を講じること
 ピット手前に車止めの設置等、ピットへのフォークリフトの転落防止措置を講じるようにする。また、車止めの破損等によりその機能が維持できない状況が生じたときは、修復するまで間、誘導者を配置し、フォークリフトの誘導をさせるようにする。
2 作業手順書に従い、フォークリフトを停止し、手で投入する作業を行うよう作業者に周知徹底すること

建築中のマンションの地下ピットに入り酸素欠乏症となる

発生状況

 この災害は、大型マンションのバイク置場となる地下ピットの型枠解体作業中に発生したものである。
 被災者の所属する会社は、コンクリートのはつり、型枠の解体を業としており、この建設工事では型枠解体の作業があるときだけ現場に入っていた。
 災害発生当日は、コンクリートを打設した後、約4か月間放置してあったバイク置場となるピットの型枠を解体することになり、朝から5名が作業に着手した。
 このピット(ダメ穴)は、雨水が入ることを防ぐためスラブ型枠材で密閉してあったので、まずピットに入るためダメ穴部の鉄筋を切断して曲げ、次いでベニヤ板を鉄パイプで突き破りピット内を投光器で照らして中に入った。
 次いで、ピット外に居た作業者Bがピット内に入った作業者Aに投光器を渡そうと投光器を中に入れたが、受け取ろうとしないのでおかしいと思いピット内をのぞいたところ、作業者Aが壁に寄りかかるように倒れていた。
 これを見た作業者Bは、ピット内に水が溜まっており、作業には電動サンダー等を使用することから漏電で感電したと思い、他のピットにポンプを入れる準備をしていた別の作業者に電源を切り、また、作業者Aを救出するため他の作業者を呼ぶように依頼した。
 そして、作業者Bは、作業者Aを救出するためピット内に入ったが自分もピット内で意識を失って倒れた。
 その後、2人は救出されて病院に移送されたが、低酸素脳症のため作業者Aは2か月、作業者Bは1日の休業となった。

原因

 この災害は大型マンションのバイク置場となる地下ピットの型枠解体作業中に発生したものであるが、その災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 ピット内が酸素欠乏危険場所になっていたこと
ピットは4か月にわたり密閉され、しかも雨水が滞留していたため酸素欠乏危険場所となっていた。
 なお、消防署員が被災者らを救出後、ピット内の酸素濃度を測定したところ12.9%であった。
2 酸素欠乏危険について認識がなかったこと
被災した2人の作業者は、作業のためにピットに入る前に酸素濃度の測定をせず、また、ピット内の換気も行わないままピット内での作業および救助を行った。
3 安全衛生管理が不十分であったこと
 この建築工事は、大規模でかなり長期間に亘って実施されていて災害が発生した地下ピットのようにコンクリートを打設したのち密閉した状態で放置している場所もあったのに、元方事業者をはじめとして酸素欠乏危険のおそれがあることを誰も意識していなかった。
 そのため、密閉されていたピット内での作業に先立って酸素濃度の測定や換気等を実施していなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業開始前に酸素濃度等を測定すること
長期間密閉しているピット内で雨水等が滞留している個所で作業を行う場合には、その日の作業開始前に酸素濃度、炭酸ガス濃度、硫化水素濃度等を測定し、作業個所の安全を充分に確認したうえで作業を指示する。(酸欠則第3条関連)
2 換気を十分に行うこと
 酸素欠乏危険場所で作業を行わせる場合には、作業場所の酸素濃度を18%以上(硫化水素の発生がある場合には10ppm以下)に保つよう十分に換気する。(酸欠則第5条関連)
3 作業主任者を選任して次の職務を履行させること
 (1)作業の方法を決定し、労働者を指揮すること
 (2)作業開始前、再び作業を開始する前に酸素濃度を測定すること
 (3)測定器具、換気装置、空気呼吸器等を点検すること
 (4)空気呼吸器等の使用状況を監視すること
4 酸素欠乏危険について教育を実施すること
 労働者に対しては、あらかじめ酸素欠乏症等の危険およびその防止対策について特別教育を実施する。(酸欠則第12条関連)
5 安全衛生管理を行うこと
 事業者および特定元方事業者は、酸素欠乏等の危険の有無についてあらかじめ検討を行うとともに、その防止対策、教育実施等について十分に安全衛生管理を実施する。(安衛法第30条関連)

橋台用の型枠を吊り上げ中に墜落

発生状況

 この災害は、国道新設工事のうち橋台の建造作業中に発生したものである。
 この工事は、2つの橋台と1つの橋脚で構成される橋梁を建設するものであるが、災害は橋台の型枠組立に付随する型枠の荷上げ作業中に発生した。
 前日までに橋台の型枠7段目までのコンクリート打設が終了しており、災害発生当日は、被災者の会社から世話役を含め9人の作業員、それにオペレーター付の移動式クレーン(25t)で朝から型枠の組立作業が行われ、午前中には8段目と9段目の鉄筋組立てと型枠の取付けが終了した。
 午後は、最後の10段目の型枠取り付け作業を行うことになり、被災者は地上で型枠の束の玉掛けをして足場に昇り、移動式クレーンの運転士に合図をして荷の取込み、玉外しを行っていたが、型枠6枚を束にして吊り上げたところ、風で荷振れしたので、再度地上に降り、6枚束を2組にして玉掛けをしたのち足場(高さ約13m)に昇り、合図して吊り上げたところ、型枠で被災者の姿が運転士の視界から一瞬消えたときに、足場上から転落し、肺挫傷、大腿骨骨折などにより同日中に死亡した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1   風が強い中で作業を強行したこと
   午後の作業を開始したときには、山間部でもあり、かなりの風が吹いていたので移動式クレーン運転士が「無理だから止めよう」と再三言ったのに、被災者が「大丈夫」と言って、荷振れを止めるため型枠を倍にして吊り上げさせるなど作業を強行したことが原因の一つである。なお、現場付近の風速は、4~5m/秒と推定される。
2   墜落防止措置が不十分なまま荷の取り込み作業を行ったこと
   墜落直前の被災者の動作の目撃者はいないが、被災者の立っていた足場には92cmの高さにパイプ手すりが取付けられていたので、通常の状態では墜落することが考えられないので、足場の高さに来た型枠を手で取り込もうとしたときに、手すりを乗り越えたか、手すりと足場の作業床との間から墜落したものと推定される。
   なお、被災者は、命綱は着帯していたが、使用はしていなかった
3   安全管理を行っていなかったこと
   朝のミーティングで現場責任者から「風が強いから気をつけるように」との注意があったが、作業が開始されてからのち、現場の状況を見ながら適切な指示などは行われていなかった。
   また、被災者は、大工職であり、玉掛けの資格者ではないのに、玉掛け・玉外しの作業を行わせるなど安全管理を行っていなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。

1   風の強いときには荷上げ作業を行わないこと
   10分間の平均風速が10mを超える場合には移動式クレーンによる作業は禁じられている(クレーン則第74条の3)が、それ以下の風速であっても荷振れ等を増幅するおそれがあるので、現場責任者はその時々の状況を判断し、作業の中止などを命ずることが必要である。
2   無資格者に玉掛け作業を行わせないこと
   吊り上げ荷重が1t以上の移動式クレーン等の玉掛け作業は有資格者でなければできないことになっているので、そのような作業の場合には必ず有資格者を配置しなければならない。
3   墜落防止措置を講ずること
   作業床と手すりとの間隔が90cmもあるときには、中間に中さんを取り付けること、又は命綱を取り付けて確実な墜落防止を行うことが必要である。
4   安全管理を徹底すること
   現場責任者は、ミーティング等において抽象的な注意を行うだけではなく、具体的に指示をするとともに、作業状況をチェックし、作業中止などの適切な指示を行うことが必要である。
   また、あらかじめ、作業に必要な人員、資格者の配置を行うとともに、作業方法・手順を明確に定め指示することが必要である。

ドラグ・ショベルで鋼管束を荷下ろし作業中、ベルトスリングが切断

発生状況

 この災害は、道路整備工事現場において、車両積載型トラッククレーンからドラグ・ショベルで鋼管の束を下ろす作業中に発生したものである。
 災害発生当日、工事現場では、谷側の土止め、作業用道路等を整備することになっており、ダンプトラックとクレーンを使用して、型枠、鋼管を資材置場から工事現場に運搬し、搬入する作業を行っていた。
 荷下ろし作業は、当初の計画では、荷を運搬してきたトラッククレーンを使用する予定であったが、現場の地盤が軟弱なためトラッククレーンを荷下ろしする場所に接近させることができなかったため、現場で使用していたドラグ・ショベルで荷下ろし作業を行うこととした。
 そこで、鋼管束を両端アイ形のベルトスリングで1本吊りとし、ドラグ・ショベルのバケットに取り付けたフックに掛けて吊り上げて旋回したところ、ベルトスリングが切断し吊り荷が落下し、近くで道具小屋の建築作業に従事していた被災者が、落下した鋼管束の下敷きとなって死亡した。
 なお、ベルトスリングは事故後の調査で、一部に損傷が見られた。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 鋼管をトラッククレーンで運んできたにもかかわらず、そのクレーンを使用せずにドラグ・ショベルを使用したこと
2 ドラグ・ショベルによる荷の吊り上げ、運搬作業の方法について事前の検討が不十分で、適切な作業計画も作成されていなかったこと
3 ドラグ・ショベルの旋回範囲内に作業者が立ち入ることを禁止するための具体的措置を講じていなかったこと
4 ベルトスリングの1本が鋼管に挟まって取り出すことが出来なくなったために、残りのベルトスリングで荷を1本吊りで玉掛けして作業を続行したこと
5 ベルトスリングの点検が適切に実施されていなかったこと
6 安全管理体制が確立されていなくて、安全管理が不十分であったこと
7 作業者の安全意識が低調で、危険区域への立入禁止を指示されていたにもかかわらず、指示に従わなかったこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 荷下ろし作業には、作業の性質上やむを得ない場合を除きクレーンを使用すること
2 荷の積み下ろし作業を行う場合には、吊り荷の下方に作業者の立ち入りを禁止するための措置を講じること
3 荷の積み下ろし作業方法については、作業の開始前にその安全性について十分な検討を行って決定すること
4 吊り具には、十分な強度を有するものを選定するとともに、所要の安全率(ベルトスリングの場合5以上)を確保すること
5 機械設備等は日常点検および定期点検を適切に実施すること
 ベルトスリング等の吊り具については、点検・検査方法と廃棄基準を設けるとともに、管理責任者を定めて、定期検査を実施し、使用開始時期、点検検査結果が判るように台帳管理を行うとともに、使用頻度等を勘案して廃棄等の管理を行うことが必要である。
6 安全管理体制を整備するとともに、作業者に対して安全衛生教育を徹底すること

型枠上に鉄筋を仮置き作業中、型枠が倒壊

発生状況

 この災害は、鉄筋コンクリ-ト造の事務所新築工事現場において型枠が倒壊し、作業員3名が被災したものである。
 当日、この工事現場では、2階床の型枠建て込み作業、1階の型枠解体作業、2階への鉄筋荷上げ作業、2 階の配筋作業等が行われており、現場には元請の職員6名と、一次下請および二次下請から鉄筋工等23名の作業員が入場していた。
 朝の打合せ後作業が開始され、被災者達は、まず2階の床に配筋するための鉄筋約20トンを現場に設置されたタワ-クレ-ンを用いて、トラックから2階床に上げる作業にとりかかった。
 まず、トラックで搬入された鉄筋のうち約4 トン分を2階床の型枠上の何か所かに分けて荷上げし、次いで約4 トンの鉄筋を2階中央部分の何か所かに分けて荷降ろしを行った。
 続いて、トラックに残っていた約2 トンの鉄筋を型枠の中央部分に降ろそうとしたところ、突然中央部分の2階床の型枠が倒壊した。
 このため、荷外しをしていた3名のうち2名が鉄筋および型枠材とともに1階スラブ上に落ち、また、1階で型枠の解体作業の打ち合わせをしていたとび工の2名のうち1名が落ちてきた鉄筋、型枠材などに当たり負傷した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 型枠支保工の組立てが終了していないのに重量物を仮置きしたこと
2 関係作業者同士の連絡を十分に行なわずに作業を進めていたこと

対策

 この災害は、鉄筋コンクリ-ト造の事務所新築工事現場において型枠が倒壊し、作業員3名が被災したものであるが、その対策としては次のことが考えられる。
1 鉄筋等の重量物を仮置きするときには、型枠支保工等の強度を確認すること
2 関係作業間の連絡調整を十分に行ったうえで、作業を開始すること
3 ノンサポ-ト工法についての検討と安全教育を実施すること

旋回したドラグ・ショベルと煙突との間に挟まれる

発生状況

 この災害は、ゴミ焼却施設の建設工事現場において型枠部材の運搬中に煙突とドラグ・ショベルとの間に挟まれて発生したものである。
 災害発生当日、ケーブル用配管の埋設工事と電気ケーブルの接続中継点となるマンホールの据付工事を請負った4 次下請の会社に所属する被災者は、土工作業員として他の3 名の作業者とともにドラグ・ショベルによる掘削作業に従事していた。
 被災者が、掘削箇所のならし作業を行っていたところ、近くで作業をしていた同僚の型枠工から「型枠に使用する木片を取ってきてくれ」と依頼されたので、ゴミ処理施設の煙突の近くにある木片を取りに行き、それを持って現場に戻るためにドラグ・ショベルと煙突との間を通り抜けようとした時、ドラグ・ショベルが旋回してきたため、被災者はドラグ・ショベルと煙突との間に挟まれ死亡した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 車両系建設機械の稼働範囲で危険な区域への立入り禁止措置を行っていなかったこと
2 安全通路脇にセメント袋を積んだことにより、通路として利用しにくくなっていたこと
3 危険予知訓練(KYT) 等安全教育が不十分であったこと

対策

 この災害は、ゴミ焼却施設の建設工事現場において型枠部材の運搬中に煙突とドラグ・ショベルの間に挟まれたものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 車両系建設機械が運行する場所等については、立入禁止の措置を徹底すること
2 建設機械との接触防止等に関する安全教育を徹底すること
3 安全通路を確保し、そこを通行するよう徹底すること
4 危険予知訓練(KYT) 等安全教育を実施すること
5 作業計画を作成し、これに基づき作業を行わせること

換気口内地下ピットに溜まった雨水を内燃機関付ポンプで廃水作業中、一酸化炭素中毒

発生状況

 この災害は、ピットに溜まった雨水の排水作業中に、使用したガソリンエンジン付ポンプの排気ガスにより一酸化炭素中毒が発生したものである。
 当日の作業は、ドライエリアと呼ばれる地下換気口内のピットに溜まっていた雨水をガソリンエンジン付ポンプで屋外に排水するものであった。このドライエリアは、開口部は縦約5m、横約2m、深さ約9.5m、地下約4.5mのところに平らな中段があり、その下に更に開口部縦約0.6m横約0.9mの入口を持った最下層の空洞部分、いわゆるピットにつながっている。
 Aは同僚と二人で、午前8時半頃からドライエリア内の型枠片付け及びピット内の雨水の排水作業を行うこととなった。まず、雨水を排水するためドライエリア内に持ち込まれていたガソリンエンジン付ポンプで作業を開始した。ところが、雨水が思ったよりも多いため、もう一台をピット内に持ち込んで作業を行うことになり、同僚を他のベテラン作業員Bと交代させて、AとBは10時半に作業を開始した。
 その後、昼食時になっても2人が事務所に戻らないため、同僚のCがドライエリア内を探したところA及びBは、深さ約9.5mの最下層ピットで倒れていた。そこでCは、近くにいた作業員に声をかけ、7人で救出作業を行ったが、次々と全員が具合が悪くなった。

原因

 この災害の原因としては次のようなことが考えられる。
1 ドライエリア内が十分な広さでないにもかかわらず、作業能率だけを考えて排水ポンプを一台から二台に増設して作業を行ったこと
2 非常に狭いピット内に、ガソリンエンジン付ポンプを持ち込んで作業を行ったこと
3 換気装置を設置するなどピット内の換気をしないで、ガソリンエンジン付ポンプを使用したこと
4 作業開始前に、酸素濃度測定が行われていなかったこと
5 作業者に対して、当日の作業を考えた安全教育が実施されていなかったこと
6 救助方法等に対する対策が、全く行われていなかったこと
7 朝礼がマンネリ化していて、十分な危険予知が行われていなかったこと
8 作業方法の変更についての指示系統が、はっきりしていなかったこと
9 作業員の交替を行ったにもかかわらず、この作業員に対して安全作業について指示を行っていなかったこと

対策

 この災害は、新築工事現場内の換気口内ピットの排水作業中、使用したガソリンエンジン付ポンプによる一酸化炭素中毒により災害が発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1 自然換気が不十分な場所においては、ガソリンエンジン付ポンプを使用せず、電気による水中ポンプを使用すること。
2 ガソリンエンジン付ポンプはレンタルであったが、作業方法を検討してポンプの種類を選定すること。
 ガソリンエンジン付ポンプは、自吹式エンジンポンプ(最大揚程34m、最大揚水量550l/min、所要動力3.5ps/3600rpm)であった。
3 やむを得ず、内燃機関付ポンプを使用する場合は、送風機等により内部の換気を十分行うこと。
4 作業指示は、事前に作業計画を立て、具体的な作業指示をすること。
5 作業者に対する安全衛生教育を実施し、作業における危険認識・安全意識の高揚を図ること。
6 作業員の判断で作業方法を変更する場合は、届出を行わせること。
7 ピット内等狭い場所は、酸素濃度測定など酸素欠乏症対策を行うこと。

高所作業車を運転中、工事中の建物の壁と作業車の間に挟まれる

発生状況

 この災害は、6階建の工事現場の地下室において、コンクリート壁の仕上げのため、高所作業車に乗り移動中の被災者が、扉取付部の下がり壁と高所作業車の手すりとの間に挟まれたものである。
 当日の作業は、コンクリート打設後の壁面に残った型枠材接続用金具の跡をモルタルで埋めて仕上げる「Pコン埋め」と呼ばれる作業であった。
 作業は、職長と被災者及び同僚の3名の合計5名で行われ、職長と被災者はそれぞれが単独で高所作業車を運転して高所作業車上で作業を行い、他の2名は一組となって高所作業車上の作業及び高所作業車の下での作業、他の1名は単独で足場上で作業を行っていた。
 当日は、午前8時30分頃から地下での作業を開始したが、職長は職長会に出席するため途中で作業場所を離れ、他の4名は昼食時間をはさんで午後1時30分頃から午前と同じ分担で作業を開始していた。
 職長は、午後2時頃に作業場所に戻ったが、このとき、被災者と高所作業車1台が作業場所にいないことに気がついた。
 午後2時45分頃、被災者が、地下1階の下がり壁と高所作業車の手すりとの間にはさまれているのを他の会社の作業者が発見した。
 被災者は、直ちに近くの病院に運ばれたが、同日の午後3時30分に死亡した。

原因

 この災害の原因としては次のことが考えられる。
1 被災者は、高所作業車(作業床高さが10m未満)の運転について特別教育を受けていないため、高所作業車の運転に対する知識、技能が十分でなかったこと
2 高所作業車を用いて行う作業に関する作業計画が定められていなかったこと
 また、高所作業車を用いて行う作業の指揮者も定められていなかったこと
3 通り抜けようとした扉取付用開口部の寸法に対して、使用していた高所作業車の余裕がなかったこと

対策

 この災害は、6階建の工事現場の地下室において、コンクリート壁の仕上げのため、高所作業車に乗り移動中、扉取付部の下がり壁と高所作業車の手すりとの間に挟まれたものであるが、同種災害を防止するためには次のような対策の徹底が必要である。
1 高所作業車の運転の業務には、技能講習または特別教育を修了した者の中から、事業者が指名した者を就かせること。
 また、指名された者以外の者が運転することのないよう、「キー」の保管を確実に行うこと。
2 高所作業車を用いて作業を行うときは、あらかじめ、作業場所に適応する作業計画を定めること。
3 作業開始前に作業の場所、手順、分担、安全上配慮すべき事項等について十分な説明、打合せを行うこと。
 また、指揮者を定めて作業を行うこと。4運転者について、技能向上のための教育を実施すること。