高所作業車のデッキ上で型わくの解体作業中、デッキ手すりと橋桁下面との間にはさまれる

発生状況

 この災害は、有料道路上方にパーキングエリアをPC橋梁構造で設置する工事現場において、橋梁上部工橋桁の型わく解体作業中に発生したものである。
 当日の作業は、朝礼後、作業者数名が以前から使用している定型図表を用いてKY活動を行った後、それぞれに分かれて高所作業車(作業床高さ14.8m)による型わく解体作業を開始し、被災者は同僚1名とともに橋梁上部工橋桁の底板部分の型わく解体を開始した。
 作業は順調に進み、予定した底板の型わく解体が終了したので、被災者は高所作業車を操作してデッキを収納しようとしたが、操作を誤ったためにブームが逆に伸びてしまい、デッキ上の操作盤の手すりと橋桁底部との間に身体をはさまれた。
 そのとき、同僚もデッキの手すりと橋桁底部の間に身体をはさまれそうになったが、とっさに身をかわし助けを求めた。
 その後、45m離れた場所で作業を行っていた他の作業者が災害を知って駆けつけ、この高所作業車の旋回台部にあるもう1つの操作盤で操作し救出したが、7日後に死亡した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 無資格者が高所作業車の運転を行ったこと
 被災者が会社に提出していた高所作業車運転技能講習修了証の写しは、偽造されたものであり、会社はそれを確認することなく作業床の高さが10mを超える高所作業車の運転を行わせた。
2 作業指揮者の指名等を行わずに作業をさせたこと
 会社は、高所作業車を用いた作業を行うに際し、作業計画を策定せず、また、作業指揮者の指名、直接指揮の下に作業を行わせなかった。
3 作業空間が狭かったこと
 橋桁の型わく解体作業であったため、高所作業車のデッキ(作業床)と橋桁型わく底板との間が狭く、デッキ収納の操作を誤ったときに是正の操作を行う余裕がなかった。
4 KY活動等が形式的であったこと
 作業開始前にKY活動が行われたが、全員参加ではなく、また、形式的なもので災害防止効果の面で不十分であった。
 また、元方事業者による下請事業者が行う安全教育等に対する指導援助も不十分であった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 高所作業車の運転は有資格者に行わせること
 作業床の高さが10mを超える高所作業車の運転は、技能講習を修了した有資格者に行わせる。(安衛法第61条、令第20条第15号)
 また、事業者は、高所作業車運転技能講習修了証(技能講習修了証明書を含む)を写しではなく原本で確認する。
2 安全な作業計画の作成等を行うこと
 高所作業車を用いて橋桁の型わく解体作業等を行うときには、あらかじめ作業場所の状況、高所作業車の種類及び能力等について十分な検討を行い、適切な作業計画を策定するとともに、作業指揮者を指名して作業計画に基づく作業を直接指揮させる。(安衛則第194条の9、10)
3 作業開始前の作業打ち合わせ等を十分に行うこと
 その日の作業を開始する前に、全員参加でその日の作業に関する打ち合わせを行うとともに、実効あるKY活動を行わせる。
 また、元方事業者は、下請事業場に対して安全衛生教育などについて指導援助を行う。
4 定期自主検査等を確実に行うこと
 作業床の高さが2m以上の高所作業車については、1年以内に1回の有資格者による定期自主検査(特定自主検査)、1月以内に1回の定期自主検査、作業開始前の点検等を確実に実施し、必要な補修等を行う。(安衛則第194条の23~28)

高所作業車を運転中、工事中の建物の壁と作業車の間に挟まれる

発生状況

 この災害は、6階建の工事現場の地下室において、コンクリート壁の仕上げのため、高所作業車に乗り移動中の被災者が、扉取付部の下がり壁と高所作業車の手すりとの間に挟まれたものである。
 当日の作業は、コンクリート打設後の壁面に残った型枠材接続用金具の跡をモルタルで埋めて仕上げる「Pコン埋め」と呼ばれる作業であった。
 作業は、職長と被災者及び同僚の3名の合計5名で行われ、職長と被災者はそれぞれが単独で高所作業車を運転して高所作業車上で作業を行い、他の2名は一組となって高所作業車上の作業及び高所作業車の下での作業、他の1名は単独で足場上で作業を行っていた。
 当日は、午前8時30分頃から地下での作業を開始したが、職長は職長会に出席するため途中で作業場所を離れ、他の4名は昼食時間をはさんで午後1時30分頃から午前と同じ分担で作業を開始していた。
 職長は、午後2時頃に作業場所に戻ったが、このとき、被災者と高所作業車1台が作業場所にいないことに気がついた。
 午後2時45分頃、被災者が、地下1階の下がり壁と高所作業車の手すりとの間にはさまれているのを他の会社の作業者が発見した。
 被災者は、直ちに近くの病院に運ばれたが、同日の午後3時30分に死亡した。

原因

 この災害の原因としては次のことが考えられる。
1 被災者は、高所作業車(作業床高さが10m未満)の運転について特別教育を受けていないため、高所作業車の運転に対する知識、技能が十分でなかったこと
2 高所作業車を用いて行う作業に関する作業計画が定められていなかったこと
 また、高所作業車を用いて行う作業の指揮者も定められていなかったこと
3 通り抜けようとした扉取付用開口部の寸法に対して、使用していた高所作業車の余裕がなかったこと

対策

 この災害は、6階建の工事現場の地下室において、コンクリート壁の仕上げのため、高所作業車に乗り移動中、扉取付部の下がり壁と高所作業車の手すりとの間に挟まれたものであるが、同種災害を防止するためには次のような対策の徹底が必要である。
1 高所作業車の運転の業務には、技能講習または特別教育を修了した者の中から、事業者が指名した者を就かせること。
 また、指名された者以外の者が運転することのないよう、「キー」の保管を確実に行うこと。
2 高所作業車を用いて作業を行うときは、あらかじめ、作業場所に適応する作業計画を定めること。
3 作業開始前に作業の場所、手順、分担、安全上配慮すべき事項等について十分な説明、打合せを行うこと。
 また、指揮者を定めて作業を行うこと。4運転者について、技能向上のための教育を実施すること。