破傷風により死亡

発生状況

本災害は、被災者がトラックより型枠材料の角材を降ろしているときに刺さったトゲがもとで、破傷風になり死亡したものである。
 被災者は防火水槽の型枠工事を行うため、資材置場より米松の角材約50本と銅製の角パイプ約50本2トンをトラックで運搬しつつ、型枠を建造する作業に従事していた。
 被災当日、午後4時ごろ、角材をトラックより降ろす作業中に、長さ2cm、ようじ程の太さのトゲを手の指に刺した。これらの角材は過去に使用したことのあるものである。被災者は同僚にトゲをぬいてもらい、そのまま午後4時30分まで工事現場の片付けを行って帰宅した。帰宅後、家で消毒程度の軽い手当をした。
 翌日、負傷した指が腫れて痛み出したが、日曜日で近くの医院が休診のため、前日同様に消毒程度の軽い手当をした。
 2日後に、自宅近くの医院で診察を受けたところ、切開排膿を施行し、破傷風ワクチンを注射した。以降、被災者は毎日通院治療を受け、受傷7日後に治療を終了した。なお、被災者は、受傷3日後から日曜日を除き作業に従事している。
 被災者は、受傷9日後から体の具合が悪くなってきたが無理をして仕事をしていた。しかし、11日目になり、構音障害(ろれつが回らなくなること)が出てきたので仕事を休み、その翌日、総合病院で受診し、入院した。
 受傷15日目になり、突然、容態が悪化し、破傷風と診断され治療が行われたが、さらに容態が悪化し、受傷20日目に死亡した。
 なお、破傷風の潜伏期が大体6日~14日位である。

原因

1 被災者が角材のトゲにより刺創を負ったこと。
2 刺創発生時又は発生後の現場片付け中、刺創部が破傷風菌に侵されたこと。
3 刺創発生後、刺創部の簡単な消毒のみで、受傷日を含め2日間医師の治療を受けなかったこと。
4 破傷風の危険性についての認識が欠けていたこと。

対策

破傷風の危険性について認識させ、予防接種を励行すること。

切り株の除去作業中、携帯用丸のこ盤で切創を負い死亡

発生状況

 この災害は、プレハブ倉庫新設工事において、敷地を整備するために敷地内の立ち木を伐採する作業を行っている際に発生した。
 作業者Aが所属するZ社は、この工事の2次下請として、倉庫を新設する敷地内の2本の立ち木(いずれも直径約70cm)の伐採と伐採後の敷地の整地の作業を請け負った。
 Z社は災害発生の前日までに、2本の立ち木を伐倒したが、整地のためには切り株を取り除く必要があり、ドラグ・ショベルを用いて地上に引っ張り出そうとしたが、根が地中深く張っていたため不可能ということが分かり、1次下請のY社と打合せを行った結果、切り株を地面の高さ以下まで削った後、その周囲を埋め戻す作業に変更した。
 災害発生当日、Aは、同僚の作業者Bと2人で切り株を削る作業に従事した。この切り株を削る作業は、元々予定されていなかったことから、Z社は必要な道具類を現場に持ち込んでおらず、AとBは、Y社が現場に持ち込んでいた携帯用丸のこ盤、電動ドリルおよびなたを借りて、作業に当たった。
 午前の作業を終了し、昼の休憩の後、取りかかった午後の作業では、Aは携帯用丸のこ盤を使用し、Bはなたを使用して、互いに背を向ける格好で作業していた。しばらくして、Bは、Aの悲鳴を聞き振り返ったところ、Aは切創を負い、出血していた。Aは、直ちに病院に搬送されたが、約2時間後に死亡した。
 災害発生の前日のY社とZ社の打合せでは、切り株を削ることは確認したが、具体的な作業方法は検討していなかった
 また、切り株があった地面は、傾斜しており、切り株の北側と南側とでは約40cmの高低差があり、AおよびBは、不安定な作業姿勢を強いられていた。
 さらに、Z社では作業者に安全衛生教育を実施しておらず、AおよびBは携帯用丸のこ盤の安全な使用方法についての知識が乏しかった。

原因

 この災害の原因として、次のことが考えられる。
1 斜面の切り株を取り除くために、安全な作業方法等を検討せず、携帯用丸のこ盤を用いるという無理のある作業方法を採用したこと
2 立ち木を代採する作業や携帯用丸のこ盤の使用について、作業者に安全衛生教育を行っていなかったこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 携帯用丸のこ盤を用いて斜面の切り株を取り除くこと自体無理な作業であるので、他の機械や工具を用いた安全な作業方法を検討すること
2 立ち木を代採する作業や携帯用丸のこ盤の構造、安全な使用方法等について安全衛生教育を行うこと
 作業者に対し、安全衛生教育を行い、携帯用丸のこ盤の構造、安全な使用方法等について周知させるとともに、危険な使用を行なわないよう徹底させる。