ビル建築工事現場で型枠が倒壊、3名が墜落

発生状況

本災害は、鉄骨・鉄筋コンクリート造ビル建築工事において、梁受けビーム式型枠支保工を組み立てた後、張り筋、スラブ配筋に使用する鉄筋を図に示したように型枠上に搬入し、その後、圧接溶接抜取り調査のため元請企業の作業者等3名が検査のため、型枠上に上がり検査を実施したが、検査の後片付け中に型枠が倒壊したため、3名が墜落負傷したものである。
 本工事は民間発注の工事であり、倒壊した型枠支保工は災害発生の4日ぐらい前に他の下請業者によって組み立てられており、その際の型枠支保工の組み立て等作業主任者等の資格については問題ない。
 型枠支保工の構成は図に示したように、ビームは約1.1m間隔に設置し、梁受けビーム式の型枠支保工で梁の間隔は3.6m(サイドビームを両端に19cm出した状態)、梁下の支保工部(パイプサポート部)はダブルのサポートで、その高さは3.9mであり2mの高さに水平つなぎを取っている。なお、倒壊した「梁」はリース品でメインビーム、サイドビーム、セット楔によって構成されている。また、梁型枠側板部は高さ80cm、厚さ12mmの合板に45~50cm間隔に縦桟木(幅4cm、厚さ4cm)を側板部内側に入れて補強の措置がとられていたが、側板の上部と中間部のセパレータおよび横繋ぎは梁鉄筋が配筋されていたにもかかわらず取り付けられていなかった。型枠パネルとして使用していた型枠用合板および桟木については、桟木に節部分が1カ所認められた他は、腐食等の欠陥部分は認められなかった。
 なお、支保工に用いたパイプサポートの強度およびその構造については、型枠支保工用のパイプサポート等の構造規格に合致していた。
 本建設現場における作業の指示については、月に1回「安全衛生協議会」を開催しておりその中で、おおよその工程の流れを説明するとともに、毎日午後3時ごろには1次下請けを集め、「安全工程打合せ」を翌日に行う作業の内容についての指示を含め行っている。1次下請けは打合せ会の後、関係労働者に対して関係事項につき指示を行っているが、本件も含め鉄筋の配置については、今までも特に指示はなされておらず、鉄筋工事を担当する下請け事業者の判断に任されていたものである。

原因

[1] 強度が不十分な梁用型枠を「作業構台」の替わりにし、型枠上に重量物を積載したこと
[2] 梁枠を支えていた型枠の添木が内側に取れていることから、梁の型枠が内側に押され、爪の部分が離脱したと考えられることから、次のことが要因と思われる。
 [イ] 鉄筋の敷き方がスラブのビームに対して垂直でないため、荷重が平均化せず偏荷重になったこと。
[ロ] 縦桟木の真上にビームがなかったと仮定すると、梁枠の高さが85cmと高いため、厚さ12mmの側板では強度が十分でなく、折れ曲がる(折れる)可能性のあること。
[ハ] 梁枠側板の上部と中間部のセパレータおよび横繋ぎが取り付けられていなかったため、側板の折れ曲がる(折れる)原因の一つになったこと。

対策

[1] 基本的には、梁用型枠を作業構台として用いないこと。仕方なく用いる場合には、梁枠の強度等を確認し、その強度の範囲内で作業の進行状況に合わせて計画的に積載すること。
[2] 施工計画に添って作業手順書等を整備し、梁型枠への積載荷重を含め具体的に下請けに指示すること。

型枠上に鉄筋を仮置き作業中、型枠が倒壊

発生状況

 この災害は、鉄筋コンクリ-ト造の事務所新築工事現場において型枠が倒壊し、作業員3名が被災したものである。
 当日、この工事現場では、2階床の型枠建て込み作業、1階の型枠解体作業、2階への鉄筋荷上げ作業、2 階の配筋作業等が行われており、現場には元請の職員6名と、一次下請および二次下請から鉄筋工等23名の作業員が入場していた。
 朝の打合せ後作業が開始され、被災者達は、まず2階の床に配筋するための鉄筋約20トンを現場に設置されたタワ-クレ-ンを用いて、トラックから2階床に上げる作業にとりかかった。
 まず、トラックで搬入された鉄筋のうち約4 トン分を2階床の型枠上の何か所かに分けて荷上げし、次いで約4 トンの鉄筋を2階中央部分の何か所かに分けて荷降ろしを行った。
 続いて、トラックに残っていた約2 トンの鉄筋を型枠の中央部分に降ろそうとしたところ、突然中央部分の2階床の型枠が倒壊した。
 このため、荷外しをしていた3名のうち2名が鉄筋および型枠材とともに1階スラブ上に落ち、また、1階で型枠の解体作業の打ち合わせをしていたとび工の2名のうち1名が落ちてきた鉄筋、型枠材などに当たり負傷した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 型枠支保工の組立てが終了していないのに重量物を仮置きしたこと
2 関係作業者同士の連絡を十分に行なわずに作業を進めていたこと

対策

 この災害は、鉄筋コンクリ-ト造の事務所新築工事現場において型枠が倒壊し、作業員3名が被災したものであるが、その対策としては次のことが考えられる。
1 鉄筋等の重量物を仮置きするときには、型枠支保工等の強度を確認すること
2 関係作業間の連絡調整を十分に行ったうえで、作業を開始すること
3 ノンサポ-ト工法についての検討と安全教育を実施すること

コンクリート打設中、型枠が崩壊

発生状況

本災害は、火力発電所建設工事のうちの防波堤建設工事において発生した。
 本工事は、海底から海面上約1.7mの高さまで設置されたケーソン上に、さらに高さ2.5mの上部コンクリートを打設するものである。コンクリート打設作業は、ケーソン1函分の面積を6分割して1回の打設を行っていたが、災害が発生したケーソン北西部については、後日ケーソン上面に降りるための階段を設置するため、一部を空間として残す不規則な形状となっていた。このため、北西部のうちの南側の幅2.8m×長さ13.0m×高さ2.5mを災害発生日の前前日に打設し、災害発生当日は、幅2.0m×長さ8.6m×高さ2.5mを打設する予定であった。
 鋼製型枠の固定は、既設コンクリートに埋め込んであるセパレータに、当日施工する箇所の型枠を固定するセパレータを連結することにより行う予定であったが、上述のとおり不規則な形状であったため、既設側のセパレータの位置と型枠側のセパレータの穴の位置が合わなかった。このため、既設コンクリートにアンカーボルトを打ち込み、これにセパレータを取り付ける方法に施工方法を変更した。
 型枠を組み立て、コンクリートを打設していたところ、高さ約1.5mまで打設したとき、突然型枠2枚が崩壊して海中に転落し、型枠に設置されていた張り出し足場上でコンクリートの締め固め作業を行っていた作業者2名が型枠及び張り出し足場とともに海中に墜落、1名が海底で型枠の下敷きとなり死亡したものである。

原因

(1) アンカーボルトの引き抜き耐力、既設コンクリートの硬化の程度等について強度上の検討を十分に行わずに、型枠の支持方法としてアンカーボルトを使用したこと。
(2) 型枠の組立方法について、事前に十分な検討がなされておらず、具体的な施工計画が作成されていなかったこと。
(3) 施工上問題が生じた場合の対応方法があらかじめ明確に定められておらず、組織的な協議、検討を行わずに施工方法を変更したこと。

対策

(1) 型枠の構造について、生コンの側圧による崩壊を防止するため、十分な強度を持つ丈夫な構造のものとすること。
(2) 型枠組立に係る工法、作業手順、強度等について、事前に十分な検討を行った上で具体的な施工計画を作成し、これに従って作業を行うこと。
(3) 施工方法を変更する場合の手続きをあらかじめ明確にしておくこと。
(4) コンクリート打設作業について、打設速度等の打設方法について遵守すべき事項を関係作業者に周知しておくこと。

仮置きしてあった型枠材が倒れ、挟まれる

発生状況

本災害は、研磨作業および塗装の作業を行うために作業場内に置かれていた型枠材が強風にあおられて倒れ、塗装作業のため型枠材の側にいた作業者が型枠材と地面の間に挟まれて死亡したものである。
 作業内容は、以前に護岸工事の型枠として使用され運び込まれていた型枠材を、次の工事ですぐに使えるように整備補修することであった。具体的には、型枠材のコンクリートと接する面のさびをサンダーによって研磨し、さび止めおよび型枠材とコンクリートとのはく離を促進する塗料をローラーを使用して塗布するものであった。
 作業場所は、海岸に近い埋め立て地にある遮へい物のない空き地であり、海からの強風がまともに当たる場所であった。
 事故当日、被災者は他の作業者1人(作業者A)と2人で、3個の型枠材の研磨作業を行うことを指示され、朝から研磨作業および塗装作業を共同で行っており、被災者は自分の担当の型枠材の研磨作業を終了した。作業は基本的にそれぞれの型枠材について各人が別々に行っていたが、Aの担当の型枠のさびがひどかったため、被災者はその型枠材の塗装の一部を手伝った。この作業の終了後、被災者は研磨の終わった自分の担当の型枠材に塗装をするため、型枠材に近づいたところ、強風により型枠材が倒れ、地面と型枠の間に挟まれて被災した。
 倒れた型枠材は、H型鋼に厚さ約1cmの鉄板を溶接して作られたものであり、コンクリートと接する面と反対側の面にアングルによって型枠取付時の足場を取り付けられるようになっている。大きさは、縦7.8m、横2.2m、厚さ7.5cmで、重量は約3トンである。整備中および整備後、型枠材は長辺を下にして(接地面は幅約7.5cmのH型鋼)自立しており、特に転倒を防止するための措置はなされておらず、重心が高い位置にある極めて不安定な状況であった。研磨作業終了後、保管場所を移動する予定であった。

原因

[1] 自立させると不安定な形状の型枠材を、転倒防止措置を講じることなく自立させたこと。
[2] 風の吹いてくる方向(海側)に型枠材の各面の中で面積が最大である面(コンクリート打設面)を向けていて、風による転倒の恐れが強い状態であったこと
[3] 型枠材の整備作業に関する安全な作業手順が作成されていなかったこと。

対策

[1] 自立させると不安定な形状の型枠材については、基本的に型枠材を寝かせて作業を行い、作業後の保管についても寝かせて保管することを原則とすること。
[2] 作業上、立てて作業、保管を行う必要のある場合は、型枠材に控えをとって地面に固定するか、他の安定したものに固定する等の転倒防止措置を講ずること。
[3] 型枠材の整備作業においては、作業手順書を作成し、作業者に周知徹底すること。
[4] 作業者に対して安全衛生教育を行い、平素より危険に対する認識と、それに対して対応できる知識を与えること。