フォークリフトのパレット上で作業中、墜落し死亡

発生状況

 この災害は、コンクリート製品製造工場建屋の入口にひさしを取り付ける工事の準備作業中に発生したものである。
 災害発生当日の朝、Y社からひさしの取付け工事を請け負ったZ社の作業責任者Aは、作業者BおよびCとともに材料を持ってY社の工場に到着した。
 しかし、建屋入口の上部(高さ5m)には鳩よけ用のネットが張ってあり、作業を行うためには、それを取り外す必要があった。
 そこで、Aは、自分がフォークリフトの運転資格を持っていたので、工場のフォークリフトを借りて足場として利用することを考え、借りてきたフォークリフトのフォークを5段積みしたパレットに差し込み、そのパレット上にBを乗せて、鳩よけ用のネットの取り外しができる高さ(地上から約4.5m)にまで上昇させた後、フォークリフトのエンジンを止め、Bに作業させた。
 その後、AとCは、ひさしの取り付け方法を打ち合わせていたが、「アッ」という声がしたので振り返ってみたところ、Bがフォークリフトの近く地面に倒れていた。Bは救急車で病院に搬送されたが死亡した。
 Z社では、ひさしの取付け工事を請け負った際、高所作業があることが明らかであるにもかかわらずY社と作業床の設置について相談する等必要な機材や作業方法についての検討を十分に行わずに、作業責任者と作業者を現場に派遣していた。
 また、BはZ社に2カ月前に採用されたが、Z社はBに対し墜落防止対策等に関する安全衛生教育を実施していなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1 作業計画を作成せずに作業を開始したこと
 Z社は、請け負った工事現場の状況に応じて作業に必要となる機材や作業方法について十分検討を行わずに、A,BおよびCを現場に派遣し、作業者まかせで作業を行わせた。
2 墜落防止のための措置を講じた安全な作業床を設けなかったこと
 Aは、高さが約5mで作業に際し墜落のおそれがあったにもかかわらず、墜落防止のための手すり等が取り付けられた安全な作業床を設けずに、フォークリフトのフォークに5段積みのパレットを差し込み、この上にBを乗せて不安定な状態で作業を行わせた
3 安全衛生教育を実施していなかったこと
 Z社は、Bに安全衛生教育を実施せず、墜落の危険のある作業に従事させた。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画を作成して作業を行うこと
 高所の作業では、あらかじめ作業場所の地形、広さ、高さなどの状況を検討した上で作業方法を決定し、必要な人員、材料、足場等を含めた作業計画を作成して、作業を行わせる。
2 高所作業では墜落防止措置を講ずること
 高さが2m以上の場所における作業については、墜落防止のための手すり等が取り付けられた作業床を必ず用意する。また、作業用足場の設置、高所作業台または高所作業車を準備し、フォークリフトのフォーク上では作業を行わないようにする。
 なお、止むを得ず、フォークリフトを用途外で使用しなければならない場合には、フォークリフトを転倒するおそれのない場所に置き、パレットをフォークに固定し、かつ、パレットの周囲に十分な高さの手すりや枠を設ける等の墜落防止のための措置を講じた上で作業を行わせなければならない。
3 安全衛生教育を実施すること
 雇用した作業者に対しては、基本的な安全衛生教育を実施するとともに、特に高所での作業に従事させる場合には、あらかじめ墜落防止対策、安全帯の使用方法等について教育訓練を行う。

フォークリフトを運転中、曲り角で転倒し、運転者が死亡

発生状況

 この災害は、フォークリフトを運転して移動中に発生したものである。
 災害発生当日、職長Aおよび作業者BとCの3人は、工事現場に搬送する大型の掘削機械をトラックに積み込むための作業を資材置き場で行っていた。午前中は掘削機械をトラックの荷台に乗る大きさに解体し、午後、解体した機材を積み込むことにした。しかし、資材置き場に常備されているフォークリフトが他の作業で使用されていたため、敷地内の本社事務所のフォークリフトを借りることになった。
 そこで、AはBにフォークリフトを取りに行くよう指示し、Bは本社事務所でキーが挿入されたままのフォークリフト(最大荷重3t)を運転して資材置き場まで移動中、建物の角で右折したところ、フォークリフトがスリップし、転倒した。Bは運転席から投げ出され、転倒したフォークリフトのヘッドガードの下敷きとなった。Bは病院に搬送されたが、死亡した。
 Bは、フォークリフト運転技能講習を修了しておらず、AもBがフォークリフト運転の資格を持っていないことを知っていた。
 また、転倒したフォークリフトは、毎朝の作業前にエンジンオイルと冷却水を点検していたが、タイヤはすり減っていて溝がなかった。さらに、月例検査、年次検査(特定自主検査)は実施されていなかった。

原因

 この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 フォークリフトの運転を無資格者に指示したこと
 Aは、Bがフォークリフト運転技能講習を修了していないことを知りながら、Bにフォークリフトの運転を指示した。
2 フォークリフトの点検や整備が適切に実施されていなかったこと
 転倒したフォークリフトを毎朝、作業前に点検していたが、タイヤがすり減っていて溝がないなど整備が適切でなかった。また、月例検査、年次検査(特定自主検査)を実施していなかった。
3 フォークリフトにキーが挿入されたまま誰でも使える状態で置いていたこと

対策

 同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 フォークリフトの運転は、資格者に行わせること
 最大荷重1t以上のフォークリフトの運転は、フォークリフト運転技能講習を修了し、運転に必要な知識、技能を持っている者に行わせる必要がある。また、最大荷重1t未満のフォークリフトの運転は、フォークリフト運転技能講習またはフォークリフト運転特別教育を修了した者に行わせる必要がある。
 事業場では、フォークリフト運転の資格者名簿等を作成し、管理者等関係者に周知するとともに、無資格者の運転は禁止する。
2 フォークリフトについて、月例検査および年次検査(特定自主検査)を実施するとともに、作業前の点検を適切に行うこと、また、点検、検査の結果、異常を認めた場合は、補修整備した後に使用すること
3 フォークリフトは、無資格者が使用できないように管理すること
 運転者がフォークリフトを離れるときは、必ずキーを抜き、確実に保管し、無資格者が運転することのないようにする。

フォークリフトで持ち上げた作業台が転落し、乗っていた2名が被災し1名が死亡

発生状況

 この災害は、Z社の工場建屋の増設工事において、既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げるため、フォークリフトで持ち上げた作業台に乗って作業していた2名の作業者が、作業台とともに転落したものである。
この増設工事は、Z社(発注者)がY社(元請)に発注して工事が進められ、増設フロアの建設工事がほぼ終わった後、既設フロアから増設フロアに生産設備を移設する作業をY社から請け負ったX社が行っていた。
 移設作業の初日、X社の職長Aと同僚の作業者B~Dの4人は、まず、既設フロアと増設フロアを仕切っていたブルーシートを取り外した。その後、既設フロアで生産設備を解体し、これを増設フロアに移動する作業を行った。1日の作業を終えて現場を去ろうとしたとき、Z社の担当者Eから「その日の作業を終えたらブルーシートを元通りにつり下げておくように」との指示があった。そこで、A~Dは、現場付近にあった作業台(パレットの周囲を手すりで囲ったもの)をフォークリフトで持ち上げ、ブルーシートのつり下げ作業を行うことにした。BとCが作業台に搭乗し、Dはフォークリフトの運転を、Aは作業の指揮を行った。
ブルーシートのつり下げ作業を終えて、作業台を降下させたとき、作業台がブルーシートに引っかかったので、Dがフォークリフトを後退したところ、作業台が傾いて落下し、BとCは作業台とともに4mの高さから墜落した。2人は直ちに病院に搬送されたが、Bは間もなく死亡した。
生産設備の移設作業期間中も作業時以外は既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げておくことは、Z社からY社に伝わっていなかった。そのため、Y社がX社に示した計画書にはブルーシートのつり下げ作業は含まれておらず、高所作業用のローリングタワーや高所作業車を用意していなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1 発注者(Z社)と元請(Y社)との連絡調整が十分でなかったこと
 生産設備の移設作業期間中も作業時以外は既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げておくことは、発注段階でZ社からY社に伝わっていなかった。さらに移設作業期間中のブルーシートつり下げ作業もZ社の担当者が直接X社の職長に指示したため、Y社はこのことを認識しておらず、Y社がX社に示した計画書にはブルーシートのつり下げ作業は含まれておらず、高所作業に必要なローリングタワーや高所作業車を用意していなかった。
2 高所作業を行うため必要な措置を講じないまま高所作業を行ったこと
 足場を組み立てる、ローリングタワー又は高所作業車を使用する等の措置を講じないまま、作業台をフォークリフトのフォークに載せて持ち上げ、高所作業を行った

対策

 同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 発注者と元請との連絡調整を十分に行い、安全な計画を立て作業を行うこと
 安全な作業計画を立てるためには、発注者と元請が工事開始前に連絡調整を十分に行い、発注者からの伝達事項や要望の漏れがないようにする。また、臨時の作業が発生した場合には、まず発注者と元請が必要な機械・設備を確認し、安全な作業の手順を検討し、これを下請けを含めた関係作業者に周知徹底することが重要である。
2 高所作業を行うため必要な措置を講じた上で高所作業を行わせること
 フォークリフトの乗車席以外の箇所に人を乗せることは原則として禁止されている。足場を組み立てる、ローリングタワー又は高所作業車等を使用するとともに、十分な安定度を確保、作業者に保護帽や安全帯を使用させる等の墜落防止措置を講じた上で高所作業を行わせることが重要である。

フォークリフトとともに廃材焼却ピット内に転落

発生状況

 この災害は、型枠工事を行うZ社の焼却場において、フォークリフトで廃材を焼却ピットに投入する作業中にフォークリフトとともに焼却ピットに転落し、作業者が死亡したものである。
 災害が発生したピットは、建築現場へ搬入する型枠資材の加工の際に発生する屑材や、建築現場より脱型された資材で再利用できない廃材を焼却するためのもので、構造は、地面を深さ2m掘削して表面をコンクリートで固めたものである。
 災害発生当日、作業者Aは、型枠資材の廃材を資材置き場からフォークリフトで運搬し、焼却ピットに投入する作業を行っていた。フォークリフトを投入口前に止め、フォークを揺すってフォークに載せた廃材を焼却ピット内に振り落としていたところ、フォークリフトが前に傾き、フォークリフトとともに焼却ピット内へ転落し、死亡した。
 焼却ピットが作られた当初は、ピットの手前70cmのところに高さ90cmの車止めが設けられていたが、その後、取り外されていた。
 Z社では、焼却ピットに廃材を投入する作業について、作業手順書を作成しておらず、安全衛生教育も実施していなかった。また、作業者がピット手前にフォークリフトを止めてフォークを揺すりながら廃材を投入しているのをZ社の経営者や管理者は日頃目撃していたが、転落防止のための対策を立てることなく黙認していた。

原因

 この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 焼却ピットの投入口に、フォークリフトが転落することを防止する設備がなかったこと
 焼却ピットが作られた当初は、投入口のピットの手前70cmのところに高さ90cmの車止めが設けられていたが、その後、取り外されたままになっていた。
2 作業手順書がなく、安全衛生教育も行われていなかったこと
 ピットに廃材を投入する作業について、作業手順書を作成しておらず、作業者への安全衛生教育も実施していなかった。
3 安全管理が不十分であったこと
 車止めがない投入口でフォークリフトを止めてフォークを揺するという危ない作業をZ社の経営者や管理者が黙認していた。

対策

 同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 転落するおそれのあるピット等の開口部には、作業者の墜落、転落を防止するための措置を講じること
(1) 開口部に作業者が近づくおそれのある場合には、作業者の墜落、転落を防止するための防護柵等を設置する。
(2) 開口部にフォークリフト等の車両を接近させて作業する場合には、車両が逸走してピットに落ちることを防止するための車止め等を設置する。
2 作業手順書を作成し、安全衛生教育を実施すること
 ピットへの廃材投入作業について、安全に作業を行うための作業手順書を作成する。さらに、作業手順書の内容を作業者に教育し、安全な作業方法を周知徹底する。
3 安全管理を徹底すること
 経営者や管理者による職場巡視を定期的に実施し、設備の不安全な状態や作業者の不安全な行動があった場合には、すぐに適切な措置を講じる。

フォークリフトが走行中に転倒し、運転者が下敷きになる

発生状況

 この災害は、コンクリート打設用の型枠資材置場の敷地内において、フォークリフトが転倒し、運転者が下敷きになったものである。
 事業場は、コンクリートの型枠工事を業とするものであり、宅地造成工事の型枠工事を請け負って作業を行った。
 災害発生当日、小型トラッククレーンで午前9時頃現場に到達した被災者ら3名の作業者は数日前から始めた工事現場の型枠解体作業を開始した。
 午後3時頃、解体作業は終了したので、ベニヤなどの残材の一部をトラッククレーンの荷台に積み込み、会社の資材置場に持ち帰った。
 トラッククレーンを入り口近くに止めた被害者は、ヘッドガード付きフォークリフト(最大積載荷重2t 前進走行最高速度19km/h)を使用して、荷卸しを行った。
 フォークの爪の部分を使用して荷を卸し、フォークリフトを走行させて少し離れた置き場まで運ぶ作業を4~5回行って作業を終えた後、駐車場に向かった。かなり早い速度で走行していたが、駐車場の手前でブレーキをかけながら右にハンドルを切ったとき、フォークリフトが転倒した。
 被災者は、頭部をフォークリフトのヘッドガードを支える鉄枠とコンクリート路面との間に挟まれた。
 なお、被災者はフォークリフトの運転については無資格であった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 フォークリフトの運転を無資格者が行ったこと。
 最大積載荷重1t 以上のフォークリフトをフォ-クリフト運転技能講習修了者でない者が運転した。
2 フォークリフトのキーの保管管理がなされなかったこと。
 キーが差しっぱなしになっており、フォークリフトの運転が無資格者でも自由にできる状況にあった。
3 特定自主検査等点検整備が行われていないフォークリフトが使用されていたこと。
 全輪ともに磨耗限界を大幅に超えたタイヤが装着されていたため、コーナー部の旋回時にスリップしハンドルをとられ転倒した。
4 曲り角付近にもかかわらず、フォークリフトを前進走行最高速度近くの速度で運転したこと。
5 安全管理が行われていなかったこと。
 安全作業基準が作成されておらず、作業者の安全教育も不十分であった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画を作成し、関係作業者全員に徹底すること。
 作業計画を変更する場合には、フォークリフトの運転等資格を有する作業については、特に誰が行うかを明確にして関係作業者に指示することが重要である。
2 フォークリフトのキーを厳重に管理すること。
 運転無資格者が絶対に運転できないように、キーは、鍵の掛かった保管庫に保管する等責任者が管理する必要がある。
3 特定自主検査等点検整備を確実に行うこと。
 特定自主検査は毎年定期的に行うとともに、作業前点検及び月次検査を確実に行う必要がある。検査の結果、タイヤの摩耗等による不良箇所については、遅滞なく修復しなければならない。
4 最大積載荷重1t 以上のフォークリフトの運転は運転技能講習修了者が行うこと。
5 安全管理体制を整備確立して、安全管理を徹底すること。

運搬した廃材を焼却場のピットに落とす作業中、フォークリフトと共にピット内に転落し死亡

発生状況

 この災害は、建築用の型枠製造を行っている事業場の資材置き場で発生した廃材をフォークリフトで場内の焼却場まで運搬し、焼却用ピットに落とす作業を行っていたとき、フォークリフトがピット内に転落し、フォークリフトを運転していた作業者が死亡したものである。
 災害発生当日、資材置き場の責任者である作業者Aは、フォークリフトを使用して焼却用ピットへ廃材を投入する作業を行っていた。
 作業は、フォークリフトに載せた廃材をピットの手前まで運搬し、その場所でフォークを上下させ、その振動によって廃材をピット内に投入していたが、Aは誤ってフォークリフトとともに深さ約1.5mのピット内に転落した。Aはピット内から逃げられず、焼死した。
 10年前に焼却場を建設した当初、ピットの手前約1mに車止めがあり、ピット内への廃材投入作業は、その位置に停車したフォークリフトから作業者が廃材を運び、手で投入しており、当時作成された作業手順書にも、その方法が明記されていたが、その後、フォークリフトの衝突により車止めが破損したが修復されなかった。また、作業者が熱や煙を嫌ったことから、災害発生時点では、作業手順書が守られず、日常的にフォークリフトから直接、廃材を投入する方法で行われていたおり、事業者も黙認していた。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ピットへフォークリフトが転落することを防止する措置がなかったこと
 もともとピット手前1mに車止めが設置されていたが、その後、破損しても修復されなかった。
2 作業者が作業手順書を守らず、また事業者もこれを黙認していたこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 ピットへのフォークリフトの転落を防止する措置を講じること
 ピット手前に車止めの設置等、ピットへのフォークリフトの転落防止措置を講じるようにする。また、車止めの破損等によりその機能が維持できない状況が生じたときは、修復するまで間、誘導者を配置し、フォークリフトの誘導をさせるようにする。
2 作業手順書に従い、フォークリフトを停止し、手で投入する作業を行うよう作業者に周知徹底すること