防火水槽新設工事において練炭を用いたコンクリート養生箇所に立ち入り、一酸化炭素中毒となる

発生状況

本災害は、防火水槽新設工事において、練炭を用いたコンクリート養生を行っていたが、それとは知らずにコンクリート型枠解体作業を行おうと防火水槽内に入り、練炭の不完全燃焼によって発生した一酸化炭素を吸入し、被災したものである。
 この防火水槽新設工事は、床堀り、配筋、型枠組立、コンクリート打設、型枠解体等の工程で行われた。この工事が行われたのは寒冷地であったため、コンクリートが固まるまで十分な保温養生が必要であった。このため、コンクリート打設後、開口部をビニールで閉じ練炭を用いて保温養生を行い、養生開始日から1週間目に型枠解体作業にとりかかった。
 この工事を行っていた事業場は従業員が少なかったため、型枠解体作業は、急遽この事業場とは別の事業場で請け負うことになった。
 型枠解体作業を請け負った事業場の作業者は、作業開始に当たって、元請けの現場監督から練炭養生をしていることは告げられていなかった。
 まず入口を覆っていたビニールを外し、1名の作業者が作業用はしごを伝って水槽内に入ったところ直ちにうずくまってしまった。
 他2名の作業者が救出のため水槽内に入ったところ同様に次々倒れた。その後この3名は病院に運ばれ、一酸化炭素中毒と診断された。
 なお、呼吸用保護具および送風機等の換気装置は、元請け、下請けとも所持しておらず、水槽内で作業を行うに際し、酸素濃度および一酸化炭素濃度の測定を行っていなかった。

原因

[1] 水槽内で、練炭が不完全燃焼したこと。
[2] 水槽内で練炭を使用していることを事前に作業者に周知していなかったこと。
[3] 水槽内の一酸化炭素濃度について測定する等、安全確認をしなかったこと。
[4] 水槽内の換気を十分行うことなく、いきなり作業者を立ち入らせたこと。
[5] 被災者救出の際、適切な呼吸用保護具を使用しなかったこと。

対策

[1] 練炭等燃焼ガスの中に一酸化炭素が含まれているものに関しては、一酸化炭素中毒を含む酸素欠乏による危険性について、関係作業者に十分な安全衛生教育を行うこと。
[2] 練炭を使用し、燃焼させた場所には、一酸化炭素中毒の危険性がある場所であることを表示すること。
[3] 水槽内に立ち入る際は、事前に十分な換気を行い、かつ、水槽内の一酸化炭素等の濃度測定を行うことにより、一酸化炭素中毒の危険がないことを確認すること。また、必要に応じて適切な呼吸用保護具を使用すること。

配管ピット内における酸素欠乏症

発生状況

本災害は、工場新築工事において、既にコンクリートを打設し終わったトイレ用配管ピットの型枠解体作業において、作業者が型枠解体のためピット内に立ち入ったところ、酸素欠乏症により倒れたものである。
 災害発生当日、午前8時からの全体朝礼の後、職長Aが、当日の作業として1階女子トイレの配管ピットの型枠解体作業を行う旨を説明した。
 引き続いて、作業開始。まず、ピット内の様子を確認するため作業者Bがピット内に入ったが、変わった臭気を感じたのですぐ息を止めて外へ出た。
 そこで、Bは元請の作業者Cを呼び、送風機を持って来るよう依頼したが、それによる換気を待たず再びピット内に入った。そして、やはり臭気を感じ、急いで息を止めて、かろうじて外へ出た。その後、しばらく休息していたものの、次第に頭痛、吐き気がひどくなり、救急車で病院に運ばれ診断を受けたところ、酸素欠乏症と診断され、30日程度の休業を要するに至った。
 災害発生後、現場を調査したところ、ピット内は湿度が非常に高く、カビ臭があり、床、壁等には水滴が付着していた。また、型枠はかなりの湿気を含んでおり、随所で腐食し、菌類が発生していた。硫化水素濃度は、酸欠則に規定する10ppmを超えていなかったが、酸素濃度は16%程度であった。
 これらのことから、ピット内に酸素欠乏空気が発生した原因は、コンクリートの打設以来ほとんど密閉された状態が4カ月ほど続いており、また季節が夏ということで、連日の暑さにより、しみ込んだ雨水などに含まれる有機物が腐敗したり、菌類が発生したりすることにより、酸素が消費されたためと考えられる。
 なお、本災害が発生したピット内部は、労働安全衛生法施行令別表第6の第3号「ケーブル、ガス管その他地下に敷設される物を収容するための暗きょ、マンホール又はピットの内部」に該当し、事業者が同場所における作業を行うにあたっては、酸欠災害防止のため、酸素欠乏症等防止規則に規定する所要の措置を講じなければならない。

原因

[1] 雨水等がピット内にしみ込み、内部で微生物、菌類などが繁殖し、酸素が欠乏したこと。
[2] 事業者に、災害が発生したピット内部が酸素欠乏危険場所であるとの認識がなかったこと。
[3] 作業を開始する前に、ピット内部の酸素濃度の測定を行わず、酸素濃度が18%以下になっていることを確認しなかったこと。
[4] ピット内部を換気せず、作業者に空気呼吸器等を使用させなかったこと。

対策

[1] 酸素欠乏危険作業を行う場合には、測定器具を備え付け、作業を開始する前にピット内の酸素濃度および硫化水素濃度を測定すること。
[2] 上記の測定結果をもとに、作業場の空気中の酸素濃度を常時18%以上に、かつ硫化水素濃度を10ppm以下に保つように必要な換気を行うこと。
[3] 作業の性質上換気することが著しく困難な場合には、空気呼吸器等を備え付け、これを作業者に使用させること。
[4] 第2種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その指揮のもとに作業者に作業を行わせること。
[5] 酸欠作業に就かせる作業者に対し、酸素欠乏の発生の原因、酸素欠乏症を防止するための対策等について、特別の教育を行うこと。

トラッククレーンが横転し、挟まれる

発生状況

事故が発生した当日の作業は、地上から地下駐車場に通じる自転車・歩行者用通路のコンクリート打設を行うための型枠建て込みの作業で、作業者6名のうち3名が共同して国道側の通路壁型枠を起こす作業を行い、他の3名が壁型枠に補強用の角鋼管を取り付ける作業を行っていた。
 午後に入り、壁型枠を起こす作業を行っていた被災者(無資格者)は、地上部分に上がり、型枠材料を現場に搬入するため止めてあったトラッククレーンを、右側のアウトリガーのみを最大張出の状態で操作した。
 束ねた角鋼管(長さ:3.5mの角鋼管×50本、重量0.72トン)を地下通路部分につり降ろそうと、被災者自身が玉掛し、ジブを車両後方から右側方に旋回したところ、過荷重のためトラッククレーンが右に大きく傾いた。
 車両の右側でトラッククレーンの操作を行っていた被災者は、トラッククレーンのアウトリガーと鋼管で組み立てたフェンスに挟まれ被災したものである。なお、災害発生時のトラッククレーンの状態は、作業半径約7.6m、ジブの長さ約8.1m、ジブの傾斜角約20度であり、定格荷重は約0.3トンとなっていた。

原因

(1) つり荷の重量がトラッククレーンの能力に比較して大幅に上回っていたこと。
(2) 作業方法をあらかじめ決定していなかったこと。
(3) 無資格でトラッククレーンの操作を行っていたこと。

対策

(1) トラッククレーンにその定格荷重を超える荷重をかけて使用しないこと。
(2) トラッククレーンを用いて作業を行う際には、あらかじめ作業の方法を定めること。
(3) トラッククレーンを用いて作業を行うときには、当該トラッククレーンの能力に応じた資格を有する者に作業を行わせること。

玉掛け作業中にドラグ・ショベルが転落し、作業者を直撃

発生状況

本災害は、ホテル新築工事における測量において、測定のためのポイント上に敷いてあった工事用鉄板を移動させるため、ドラグ・ショベルによりつり上げ旋回したところ、ドラグ・ショベルのバランスが崩れ転倒し、玉掛け作業を行っていた作業者を直撃したものである。
 災害が発生した工事は、建物の新築工事に伴う外溝工事であり、事故当日は、フェンスを張るための土台となるコンクリートの型枠作業、コンクリートミキサー車を現場へ導き入れるための整地作業および測量作業であった。
 型枠作業に2名、小型ドラグ・ショベル(バケット容量0.25m3)を使用した整地作業に2名、そして測量作業に2名の計6名が作業を行っていた。
 整地作業および測量作業はそれぞれ別々に移動しながら行われていた。
 建物東側付近の水路について測量しようとしたところ、測量ポイントの一つが現場に入る車両運行のために敷設されていた重量1.4トンの大きい鉄板の下になっていた。
 このため測量用の杭を地面に打ち付けられず困っていたところ、整地作業が一段落し、所定の置き場に戻すために小型のドラグ・ショベルが移動してきた。
 測量を行っていた現場責任者は、ドラグ・ショベルを運転していた者と相談し、鉄板を小型ドラグ・ショベルでつり上げて移動させることになった。
 杭を打つためには敷設してある鉄板の5枚を移動させる必要があり、現場責任者が玉掛けの指示を行い、その指示により1人がドラグ・ショベルを運転し、整地作業の補助を行っていた者がワイヤーロープで玉掛けを行った。もう1人の測量を行っていた者は、少し離れたところで測量の準備をしていた。
 1枚ずつ3枚移動したところで、玉掛けの指示を行っていた現場責任者は、作業を見ていなくても大丈夫だと判断し、測量の準備にとりかかった。
 その直後、4枚目の鉄板をつり上げ旋回させたところ、ドラグ・ショベルはバランスを崩し、80cm下の水路の脇の整地した通路に倒れ込んだ。その時ドラグ・ショベルの倒れ込んだ場所で玉掛けを行っていた者が、ドラグ・ショベルの下敷きになった。

原因

(1) 鉄板を移動させなければならないという当初予定にない作業の必要性が発生したにもかかわらず、その作業の打合せ等を行わず十分な安全確保を行わなかったこと。
(2) ドラグ・ショベルを用途外の荷のつり上げ作業に使用したこと。
(3) 荷の重量に比し、ドラグ・ショベルの能力、安定度が不十分であったこと。
(4) 玉掛けが終了したにもかかわらず、作業範囲外に退避させていなかったこと。

対策

(1) 荷をつり上げて移動させるには移動式クレーン等を使用し、ドラグ・ショベル等の車両系建設機械による用途外使用は行わないこと。
(2) 移動式クレーン等が使用できない等でドラグ・ショベル等の車両系建設機械を使用し荷をつり上げることがやむを得ない場合には、荷の重量、旋回によるモーメントを考慮し、荷をつり上げ旋回させることで転倒することがないよう使用すること。
(3) 打ち合わせ等と異なる事態が発生した場合は、元請等関係者に連絡し、改めて協議し、十分な安全確認をした上で作業を行うこと。
(4) 作業範囲内には作業者を立ち入らせないこと。

後退してきたダンプトラックにひかれて死亡

発生状況

本災害は、既存の高速道から引込線を建設する工事において、付近で清掃作業を行っていた被災者が、後進で走行してきたダンプトラックにひかれ、死亡に至ったものである。
 工事の内容は、高速道の外側の1車線を通行止めにし、新たに作る引込線の場所の整地、既設のヒューム管の撤去、ブロック擁壁の設置および新たなヒューム管の敷設を行うものであった。
 災害発生当日の朝、現場の状況の確認を行ったところ、既設の道路面と新たに設置するブロック擁壁の基礎コンクリートの間が、約4mにわたって約70cmの深さでくぼんでいたため、ダンプトラックで砂利を入れ、作業ヤードを確保することとした。
 朝の打合せの際、ダンプトラックでの作業は、規制が1車線だけでダンプトラックがすれ違えなかったため、ダンプトラック1台で砂利を積み、採石場と工事現場を往復するものと決められた。また、道路公団からの指示により一般車両と反対向きでの走行は禁止されていたため、高速道の車線をおよそ100m程度後退して走行することになった。
 被災者の災害発生当日の作業は、午前中は前日行っていたブロック擁壁の基礎コンクリートの型枠解体と片付けを行い、午後は道路上の掃除を行うこととされていた。
 当日の午後、被災者が規制された高速道上で清掃を始めたとき、ダンプトラックを用いての砂利の搬入が始まった。ダンプトラックは高速道への入り口の広くなったところで方向転換して、後退しながら高速道内に入ってきた。運転手は周囲に多くの機械が動いており、また、砂埃がすごかったのでダンプトラックのバックミラーだけでなく、運転席の窓から顔を出し、後方を確認しながらゆっくりと後退したが、被災者に気が付かなかったため、ダンプトラックの後方で清掃作業をしていた被災者がダンプトラックの左側後輪にひかれた。

原因

(1) ダンプトラックの誘導者が配置されていなかったこと。
(2) 周囲で建設機械が作業をしていたため、騒音により被災者にダンプトラックのバックブザーが聞き取れなかったこと。
(3) 被災者がダンプトラックの運転手の視界の死角に入ってしまったこと。

対策

(1) ダンプトラック等を用いて作業を行う際は、作業者とダンプトラックが接触することを避けるような作業計画をたて、関係する作業者に対して十分に周知すること。
(2) 車両系荷役運搬機械に接触することにより、作業者に危険が生ずる恐れがある場合には、立入り禁止の措置を講ずるか、誘導員を配置すること。
(3) 作業間の連絡調整を十分に行うこと。

仮置きしてあった型枠材が倒れ、挟まれる

発生状況

本災害は、研磨作業および塗装の作業を行うために作業場内に置かれていた型枠材が強風にあおられて倒れ、塗装作業のため型枠材の側にいた作業者が型枠材と地面の間に挟まれて死亡したものである。
 作業内容は、以前に護岸工事の型枠として使用され運び込まれていた型枠材を、次の工事ですぐに使えるように整備補修することであった。具体的には、型枠材のコンクリートと接する面のさびをサンダーによって研磨し、さび止めおよび型枠材とコンクリートとのはく離を促進する塗料をローラーを使用して塗布するものであった。
 作業場所は、海岸に近い埋め立て地にある遮へい物のない空き地であり、海からの強風がまともに当たる場所であった。
 事故当日、被災者は他の作業者1人(作業者A)と2人で、3個の型枠材の研磨作業を行うことを指示され、朝から研磨作業および塗装作業を共同で行っており、被災者は自分の担当の型枠材の研磨作業を終了した。作業は基本的にそれぞれの型枠材について各人が別々に行っていたが、Aの担当の型枠のさびがひどかったため、被災者はその型枠材の塗装の一部を手伝った。この作業の終了後、被災者は研磨の終わった自分の担当の型枠材に塗装をするため、型枠材に近づいたところ、強風により型枠材が倒れ、地面と型枠の間に挟まれて被災した。
 倒れた型枠材は、H型鋼に厚さ約1cmの鉄板を溶接して作られたものであり、コンクリートと接する面と反対側の面にアングルによって型枠取付時の足場を取り付けられるようになっている。大きさは、縦7.8m、横2.2m、厚さ7.5cmで、重量は約3トンである。整備中および整備後、型枠材は長辺を下にして(接地面は幅約7.5cmのH型鋼)自立しており、特に転倒を防止するための措置はなされておらず、重心が高い位置にある極めて不安定な状況であった。研磨作業終了後、保管場所を移動する予定であった。

原因

[1] 自立させると不安定な形状の型枠材を、転倒防止措置を講じることなく自立させたこと。
[2] 風の吹いてくる方向(海側)に型枠材の各面の中で面積が最大である面(コンクリート打設面)を向けていて、風による転倒の恐れが強い状態であったこと
[3] 型枠材の整備作業に関する安全な作業手順が作成されていなかったこと。

対策

[1] 自立させると不安定な形状の型枠材については、基本的に型枠材を寝かせて作業を行い、作業後の保管についても寝かせて保管することを原則とすること。
[2] 作業上、立てて作業、保管を行う必要のある場合は、型枠材に控えをとって地面に固定するか、他の安定したものに固定する等の転倒防止措置を講ずること。
[3] 型枠材の整備作業においては、作業手順書を作成し、作業者に周知徹底すること。
[4] 作業者に対して安全衛生教育を行い、平素より危険に対する認識と、それに対して対応できる知識を与えること。

交流アーク溶接機にて溶接中の感電事故

発生状況

本件災害は、交流アーク溶接機で溶接中、溶接棒ホルダー絶縁覆いが破損していたため、露出した充電部分から感電、死亡したものである。
 被災者の所属する事業場は、機械等製造工場の増築工事において、工場内の床面に製造用機械を据え付けるための溝やピットの基礎を築造する工事のうち、床溝やピットの枠に取り付けるL字鋼を所定の寸法に切断し、アーク溶接で取り付ける工事を請負う2次下請の事業場であった。
 災害発生当日午後、被災者は元請事業場Aの作業指揮のもとで、型枠のセパレーターと鉄筋とを溶接するため、鉄筋と型枠との間(45cm)に入り、アーク溶接を始めたが、作業場所が狭い箇所であったため、常に右肩を鉄筋に押し付けたまま、かがんだ姿勢で溶接作業を行っていたところ、使用していた溶接棒ホルダーの絶縁部が破損し、充電部分が露出していたため、感電し死亡したものである。
 なお、被災者が使用していた交流アーク溶接機は自動電撃防止装置が付いておらず、また、災害発生当日の屋内作業現場は気温34℃、湿度80%とたいへん蒸し暑く、被災者の作業衣は汗でかなりぬれて電気が流れやすい状態にあった。

原因

[1] 溶接棒ホルダーの絶縁覆いが破損し、充電部分が露出していたこと。
[2] 鉄筋のような導電体で囲まれた狭あいな箇所で使用する交流アーク溶接機に自動電撃防止装置を使用していなかったこと。
[3] 作業場所がたいへん蒸し暑く、作業衣が汗でかなりぬれていて電気が流れやすい状態にあったこと。

対策

[1] 溶接棒ホルダーには、必ず絶縁覆いを使用すること。また、使用開始前にはその絶縁覆いを点検し、問題がある場合には直ちに補修し、または取り換えること。
[2] 鉄筋のような導電体で囲まれた狭あいな箇所で交流アーク溶接機で溶接作業を行う際は、自動電撃防止装置を使用させること。
[3] アーク溶接を行う作業者の作業衣が汗でぬれた場合、別の作業衣に着替えさせる等、電流が流れやすい状態にしておかないこと。
[4] アーク溶接作業に従事する者には、法令に基づく特別教育等安全教育を十分に行うこと。

建設中の防火水槽で、練炭を使用した9日後に槽内に入り一酸化炭素中毒

発生状況

災害の発生した工事はコンクリート製の防火水槽を新設する工事であり、工事を受注したS社は設計から施工までを一貫して行っていた。
 防火水槽は地下埋設式で、概ね直方体の形状であり、上部には2ヵ所のマンホール部(取水口)が設けられている。水槽の大きさは縦3.0m、横5.7m、高さ2.5mであり、マンホール部の直径は0.6mであった。
 工事は、[1]水槽新設箇所の掘削、[2]底部の鉄筋の組立、[3]底部のコンクリート打設、[4]側壁及び上部工(天井)の鉄筋及び型枠の組立、[5]側壁及び上部工のコンクリート打設、[6]側壁及び上部工の型枠の解体、という工程で行われた。
 この工事は寒冷地で行われたので、コンクリートが固まるまで凍結防止のための保温養生が必要であった。このため、側壁及び上部工のコンクリート打設後、槽内に練炭コンロを2個置いて燃焼させ、水槽全体にビニールシートを覆いかぶせて養生した。
 打設の翌日及び翌々日は槽外で側壁外部及び上部工外部の型枠の解体作業を行った。
 打設後3日目から8日目までは大雪のため作業は行われず、9日目に作業が再開され、この日の作業は、水槽内部の写真撮影と側壁内部及び上部工内部の型枠の解体であった。
 まず、S社の現場代理人Aが作業者3名とともに防火水槽全体にかぶせてあったビニールシートのうち、上部工部分だけを取り外した。取り外し後、Aは一人でマンホール部から槽内に入り、約3分間かかって型枠の設置状況等の写真を撮影した。撮影後、Aは水槽の外に出たが、撮影中に気分が悪くなったことから、作業者3名に「気を付けて解体作業を行うように。」とだけ告げ、他の用務のため会社事務所に戻った。
 Aが帰社した後、作業者3名は解体作業の手順について打ち合わせをして、3名のうちBとCが槽内で型枠を解体し、解体したパイプサポート等の型枠材を槽外のDがマンホール部から受け取り、現場近くに駐車しておいたダンプカーの荷台に載せることになった。
 BとCが槽内に入ってから7~8分後、Dがダンプカーに型枠材を運び荷台上で整理していた時、槽内から声が聞こえたのでマンホール部に戻り水槽内部をのぞいたところ、うつ伏せに倒れているBとCを発見した。
 発見後、Dは急いで槽内に入り、BとCを一人ずつ順に槽外に救出した。
 災害発生時、防火水槽は上部のマンホール部2ヵ所が開放されているだけで外気による換気はほとんどなかったため、練炭の不完全燃焼により発生した高濃度の一酸化炭素が槽内に滞留していた。なお、工事現場には、送風機等の換気装置及び呼吸用保護具は備えられておらず、また槽内で作業を行うに際して一酸化炭素濃度及び酸素濃度の測定は行われていなかった。

原因

[1] 槽内で練炭が不完全燃焼して一酸化炭素が発生し、これが滞留していたこと。
[2] 工事を監督する責任のある現場代理人が、自ら気分が悪くなったことにより槽内の危険性を察知していたにも関わらず、槽内の換気、呼吸用保護具の使用の指示等の安全のための措置を行うことなく作業者を槽内に立ち入らせたこと。

対策

[1] コンクリートの保温養生には、極力、練炭の使用を避け、電気器具を用いるなど作業方法を改善すること。
[2] 練炭の使用にあたっては、燃焼により発生する一酸化炭素による中毒及び酸素欠乏の危険性について作業者に十分な教育を行うこと。
[3] 水槽内部等の自然換気の不十分な場所で練炭を使用する時には、当該場所を立入禁止とし、その旨を掲示等で作業者に周知すること。
[4] 練炭を使用した場所にやむを得ず作業者を立ち入らせる場合には、事前に十分換気を行い、かつ、一酸化炭素等の濃度を測定すること等により危険のないことを確認するとともに、必要に応じて作業者に適切な呼吸用保護具を使用させること。