小型移動式クレーンが転倒し、作業者がジブに押されて墜落

発生状況

 この災害は、桟橋上に設置した小型移動式クレーンで足場用単管の束を4m下の台船に下ろそうとしたときに発生した。
 災害発生当日、港湾工事を行うため、桟橋に停泊している台船上で単管足場の組立て作業を行っていた。桟橋から台船への足場部材の揚重作業は、桟橋上に設置した小型移動式クレーン(つり上げ荷重2.32t、4本のアウトリガーを有するクローラクレーンで、通称「カニクレーン」と呼ばれるもの)で行い、作業者A~Cの3人が作業を担当した。
 午前中は、Bが移動式クレーンを運転し、AとCが玉掛けを担当して足場部材を3回に分けて台船に下ろした。昼食後に行われた4回目の揚重作業は、Aが1人で行うことになり、単管18本(重量290kg)の束を玉掛けした後、移動式クレーンを運転して、つり荷を台船の真上の位置に持って行くためジブを旋回および起伏したところ、つり荷が桟橋上に置かれた資材カゴに引っ掛かった。そこで、Aは移動式クレーンの運転を停止し、移動式クレーンの傍らの運転位置を離れて資材カゴからつり荷を外そうとしたときに、移動式クレーンが横転したため、Aはジブに押されて桟橋から台船上に墜落した。
 移動式クレーンが横転したとき、アウトリガーの張り出し状態と作業半径から定格荷重は160kgであったが、つり荷は290kgと過荷重の状態であった。また、設置場所が狭かったため、左右のアウトリガーの張り出し状態が異なっていた。なお、この移動式クレーンのアウトリガーは4隅に設けられていて、張り出し方向と張り出し幅をそれぞれ3段階で調整できるようなっていた。
 さらに、Aは玉掛け技能講習を修了していたが、小型移動式クレーンを運転するための資格(移動式クレーン運転士免許又は小型移動式クレーン運転技能講習修了)は持っていなかった。

原因

 この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 つり荷を移動中に過荷重になったこと
 移動式クレーンが横転したときのつり荷の重量は290kgであったが、アウトリガーの張り出し状態と作業半径から定格荷重は160kgであり、過荷重となっていた。さらに、アウトリガーの張り出し状態が左右で異なっていたため、横転しやすくなっていた。
2 資格がない者に移動式クレーンを運転させたこと
 小型移動式クレーンを運転するための資格の有無を確認しないまま、資格がない者に小型移動式クレーンを運転させた。
3 1人作業であったこと
 つり荷を玉掛けし、周囲の状態を確認しながら移動式クレーンを運転する作業を1人の作業者に行わせていた

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 移動式クレーンの定格荷重を超える荷をつり上げないこと
 移動式クレーンを用いて作業を行うときは、作業計画、移動式クレーンの設置場所とその周囲の状況から定格荷重をあらかじめ確認しておき、定格荷重を超える荷をつり上げないようにする。さらに、アウトリガーの張り出しを左右同じにし、移動式クレーンを安定した状態で使用することも重要である。
2 移動式クレーンは資格のある者に運転させること
 移動式クレーンは、その能力(つり上げ荷重)に応じた資格を有する作業者に運転させなければならない。つり上げ荷重が1t以上5t未満の小型移動式クレーンについては、移動式クレーン運転士免許を受けた者または小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者に運転させる必要がある。
3 移動式クレーン作業は2人以上の作業者に行わせること
 移動式クレーンによる荷の移動作業では、移動式クレーンを運転する作業者1人、荷の玉掛けとつり荷の確認を行う作業者1人のほか、必要に応じ監視人等を配置し、周囲の安全にも注意しながら作業を行わせる。

フォークリフトを運転中、曲り角で転倒し、運転者が死亡

発生状況

 この災害は、フォークリフトを運転して移動中に発生したものである。
 災害発生当日、職長Aおよび作業者BとCの3人は、工事現場に搬送する大型の掘削機械をトラックに積み込むための作業を資材置き場で行っていた。午前中は掘削機械をトラックの荷台に乗る大きさに解体し、午後、解体した機材を積み込むことにした。しかし、資材置き場に常備されているフォークリフトが他の作業で使用されていたため、敷地内の本社事務所のフォークリフトを借りることになった。
 そこで、AはBにフォークリフトを取りに行くよう指示し、Bは本社事務所でキーが挿入されたままのフォークリフト(最大荷重3t)を運転して資材置き場まで移動中、建物の角で右折したところ、フォークリフトがスリップし、転倒した。Bは運転席から投げ出され、転倒したフォークリフトのヘッドガードの下敷きとなった。Bは病院に搬送されたが、死亡した。
 Bは、フォークリフト運転技能講習を修了しておらず、AもBがフォークリフト運転の資格を持っていないことを知っていた。
 また、転倒したフォークリフトは、毎朝の作業前にエンジンオイルと冷却水を点検していたが、タイヤはすり減っていて溝がなかった。さらに、月例検査、年次検査(特定自主検査)は実施されていなかった。

原因

 この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 フォークリフトの運転を無資格者に指示したこと
 Aは、Bがフォークリフト運転技能講習を修了していないことを知りながら、Bにフォークリフトの運転を指示した。
2 フォークリフトの点検や整備が適切に実施されていなかったこと
 転倒したフォークリフトを毎朝、作業前に点検していたが、タイヤがすり減っていて溝がないなど整備が適切でなかった。また、月例検査、年次検査(特定自主検査)を実施していなかった。
3 フォークリフトにキーが挿入されたまま誰でも使える状態で置いていたこと

対策

 同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 フォークリフトの運転は、資格者に行わせること
 最大荷重1t以上のフォークリフトの運転は、フォークリフト運転技能講習を修了し、運転に必要な知識、技能を持っている者に行わせる必要がある。また、最大荷重1t未満のフォークリフトの運転は、フォークリフト運転技能講習またはフォークリフト運転特別教育を修了した者に行わせる必要がある。
 事業場では、フォークリフト運転の資格者名簿等を作成し、管理者等関係者に周知するとともに、無資格者の運転は禁止する。
2 フォークリフトについて、月例検査および年次検査(特定自主検査)を実施するとともに、作業前の点検を適切に行うこと、また、点検、検査の結果、異常を認めた場合は、補修整備した後に使用すること
3 フォークリフトは、無資格者が使用できないように管理すること
 運転者がフォークリフトを離れるときは、必ずキーを抜き、確実に保管し、無資格者が運転することのないようにする。

フォークリフトで持ち上げた作業台が転落し、乗っていた2名が被災し1名が死亡

発生状況

 この災害は、Z社の工場建屋の増設工事において、既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げるため、フォークリフトで持ち上げた作業台に乗って作業していた2名の作業者が、作業台とともに転落したものである。
この増設工事は、Z社(発注者)がY社(元請)に発注して工事が進められ、増設フロアの建設工事がほぼ終わった後、既設フロアから増設フロアに生産設備を移設する作業をY社から請け負ったX社が行っていた。
 移設作業の初日、X社の職長Aと同僚の作業者B~Dの4人は、まず、既設フロアと増設フロアを仕切っていたブルーシートを取り外した。その後、既設フロアで生産設備を解体し、これを増設フロアに移動する作業を行った。1日の作業を終えて現場を去ろうとしたとき、Z社の担当者Eから「その日の作業を終えたらブルーシートを元通りにつり下げておくように」との指示があった。そこで、A~Dは、現場付近にあった作業台(パレットの周囲を手すりで囲ったもの)をフォークリフトで持ち上げ、ブルーシートのつり下げ作業を行うことにした。BとCが作業台に搭乗し、Dはフォークリフトの運転を、Aは作業の指揮を行った。
ブルーシートのつり下げ作業を終えて、作業台を降下させたとき、作業台がブルーシートに引っかかったので、Dがフォークリフトを後退したところ、作業台が傾いて落下し、BとCは作業台とともに4mの高さから墜落した。2人は直ちに病院に搬送されたが、Bは間もなく死亡した。
生産設備の移設作業期間中も作業時以外は既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げておくことは、Z社からY社に伝わっていなかった。そのため、Y社がX社に示した計画書にはブルーシートのつり下げ作業は含まれておらず、高所作業用のローリングタワーや高所作業車を用意していなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1 発注者(Z社)と元請(Y社)との連絡調整が十分でなかったこと
 生産設備の移設作業期間中も作業時以外は既設フロアと増設フロアを仕切るブルーシートを吊り下げておくことは、発注段階でZ社からY社に伝わっていなかった。さらに移設作業期間中のブルーシートつり下げ作業もZ社の担当者が直接X社の職長に指示したため、Y社はこのことを認識しておらず、Y社がX社に示した計画書にはブルーシートのつり下げ作業は含まれておらず、高所作業に必要なローリングタワーや高所作業車を用意していなかった。
2 高所作業を行うため必要な措置を講じないまま高所作業を行ったこと
 足場を組み立てる、ローリングタワー又は高所作業車を使用する等の措置を講じないまま、作業台をフォークリフトのフォークに載せて持ち上げ、高所作業を行った

対策

 同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 発注者と元請との連絡調整を十分に行い、安全な計画を立て作業を行うこと
 安全な作業計画を立てるためには、発注者と元請が工事開始前に連絡調整を十分に行い、発注者からの伝達事項や要望の漏れがないようにする。また、臨時の作業が発生した場合には、まず発注者と元請が必要な機械・設備を確認し、安全な作業の手順を検討し、これを下請けを含めた関係作業者に周知徹底することが重要である。
2 高所作業を行うため必要な措置を講じた上で高所作業を行わせること
 フォークリフトの乗車席以外の箇所に人を乗せることは原則として禁止されている。足場を組み立てる、ローリングタワー又は高所作業車等を使用するとともに、十分な安定度を確保、作業者に保護帽や安全帯を使用させる等の墜落防止措置を講じた上で高所作業を行わせることが重要である。

切り株の除去作業中、携帯用丸のこ盤で切創を負い死亡

発生状況

 この災害は、プレハブ倉庫新設工事において、敷地を整備するために敷地内の立ち木を伐採する作業を行っている際に発生した。
 作業者Aが所属するZ社は、この工事の2次下請として、倉庫を新設する敷地内の2本の立ち木(いずれも直径約70cm)の伐採と伐採後の敷地の整地の作業を請け負った。
 Z社は災害発生の前日までに、2本の立ち木を伐倒したが、整地のためには切り株を取り除く必要があり、ドラグ・ショベルを用いて地上に引っ張り出そうとしたが、根が地中深く張っていたため不可能ということが分かり、1次下請のY社と打合せを行った結果、切り株を地面の高さ以下まで削った後、その周囲を埋め戻す作業に変更した。
 災害発生当日、Aは、同僚の作業者Bと2人で切り株を削る作業に従事した。この切り株を削る作業は、元々予定されていなかったことから、Z社は必要な道具類を現場に持ち込んでおらず、AとBは、Y社が現場に持ち込んでいた携帯用丸のこ盤、電動ドリルおよびなたを借りて、作業に当たった。
 午前の作業を終了し、昼の休憩の後、取りかかった午後の作業では、Aは携帯用丸のこ盤を使用し、Bはなたを使用して、互いに背を向ける格好で作業していた。しばらくして、Bは、Aの悲鳴を聞き振り返ったところ、Aは切創を負い、出血していた。Aは、直ちに病院に搬送されたが、約2時間後に死亡した。
 災害発生の前日のY社とZ社の打合せでは、切り株を削ることは確認したが、具体的な作業方法は検討していなかった
 また、切り株があった地面は、傾斜しており、切り株の北側と南側とでは約40cmの高低差があり、AおよびBは、不安定な作業姿勢を強いられていた。
 さらに、Z社では作業者に安全衛生教育を実施しておらず、AおよびBは携帯用丸のこ盤の安全な使用方法についての知識が乏しかった。

原因

 この災害の原因として、次のことが考えられる。
1 斜面の切り株を取り除くために、安全な作業方法等を検討せず、携帯用丸のこ盤を用いるという無理のある作業方法を採用したこと
2 立ち木を代採する作業や携帯用丸のこ盤の使用について、作業者に安全衛生教育を行っていなかったこと

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 携帯用丸のこ盤を用いて斜面の切り株を取り除くこと自体無理な作業であるので、他の機械や工具を用いた安全な作業方法を検討すること
2 立ち木を代採する作業や携帯用丸のこ盤の構造、安全な使用方法等について安全衛生教育を行うこと
 作業者に対し、安全衛生教育を行い、携帯用丸のこ盤の構造、安全な使用方法等について周知させるとともに、危険な使用を行なわないよう徹底させる。

フォークリフトとともに廃材焼却ピット内に転落

発生状況

 この災害は、型枠工事を行うZ社の焼却場において、フォークリフトで廃材を焼却ピットに投入する作業中にフォークリフトとともに焼却ピットに転落し、作業者が死亡したものである。
 災害が発生したピットは、建築現場へ搬入する型枠資材の加工の際に発生する屑材や、建築現場より脱型された資材で再利用できない廃材を焼却するためのもので、構造は、地面を深さ2m掘削して表面をコンクリートで固めたものである。
 災害発生当日、作業者Aは、型枠資材の廃材を資材置き場からフォークリフトで運搬し、焼却ピットに投入する作業を行っていた。フォークリフトを投入口前に止め、フォークを揺すってフォークに載せた廃材を焼却ピット内に振り落としていたところ、フォークリフトが前に傾き、フォークリフトとともに焼却ピット内へ転落し、死亡した。
 焼却ピットが作られた当初は、ピットの手前70cmのところに高さ90cmの車止めが設けられていたが、その後、取り外されていた。
 Z社では、焼却ピットに廃材を投入する作業について、作業手順書を作成しておらず、安全衛生教育も実施していなかった。また、作業者がピット手前にフォークリフトを止めてフォークを揺すりながら廃材を投入しているのをZ社の経営者や管理者は日頃目撃していたが、転落防止のための対策を立てることなく黙認していた。

原因

 この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 焼却ピットの投入口に、フォークリフトが転落することを防止する設備がなかったこと
 焼却ピットが作られた当初は、投入口のピットの手前70cmのところに高さ90cmの車止めが設けられていたが、その後、取り外されたままになっていた。
2 作業手順書がなく、安全衛生教育も行われていなかったこと
 ピットに廃材を投入する作業について、作業手順書を作成しておらず、作業者への安全衛生教育も実施していなかった。
3 安全管理が不十分であったこと
 車止めがない投入口でフォークリフトを止めてフォークを揺するという危ない作業をZ社の経営者や管理者が黙認していた。

対策

 同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 転落するおそれのあるピット等の開口部には、作業者の墜落、転落を防止するための措置を講じること
(1) 開口部に作業者が近づくおそれのある場合には、作業者の墜落、転落を防止するための防護柵等を設置する。
(2) 開口部にフォークリフト等の車両を接近させて作業する場合には、車両が逸走してピットに落ちることを防止するための車止め等を設置する。
2 作業手順書を作成し、安全衛生教育を実施すること
 ピットへの廃材投入作業について、安全に作業を行うための作業手順書を作成する。さらに、作業手順書の内容を作業者に教育し、安全な作業方法を周知徹底する。
3 安全管理を徹底すること
 経営者や管理者による職場巡視を定期的に実施し、設備の不安全な状態や作業者の不安全な行動があった場合には、すぐに適切な措置を講じる。

5階建て新築工事において、資材の荷揚げ作業準備中に移動式クレーン(つり上げ荷重45t)が転倒

発生状況

 本災害は、鉄筋コンクリート造5階建て新築工事において、資材の荷揚げ作業開始前に発生した移動式クレーン(つり上げ荷重45t)の転倒事故である。資材の荷揚げ荷下ろし作業を請負った一次下請業者が引き起こしたものである。
 移動式クレーン転倒防止のためアウトリガおよびフロントジャッキの敷角として角材(木材)をそれぞれ2個ずつ敷こうとした。しかし、車体右後方の分1個が不足したため、代わりにバタ角4本(木材)を井の字型に組み合わせ敷設した。その後、荷揚げ準備開始の合図を受けて、ブームを下ろした。ブーム傾斜角度を50度まで下げたところ過負荷防止装置によりブームが自動停止し、移動式クレーンは転倒した。災害発生後の調査によると、車体右後方のアウトリガの下に敷角として使用していたバタ角が破損していたのが判明した。
 建物等の損壊はなく、物的損害は転倒した移動式クレーンの破損のみであった。なお、事故発生時の天候は晴れ、ほぼ無風であった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
 事故発生の直接的原因としては、移動式クレーンのアウトリガの下に強度不十分なバタ角を敷いたため、そのバタ角(高さ20cm、幅20cm)が折損したことがあげられる。バタ角が折損し、その厚さ(20cm)だけ移動式クレーンが落下したことより、移動式クレーンが転倒した。また、つり上げようとしていた型枠材は、移動式クレーン設置位置の後方36.3mの箇所に仮置きされていた。移動式クレーンの最大作業半径は32.65mであり、実際には、つり上げることはできない位置に設置されていた。このため、クレーン運転手は無理にブームを下げたおそれがある。
 一方、間接的原因としては、元方事業者が移動式クレーンを使用する作業に関し移動式クレーンの配置および転倒防止に関する計画を作成していないこと、この移動式クレーンの運転手は新規入場者教育を受けていなかったことなどがあげられる。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
 移動式クレーンを設置する場合、十分な広さおよび強度を有する鉄板等を敷設し、その上に移動式クレーンのアウトリガおよびフロントジャッキを張り出して作業を行うこと。また、事前に移動式クレーンの種類に応じた移動式クレーンの転倒防止方法を検討する。作業開始前、それを基に、荷揚げする資材等と移動式クレーンの設置位置の関係、荷揚げ作業の作業手順等を関係者で確認することもあげられる。
 さらに、元方事業者は移動式クレーンの転倒防止およびその配置に関する計画を作成し、この計画に基づき、新規入場者教育を実施し、適切な転倒防止措置を講じるよう関係請負人および関係請負人の労働者に必要な指導をすることもあげられる。

フォークリフトが走行中に転倒し、運転者が下敷きになる

発生状況

 この災害は、コンクリート打設用の型枠資材置場の敷地内において、フォークリフトが転倒し、運転者が下敷きになったものである。
 事業場は、コンクリートの型枠工事を業とするものであり、宅地造成工事の型枠工事を請け負って作業を行った。
 災害発生当日、小型トラッククレーンで午前9時頃現場に到達した被災者ら3名の作業者は数日前から始めた工事現場の型枠解体作業を開始した。
 午後3時頃、解体作業は終了したので、ベニヤなどの残材の一部をトラッククレーンの荷台に積み込み、会社の資材置場に持ち帰った。
 トラッククレーンを入り口近くに止めた被害者は、ヘッドガード付きフォークリフト(最大積載荷重2t 前進走行最高速度19km/h)を使用して、荷卸しを行った。
 フォークの爪の部分を使用して荷を卸し、フォークリフトを走行させて少し離れた置き場まで運ぶ作業を4~5回行って作業を終えた後、駐車場に向かった。かなり早い速度で走行していたが、駐車場の手前でブレーキをかけながら右にハンドルを切ったとき、フォークリフトが転倒した。
 被災者は、頭部をフォークリフトのヘッドガードを支える鉄枠とコンクリート路面との間に挟まれた。
 なお、被災者はフォークリフトの運転については無資格であった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 フォークリフトの運転を無資格者が行ったこと。
 最大積載荷重1t 以上のフォークリフトをフォ-クリフト運転技能講習修了者でない者が運転した。
2 フォークリフトのキーの保管管理がなされなかったこと。
 キーが差しっぱなしになっており、フォークリフトの運転が無資格者でも自由にできる状況にあった。
3 特定自主検査等点検整備が行われていないフォークリフトが使用されていたこと。
 全輪ともに磨耗限界を大幅に超えたタイヤが装着されていたため、コーナー部の旋回時にスリップしハンドルをとられ転倒した。
4 曲り角付近にもかかわらず、フォークリフトを前進走行最高速度近くの速度で運転したこと。
5 安全管理が行われていなかったこと。
 安全作業基準が作成されておらず、作業者の安全教育も不十分であった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画を作成し、関係作業者全員に徹底すること。
 作業計画を変更する場合には、フォークリフトの運転等資格を有する作業については、特に誰が行うかを明確にして関係作業者に指示することが重要である。
2 フォークリフトのキーを厳重に管理すること。
 運転無資格者が絶対に運転できないように、キーは、鍵の掛かった保管庫に保管する等責任者が管理する必要がある。
3 特定自主検査等点検整備を確実に行うこと。
 特定自主検査は毎年定期的に行うとともに、作業前点検及び月次検査を確実に行う必要がある。検査の結果、タイヤの摩耗等による不良箇所については、遅滞なく修復しなければならない。
4 最大積載荷重1t 以上のフォークリフトの運転は運転技能講習修了者が行うこと。
5 安全管理体制を整備確立して、安全管理を徹底すること。

高所作業車のデッキ上で型わくの解体作業中、デッキ手すりと橋桁下面との間にはさまれる

発生状況

 この災害は、有料道路上方にパーキングエリアをPC橋梁構造で設置する工事現場において、橋梁上部工橋桁の型わく解体作業中に発生したものである。
 当日の作業は、朝礼後、作業者数名が以前から使用している定型図表を用いてKY活動を行った後、それぞれに分かれて高所作業車(作業床高さ14.8m)による型わく解体作業を開始し、被災者は同僚1名とともに橋梁上部工橋桁の底板部分の型わく解体を開始した。
 作業は順調に進み、予定した底板の型わく解体が終了したので、被災者は高所作業車を操作してデッキを収納しようとしたが、操作を誤ったためにブームが逆に伸びてしまい、デッキ上の操作盤の手すりと橋桁底部との間に身体をはさまれた。
 そのとき、同僚もデッキの手すりと橋桁底部の間に身体をはさまれそうになったが、とっさに身をかわし助けを求めた。
 その後、45m離れた場所で作業を行っていた他の作業者が災害を知って駆けつけ、この高所作業車の旋回台部にあるもう1つの操作盤で操作し救出したが、7日後に死亡した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 無資格者が高所作業車の運転を行ったこと
 被災者が会社に提出していた高所作業車運転技能講習修了証の写しは、偽造されたものであり、会社はそれを確認することなく作業床の高さが10mを超える高所作業車の運転を行わせた。
2 作業指揮者の指名等を行わずに作業をさせたこと
 会社は、高所作業車を用いた作業を行うに際し、作業計画を策定せず、また、作業指揮者の指名、直接指揮の下に作業を行わせなかった。
3 作業空間が狭かったこと
 橋桁の型わく解体作業であったため、高所作業車のデッキ(作業床)と橋桁型わく底板との間が狭く、デッキ収納の操作を誤ったときに是正の操作を行う余裕がなかった。
4 KY活動等が形式的であったこと
 作業開始前にKY活動が行われたが、全員参加ではなく、また、形式的なもので災害防止効果の面で不十分であった。
 また、元方事業者による下請事業者が行う安全教育等に対する指導援助も不十分であった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 高所作業車の運転は有資格者に行わせること
 作業床の高さが10mを超える高所作業車の運転は、技能講習を修了した有資格者に行わせる。(安衛法第61条、令第20条第15号)
 また、事業者は、高所作業車運転技能講習修了証(技能講習修了証明書を含む)を写しではなく原本で確認する。
2 安全な作業計画の作成等を行うこと
 高所作業車を用いて橋桁の型わく解体作業等を行うときには、あらかじめ作業場所の状況、高所作業車の種類及び能力等について十分な検討を行い、適切な作業計画を策定するとともに、作業指揮者を指名して作業計画に基づく作業を直接指揮させる。(安衛則第194条の9、10)
3 作業開始前の作業打ち合わせ等を十分に行うこと
 その日の作業を開始する前に、全員参加でその日の作業に関する打ち合わせを行うとともに、実効あるKY活動を行わせる。
 また、元方事業者は、下請事業場に対して安全衛生教育などについて指導援助を行う。
4 定期自主検査等を確実に行うこと
 作業床の高さが2m以上の高所作業車については、1年以内に1回の有資格者による定期自主検査(特定自主検査)、1月以内に1回の定期自主検査、作業開始前の点検等を確実に実施し、必要な補修等を行う。(安衛則第194条の23~28)