屋外作業中に発生した熱中症

発生状況

株式会社Aは、アンカーに緊張力を与えた場合の法枠に生ずる歪み等を計測調査するための試験施設の工事を請負っていた。
 災害が発生した日は、7月下旬の暑い日であり、被災者甲を含む作業者は、その日、現場で打ち合せを行った後、午前9時ごろから作業を開始した。
 作業場所は、北西向き傾斜34度の斜面であり、その傾面に設置された金網型枠にコンクリートを吹き付けた箇所をコテを使用して、表面をならして仕上げる作業であった。
 作業者甲と乙は、南側から作業を開始し、午後4時頃にコンクリートの吹き付け作業が終了した箇所のコテならし作業を行っていたが、作業者甲が、突然座りこんで、「気分が悪くなった」という異常を訴えた。そこで作業者乙は、顔を洗いに行った時に使った濡れタオルを持っていたので、それを作業者甲のヘルメットをとってから、頭にあて冷やしてやった。
 しばらくして、作業者甲の異常を知った職長が来た時に、「目がまわり、頭がクラクラする」と訴えており、歩ける様子ではなかったので、背負って約6mの斜面を降りた。日陰になっている場所で休ませ、飲料水を飲ませたが、一口二口飲んだだけであった。この時作業者甲の顔色は青白く、汗はかいていなかった。そのうち目をつむったまま、うわごとを言いはじめたので救急車を呼び、到着するまでの間、タオルで腕と頭を冷やしていた。
 救急車は、まもなく到着し、作業者甲は近くの病院へ収容されたが、死亡した。

原因

[1] 災害が発生した日は夏の快晴であり、作業が行われた場所は斜面で、作業時間中はずっと直射日光が当たり、日陰になる場所は全くなかったこと
[2] 被災者が作業を行っていた斜面のすぐ下の変電設備の日陰にあった寒暖計は最高40℃近くまで上っており、作業が行われていた間、風はほとんど吹いていなかったこと。

対策

[1] 炎天下作業では、休憩時間、回数を多くし、連続作業時間及び、直射日光にさらされる時間を短縮すること。
[2] 管理監督者による作業者の個別的かつ継続的な健康状態の把握を行い、異常者の早期発見に努めること。
[3] 日陰場所、水分、塩分を十分に確保しておくこと。
[4] 暑さに応じた作業衣等を選び、体温の上昇をおさえること。
[5] 熱中症についての正確な知識及び救急対策について教育を行うこと。
 さらに、熱中症の発生するおそれのある作業においては、その初期症状に注意することがきわめて重要である。
 具体的に述べると、
 高温条件下の作業に従事していて、盛んに発汗していたのが、急に汗の量が減った場合、熱中症の危険がせまっていることになる。また、体温の上昇や脈拍の増加も有効な所見となる。

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