単管から墜落し、死亡

発生状況

本災害は砂防工事現場において、砂防えん堤の外側に設置した張出し足場の架替え作業中、足掛かりとしていた単管から作業者が墜落して死亡したものである。
 災害の発生した工事は川に堤高13mの砂防ダムを建設するものであり、型枠の組立てとコンクリートの打設を順次繰り返しながら90cmずつえん堤を築くものであった。
 えん堤には型枠の組立て作業を行うための張出し足場が設置されており、えん堤が高くなるたびに足場を架け替えていた。この張出し足場は、型枠上に水平に取り付けた単管に手摺りを取り付けるための建地のついたブラケットを、1.5mごとに設置し、足場板を架け渡し、手摺りを取り付けたものである。
 足場の架替えはブラケットを設置するための単管を新たに取り付けた後、手摺りと足場板をすべて取り外し、単管を足掛かりとして、ブラケットを新たに取り付けた単管に設置し直す方法により行っていた。
 災害発生当日、被災者は作業打合せを行ったあと、他の作業者と2名で足場の架替え作業を始めた。当日の作業は、まず単管を取り付けた後、被災者がブラケットを設置し、もう一人が足場板を架け渡して、2段の手摺りをクランプで固定するものであった。被災者が単管を足掛かりとしてブラケットを上方の単管に設置していたとき、足を踏み外し、約6m下の地面に墜落し死亡したものである。なお、災害が発生したとき、現場内には親綱は設置されておらず、被災者は安全帯を腰に巻いていたが使用していなかった。

原因

[1] 高さ2m以上の高所作業で、墜落の恐れがあったのにもかかわらず、安全帯の使用が不完全であったこと。
[2] 安全帯の使用に必要な安全帯取付け設備を設置していなかったこと。

対策

[1] 本災害事例の作業においては、ブラケットをあらかじめ相当数用意し、新たな単管を取り付けた際にブラケットも設置しておくことにより作業床が設けられていない状態での作業を減らすことが可能であり、事前に作業方法、作業手順を十分に検討すること。
[2] 墜落災害のおそれのある高所作業で、足場の設置等作業床を設けることが困難な場合において作業者に安全帯を使用させるときは、有効な安全帯取付け設備を設置し、確実に安全帯を使用させて作業を行わせること。

ビル建築工事現場で型枠が倒壊、3名が墜落

発生状況

本災害は、鉄骨・鉄筋コンクリート造ビル建築工事において、梁受けビーム式型枠支保工を組み立てた後、張り筋、スラブ配筋に使用する鉄筋を図に示したように型枠上に搬入し、その後、圧接溶接抜取り調査のため元請企業の作業者等3名が検査のため、型枠上に上がり検査を実施したが、検査の後片付け中に型枠が倒壊したため、3名が墜落負傷したものである。
 本工事は民間発注の工事であり、倒壊した型枠支保工は災害発生の4日ぐらい前に他の下請業者によって組み立てられており、その際の型枠支保工の組み立て等作業主任者等の資格については問題ない。
 型枠支保工の構成は図に示したように、ビームは約1.1m間隔に設置し、梁受けビーム式の型枠支保工で梁の間隔は3.6m(サイドビームを両端に19cm出した状態)、梁下の支保工部(パイプサポート部)はダブルのサポートで、その高さは3.9mであり2mの高さに水平つなぎを取っている。なお、倒壊した「梁」はリース品でメインビーム、サイドビーム、セット楔によって構成されている。また、梁型枠側板部は高さ80cm、厚さ12mmの合板に45~50cm間隔に縦桟木(幅4cm、厚さ4cm)を側板部内側に入れて補強の措置がとられていたが、側板の上部と中間部のセパレータおよび横繋ぎは梁鉄筋が配筋されていたにもかかわらず取り付けられていなかった。型枠パネルとして使用していた型枠用合板および桟木については、桟木に節部分が1カ所認められた他は、腐食等の欠陥部分は認められなかった。
 なお、支保工に用いたパイプサポートの強度およびその構造については、型枠支保工用のパイプサポート等の構造規格に合致していた。
 本建設現場における作業の指示については、月に1回「安全衛生協議会」を開催しておりその中で、おおよその工程の流れを説明するとともに、毎日午後3時ごろには1次下請けを集め、「安全工程打合せ」を翌日に行う作業の内容についての指示を含め行っている。1次下請けは打合せ会の後、関係労働者に対して関係事項につき指示を行っているが、本件も含め鉄筋の配置については、今までも特に指示はなされておらず、鉄筋工事を担当する下請け事業者の判断に任されていたものである。

原因

[1] 強度が不十分な梁用型枠を「作業構台」の替わりにし、型枠上に重量物を積載したこと
[2] 梁枠を支えていた型枠の添木が内側に取れていることから、梁の型枠が内側に押され、爪の部分が離脱したと考えられることから、次のことが要因と思われる。
 [イ] 鉄筋の敷き方がスラブのビームに対して垂直でないため、荷重が平均化せず偏荷重になったこと。
[ロ] 縦桟木の真上にビームがなかったと仮定すると、梁枠の高さが85cmと高いため、厚さ12mmの側板では強度が十分でなく、折れ曲がる(折れる)可能性のあること。
[ハ] 梁枠側板の上部と中間部のセパレータおよび横繋ぎが取り付けられていなかったため、側板の折れ曲がる(折れる)原因の一つになったこと。

対策

[1] 基本的には、梁用型枠を作業構台として用いないこと。仕方なく用いる場合には、梁枠の強度等を確認し、その強度の範囲内で作業の進行状況に合わせて計画的に積載すること。
[2] 施工計画に添って作業手順書等を整備し、梁型枠への積載荷重を含め具体的に下請けに指示すること。

住宅建築工事における熱中症

発生状況

本災害は、住宅新築工事において、コンクリート打設作業を行っていた作業者が、熱中症による多臓器不全のため死亡に至ったものである。
 災害発生当日、作業者Aは、午前8時30分頃から、もう1人の作業者Bとともに当該工事現場においてコンクリートの打設を行うため型枠組立て作業を行っていた。そして午後3時頃になって、作業者Cの運転するコンクリートミキサー車が到着し、完成した型枠へのコンクリート打設作業に取りかかった。この時、Bは人力車でコンクリートを運び、そしてそれを型枠内に流し込む作業を行ない、一方Aは、その流し込まれたコンクリートをコテでならす作業を行なった。
 当該作業を始めて30分程度経った頃、Aは型枠上に腰を降ろした。CがAに向かって声をかけると、急にAは型枠横に仰向けになってずるずると倒れてしまった。驚いたCは急いで救急車を呼び、また隣家に住む施主Dも知らせを聞いて駆け付け、日傘で日陰を作ったりAの頭を氷水で冷したりした。そしてAは救急車で病院へ運ばれたが、2週間後死亡した。
 その日は快晴であり非常に暑く、気象台によると午後3時の時点で気温は35.6℃(相対湿度50%、風速4m/s)であった。当該工事現場においては、飲料水は確保できる状態にあったが塩等はなく、またその現場は基礎工事が終わったばかりで屋根等もなく、太陽の日差しを避ける日陰の場所はなかった。なお、その日Aは、ランニングシャツと作業ズボンを着用し、ヘルメットはかぶっていなかった。

原因

[1] 日差しが強くかつ暑い場所における作業にもかかわらず、休憩等ができる日陰の場所が確保されていなかったこと。またヘルメットも着用していなかったこと。
[2] 作業者の健康状態の確認が行われていなかった

対策

[1] 作業場所またはその近くに日陰の場所を確保し、作業者が適宜そこで休憩できるようにすること。また作業者は、日よけの観点からもヘルメットおよび作業着等の服を着用し、適度の水分および塩分を摂取すること。
[2] 作業開始前に作業者の健康状態を確認し、必要に応じて当該作業者の行う作業の変更等をすること。
[3] 作業場が高温または多湿になる場合には、日中の作業量を減らすなど作業計画を工夫すること。

屋外作業中に発生した熱中症

発生状況

株式会社Aは、アンカーに緊張力を与えた場合の法枠に生ずる歪み等を計測調査するための試験施設の工事を請負っていた。
 災害が発生した日は、7月下旬の暑い日であり、被災者甲を含む作業者は、その日、現場で打ち合せを行った後、午前9時ごろから作業を開始した。
 作業場所は、北西向き傾斜34度の斜面であり、その傾面に設置された金網型枠にコンクリートを吹き付けた箇所をコテを使用して、表面をならして仕上げる作業であった。
 作業者甲と乙は、南側から作業を開始し、午後4時頃にコンクリートの吹き付け作業が終了した箇所のコテならし作業を行っていたが、作業者甲が、突然座りこんで、「気分が悪くなった」という異常を訴えた。そこで作業者乙は、顔を洗いに行った時に使った濡れタオルを持っていたので、それを作業者甲のヘルメットをとってから、頭にあて冷やしてやった。
 しばらくして、作業者甲の異常を知った職長が来た時に、「目がまわり、頭がクラクラする」と訴えており、歩ける様子ではなかったので、背負って約6mの斜面を降りた。日陰になっている場所で休ませ、飲料水を飲ませたが、一口二口飲んだだけであった。この時作業者甲の顔色は青白く、汗はかいていなかった。そのうち目をつむったまま、うわごとを言いはじめたので救急車を呼び、到着するまでの間、タオルで腕と頭を冷やしていた。
 救急車は、まもなく到着し、作業者甲は近くの病院へ収容されたが、死亡した。

原因

[1] 災害が発生した日は夏の快晴であり、作業が行われた場所は斜面で、作業時間中はずっと直射日光が当たり、日陰になる場所は全くなかったこと
[2] 被災者が作業を行っていた斜面のすぐ下の変電設備の日陰にあった寒暖計は最高40℃近くまで上っており、作業が行われていた間、風はほとんど吹いていなかったこと。

対策

[1] 炎天下作業では、休憩時間、回数を多くし、連続作業時間及び、直射日光にさらされる時間を短縮すること。
[2] 管理監督者による作業者の個別的かつ継続的な健康状態の把握を行い、異常者の早期発見に努めること。
[3] 日陰場所、水分、塩分を十分に確保しておくこと。
[4] 暑さに応じた作業衣等を選び、体温の上昇をおさえること。
[5] 熱中症についての正確な知識及び救急対策について教育を行うこと。
 さらに、熱中症の発生するおそれのある作業においては、その初期症状に注意することがきわめて重要である。
 具体的に述べると、
 高温条件下の作業に従事していて、盛んに発汗していたのが、急に汗の量が減った場合、熱中症の危険がせまっていることになる。また、体温の上昇や脈拍の増加も有効な所見となる。