高所作業車を運転中、工事中の建物の壁と作業車の間に挟まれる

発生状況

 この災害は、6階建の工事現場の地下室において、コンクリート壁の仕上げのため、高所作業車に乗り移動中の被災者が、扉取付部の下がり壁と高所作業車の手すりとの間に挟まれたものである。
 当日の作業は、コンクリート打設後の壁面に残った型枠材接続用金具の跡をモルタルで埋めて仕上げる「Pコン埋め」と呼ばれる作業であった。
 作業は、職長と被災者及び同僚の3名の合計5名で行われ、職長と被災者はそれぞれが単独で高所作業車を運転して高所作業車上で作業を行い、他の2名は一組となって高所作業車上の作業及び高所作業車の下での作業、他の1名は単独で足場上で作業を行っていた。
 当日は、午前8時30分頃から地下での作業を開始したが、職長は職長会に出席するため途中で作業場所を離れ、他の4名は昼食時間をはさんで午後1時30分頃から午前と同じ分担で作業を開始していた。
 職長は、午後2時頃に作業場所に戻ったが、このとき、被災者と高所作業車1台が作業場所にいないことに気がついた。
 午後2時45分頃、被災者が、地下1階の下がり壁と高所作業車の手すりとの間にはさまれているのを他の会社の作業者が発見した。
 被災者は、直ちに近くの病院に運ばれたが、同日の午後3時30分に死亡した。

原因

 この災害の原因としては次のことが考えられる。
1 被災者は、高所作業車(作業床高さが10m未満)の運転について特別教育を受けていないため、高所作業車の運転に対する知識、技能が十分でなかったこと
2 高所作業車を用いて行う作業に関する作業計画が定められていなかったこと
 また、高所作業車を用いて行う作業の指揮者も定められていなかったこと
3 通り抜けようとした扉取付用開口部の寸法に対して、使用していた高所作業車の余裕がなかったこと

対策

 この災害は、6階建の工事現場の地下室において、コンクリート壁の仕上げのため、高所作業車に乗り移動中、扉取付部の下がり壁と高所作業車の手すりとの間に挟まれたものであるが、同種災害を防止するためには次のような対策の徹底が必要である。
1 高所作業車の運転の業務には、技能講習または特別教育を修了した者の中から、事業者が指名した者を就かせること。
 また、指名された者以外の者が運転することのないよう、「キー」の保管を確実に行うこと。
2 高所作業車を用いて作業を行うときは、あらかじめ、作業場所に適応する作業計画を定めること。
3 作業開始前に作業の場所、手順、分担、安全上配慮すべき事項等について十分な説明、打合せを行うこと。
 また、指揮者を定めて作業を行うこと。4運転者について、技能向上のための教育を実施すること。

ビル工事現場においてコンクリート打設作業中、型枠支保工が倒壊

発生状況

 この災害は、地上5階建て、鉄筋コンクリート造建物の建設工事において5階のB工区で、コンクリート打設中に発生したものである。
 当日は、5階B工区のコンクリート打設作業を計画していた。コンクリート打設作業は午前8時30分から開始され、コンクリート圧送車を2台使用し、2ヶ所に分けて実施されていた。
 午前中、B工区の約1/4のコンクリート打設作業を行い、計画通りに終了した。昼の休憩後、12時30分頃から残りのコンクリート打設作業を開始した。災害は、4本の柱と大梁に囲まれたスパンの内(B工区中の一部)で発生したものでその部分は、小梁を境にして階高が異なっていた。また小梁の片側は、午前中に施工した部分と同様の階高であったが、小梁の反対側は、下階(4階部分)が車路スロープとなっており、階高が他の部分よりも高くなっていた。
 午後1時頃、小梁を境に階高が低い側のコンクリート打設を行った後、階高が高い残り部分のコンクリートを打設していたところ、突然小梁の箇所が陥没し、打設部分のスラブが抜け落ちた。
 その結果、当該部位のスラブ上で打設作業に従事していた作業員6名全員が、階下の4階及び車路スロープ部まで型枠部材と共に墜落し、被災した。

原因

 この災害の直接的な原因は、型枠支保工として用いたパイプサポートの座屈によるものと考えられる。
 労働安全衛生規則第242条には、「パイプサポートを支柱として用いるものにあっては高さが3.5mを超えるときには、高さ2m以内毎に水平つなぎを二方向に設け、かつ、水平つなぎの変位を防止すること。」と規定されている。
 この災害においても、支保工の横変位を防止するための水平材は、上記の様に設けられていた。しかしながら、小梁と平行な方向の水平材は、壁まで達しており、その方向については拘束されていたと考えられるが、小梁に直交する方向の水平材は、壁まで達しておらず、支保工の横変位防止に寄与できていない状態であったと考えられる。さらに、この水平材は、全ての支保工に取り付けられるべきであったにもかかわらず、支保工の数本毎に配置されていた
 そのために支保工が、座屈を起こし、その支保工で支えられていた小梁が、落下したものと考えられる。

対策

 建設現場における作業効率促進のため、施工方法の標準化は、各施工業者毎に作製されており、施工性及び安全性の向上について、成果が上げられている。今回の災害は、この様な、標準化を過信した結果起きた災害であると言える。
 同種災害の再発防止のためには、次のような問題を繰り返さないことが重要である。
1 施工計画の整備
 この災害が、発生した部分は、標準組立図では対応できない部分であったにもかかわらず、標準組立図で対応してしまい、安全性の確認を怠った。
2 施工の実施
 支保工は、45cm間隔で組み立てられるべきところ、90cm間隔で組み立てられていた。また、支保工の横変位を防止するための水平材は、直角2方向に堅固な壁に達するように、に設けらる必要があるが1方向の水平材は、壁まで達しておらず、支保工の横変位防止に寄与できていない状態であった。さらに、水平材の数もサポート数本ごとにしか設置されていなかった。この様に、組立図に合致した施工が、正確に行われていなかった。
3 施工管理体制の不備
 前記したように、支保工の施工に不備があったにもかかわらず、形式的に点検されているだけで、支保工の間隔、水平つなぎの不備について、確認していなかった。

移動吊支保工の組み立て段取り作業中、型枠トラス梁を吊っていたワイヤーが切断

発生状況

この災害は、自動車PC橋架設の上部工事中に発生したものである。
 この工事は、移動吊支保工式架設工法(以下「支保工」という)により施工するもので、当日は、支保工を橋脚から橋脚へ前進させ、支持台に固定し、型枠トラス梁2本を一組に組立てる作業を行うことになっていた。
 組み立て方法は、メインガーターからチェーンで片側だけをつり下げている2本一組の型枠トラス梁を、2.8トンのホイストクレーン4台で同時に吊上げていくもので、左右の型枠トラス梁が密着し水平になった後、中央の連結部をピンとボルトで一体化するものである。
 これらの作業を繰り返し、8組目の型枠トラス梁が、ほぼ水平になり、連結部をピン及びボルトの孔が合致する状態になったので、クレーンによる巻き上げを止め、連結部にピンを差し込む段取り作業を始めた。
 そこで被災者が、トラス梁の中央部で段度作業を行っていたところ、載っていたトラス梁を吊っていたワイヤー2本がほぼ同時に切断した。
 そのため、外側の吊りチェーンを支点として型枠トラスが下方に落ちて、載っていた被災者は約16メートル墜落した。

原因

この災害は、自動車PC橋架設の上部工事中に、被災者が段取り作業のために載っていた型枠トラスの吊りワイヤーが切断したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1 2本のワイヤーのうち、いずれが先に切断したのかは特定できないが、切断部の状況、ワイヤーの損傷状況、6ヶ所の支持点のうち最も荷重のかかるのが切断したワイヤーであること等から推定するとこのワイヤーが先に切断したものと考えられる。
2 切断した12ミリワイヤーにかかる荷重は、吊り角度を考慮すると、最大時で2.73トンとなる。
 ワイヤーが新品の場合には、切断荷重が7.24トンであるが、繰り返し使用されているため、2.73トン前後の荷重に耐えられなかったのに、被災者が型枠トラスに乗り込んだ衝撃荷重が加わったものと推定される。
3 事故後の調査では、切断したワイヤーの点検が十分に行われていなかった

対策

1 新規の移動吊支保工工法で施工する場合は、計画段階で危険性の評価及び安全対策の検討を十分行うこと。
2 玉掛け用ワイヤロープの取り替え時期等が遅わないように、明確な廃棄基準・点検時期及び点検者を定め、点検の実施結果を記録する等点検体制の徹底を図ること。
3 玉掛用具の点検者等に対して、その日の作業開始する前の点検は勿論のこと、作業の実態に応じた点検回数、点検事項について、適切に行うことが出来るよう教育を行うこと。
4 玉掛用具の使用にあたっては、極端な曲げや鋭角なものと直接接触する吊り方等は、ワイヤロープの強度を低下させるだけでなく、その使用頻度によっては、切断することもありうるので行わせないこと。
5 連結作業時における安全な作業手順等を定め、責任者はそれを関係者に周知し、それを遵守させること。

コンクリート打設中、型枠が崩壊

発生状況

本災害は、火力発電所建設工事のうちの防波堤建設工事において発生した。
 本工事は、海底から海面上約1.7mの高さまで設置されたケーソン上に、さらに高さ2.5mの上部コンクリートを打設するものである。コンクリート打設作業は、ケーソン1函分の面積を6分割して1回の打設を行っていたが、災害が発生したケーソン北西部については、後日ケーソン上面に降りるための階段を設置するため、一部を空間として残す不規則な形状となっていた。このため、北西部のうちの南側の幅2.8m×長さ13.0m×高さ2.5mを災害発生日の前前日に打設し、災害発生当日は、幅2.0m×長さ8.6m×高さ2.5mを打設する予定であった。
 鋼製型枠の固定は、既設コンクリートに埋め込んであるセパレータに、当日施工する箇所の型枠を固定するセパレータを連結することにより行う予定であったが、上述のとおり不規則な形状であったため、既設側のセパレータの位置と型枠側のセパレータの穴の位置が合わなかった。このため、既設コンクリートにアンカーボルトを打ち込み、これにセパレータを取り付ける方法に施工方法を変更した。
 型枠を組み立て、コンクリートを打設していたところ、高さ約1.5mまで打設したとき、突然型枠2枚が崩壊して海中に転落し、型枠に設置されていた張り出し足場上でコンクリートの締め固め作業を行っていた作業者2名が型枠及び張り出し足場とともに海中に墜落、1名が海底で型枠の下敷きとなり死亡したものである。

原因

(1) アンカーボルトの引き抜き耐力、既設コンクリートの硬化の程度等について強度上の検討を十分に行わずに、型枠の支持方法としてアンカーボルトを使用したこと。
(2) 型枠の組立方法について、事前に十分な検討がなされておらず、具体的な施工計画が作成されていなかったこと。
(3) 施工上問題が生じた場合の対応方法があらかじめ明確に定められておらず、組織的な協議、検討を行わずに施工方法を変更したこと。

対策

(1) 型枠の構造について、生コンの側圧による崩壊を防止するため、十分な強度を持つ丈夫な構造のものとすること。
(2) 型枠組立に係る工法、作業手順、強度等について、事前に十分な検討を行った上で具体的な施工計画を作成し、これに従って作業を行うこと。
(3) 施工方法を変更する場合の手続きをあらかじめ明確にしておくこと。
(4) コンクリート打設作業について、打設速度等の打設方法について遵守すべき事項を関係作業者に周知しておくこと。