手すりがはずれ足場上から墜落

発生状況

本件災害は、鉄筋コンクリート造2階建の校舎建築工事において、足場上を通行中の作業者が、約7m下の地面に墜落したものである。
 工事は、災害発生当日までに、屋根周り部分を除いてコンクリート打設がほぼ終了し、災害発生当日は屋根軒先回りの型枠組作業を下請で現場に入っていた型枠大工2名で行うことになっていた。型枠の材料となるベニヤ板は既にコンクリート打設が終了した屋上部分に移動式クレーンでつり上げられ、まとめて借り置きされていた。
 当該現場に設置されていた足場は、被災者が所属する事業場とは別の業者により組み立てられた鋼管枠組み足場であったが、建築物躯体の角の部分では、本来の鋼製床つき布枠及び手すりパイプの長さでは余ってしまうため、木製の足場板を掛け渡し、また、手すりについても本来であれば建枠の支柱に差し込んで取り付けるべきところを番線で結んで取り付けていた。
 被災者はこの日の作業を始めるため、型枠材料を作業場所のほぼ反対側にある仮置場所に取りに行こうとして枠組み外部足場の最上段を歩いていたが、建物の角の部分の足場で、鋼製床付布枠の上に掛け渡して使われていた木製足場板の段差につまずき、手すりに体を預けるように倒れかかった。
 このとき、足場の建枠の支柱に番線で取り付けられていた手すりがはずれ、被災者は足場から墜落した。

原因

1 外部足場について、本来の枠組み足場の組立方と異なる方法で組み立てられた部分があったこと。
2 強度等の安全性を十分に考慮することなく安易に組立方を変更したこと。
3 足場設置業者及び元方事業者が、足場設置後にその安全性について点検を行っていなかったこと。

対策

1 足場の施工計画を十分に検討し、必要なサイズの材料を揃えた上で足場の組立に着手すること。
2 やむを得ず本来の組立方と異なる組立方をする場合には、強度、安全通路の確保等に十分考慮した組立方とすること。
3 足場設置業者及び元方事業者は足場設置後にその安全性について点検を行うこと。特に元方事業者にあっては、足場の設置後撤去されるまでの間、定期的に点検を行うこと。

ひも掛けしていない型枠の荷崩れによりトラックの荷台から転落

発生状況

本災害は、被災者等が、幼稚園新築工事現場において、解体した門型足場枠38個(約550kg)を2トントラックの荷台の前方に立てかけるようにして積み、被災者が荷台に乗って足場枠を後ろから支え、トラックを走行させたところ、荷崩れし、被災者が道路に転落し被災したものである。
 災害発生当日、被災者らにより、外部足場(張り出し足場、照明用足場)の撤去、片付け、コンクリートはつり等の作業が行われた。照明用足場は、夜間作業用に躯体を3箇所から照らす照明の設置用のもので、躯体回りの作業用足場とは別に現場敷地内の3ヵ所に枠組足場を5層から7層組んだものであった。3ヵ所の照明用足場は当日午前中より解体され、解体された足場の部材はそれぞれの足場があった付近に置かれた。解体された照明用足場の部材は、資材置き場に持っていくことになっており、この運搬作業中に本件災害が発生したものである。
 解体された照明用足場の部材の運搬作業は、被災者ら3名によって行われた。解体された照明用足場の部材は現場内の3ヵ所に置かれていたが、まず、当該現場の広場の奥に置かれていた部材を運ぶため、作業者Bが現場内に停めてあった空の2トンダンプトラックを広場の奥まで運転して移動させ、他の作業者Cと被災者Aの3名で部材(門型足場鋼管枠(約20から30個)とその筋交い)を当該トラックに積み込んだ。その際、門型枠を荷台の中心に運転席側に立て掛けて積み、筋交いは門型枠の両側に寝かせて積んだ。次に、当該広場の入り口付近に置かれていた部材を積み込むため、作業員Bが当該トラックを広場の入り口まで約20メートル運転して移動させた。移動の際は被災者Aが当該トラックの荷台に乗り、立て掛けて積んだ門型枠を後方より支えながら移動した。このとき、門型枠はロープ等で固定されておらず、荷台後部のあおりは開いた状態であった。荷台両側のあおりは閉じてあった。また、当該広場は平担であった。入り口付近に置かれていた部材を同じ3名で前記と同様に当該トラックに積み込んだ。この時点で積み込んだ部材の合計は、門型枠38個、筋交い36組と1本となった。
 次に、当該現場内の北西側付近に置かれていた部材を積み込むため、Bは当該トラックを移動しようとしたが、現場の広場から北西側までの間には仮設物があり、現場内を通って北西側までトラックを移動させることはできない状態であったため、当該現場の北側の道路を回って北西側付近まで行くこととした。このため、現場内広場の東側から現場に面した道路に出て左折し、T字路にさしかかり道路標示の一時停止線で一旦停止した。道路に出てから一時停止線の約10m付近までの道路は平担であるが、一時停止線付近は約8.5%の上り勾配である。この移動の際も前記と同様の状態で移動していた。Bが当該トラックを一旦停止後T字路を左折しようと再発進した直後、荷台の方から「ガシャッ」というような金属音がしたのですぐトラックを止めトラックの後方に行ってみると、Aはトラックのすぐ後方の道路上に仰向けに倒れており意識のない様子であった。積んでいた門型枠は後方に倒れ一部は荷台から落ちかかった状態になっており、荷台の後部のあおりは開いた状態のままであった。荷掛け用のロープは当該トラックの助手席に置いたままであった。Aは、約2週間後に死亡した。
 なお、災害発生当日の朝の打ち合わせでは、現場代理人等から運搬方法について特段の指示はなかったが、当該運搬作業については現場代理人も承知していたものである。

原因

1 トラックの荷台に作業者を乗せて走行させたこと。
2 ロープ掛け等、荷の移動防止措置を講じていなかったこと。
3 荷台の後部あおりを開いたままトラックを走行させたこと。
4 安全管理体制が不明確で、作業者まかせとなっており、現場代理人等による安全面に配慮した作業指示がなされていないこと。

対策

1 トラックの荷台に作業者を乗せて走行させないこと。
2 トラックに荷を積む際に、荷の重量、バランスを考慮した積載方法をとり、かつ荷の移動防止措置を確実に行うこと。
3 トラックを走行させる際は必ずあおりを閉じること。
4 明確な安全管理体制を作り、各安全管理担当者は安全面に十分配慮した作業指示を確実に配下の者に伝えること。
5 前記1から3について作業標準等を作成の上、作業者に安全教育を行うこと。

コンクリートの打設中、型枠支保工が倒壊

発生状況

本災害は大手建設会社が一括して施工していた8棟の鉄筋コンクリート造の共同住宅等の新築工事のうちの1棟の工事で発生した。
 災害発生当日の作業は以下のとおりであった。
 午前からコンクリートの打設作業を始め、圧送車2台を用いて東西両端から2スパンずつ合計4スパンの柱・壁・梁部分のコンクリートの打設を行ったあと、その部分の屋根の打設を行い、作業を一旦終了した。午後から、残りの部分の柱・壁・梁部分の打設をまず行い、次に屋根部分の打設を開始した。東側から3スパン目の南側部分の屋根の打設をほぼ終了し、同部分のコンクリート均し作業を行いながら、コンクリートホースを北側の屋根部分に移動させていたところ、南側部分の型枠支保工が倒壊したものである。
 なお、型枠及び型枠支保工の施工については、元方事業者が組立て図等を作成し、組立ては型枠支保工の組立て等作業主任者の選任されている専門工事業者が担当していた。
 また、型枠支保工の組立状況についてその未倒壊部分から次のような問題点がみられた。
[1] 支柱の上端にキャンバーを置かず、また、支柱の上端の移動を防止する措置が講じられていなかったこと。
[2] 支柱の水平つなぎについて、その端部を壁に当てるか又は筋かいを設けることによる水平つなぎの変位を防止するための措置が講じられていなかったこと。また、支柱の配置が整然としておらず、水平つなぎがすべての支柱に取り付けられていなかったこと。

原因

1 支柱と水平つなぎの接合に、直交クランプでなく、緊結力の弱い根がらみクランプが使用されていたこと。
2 型枠支保工が、組立図どおりに組み立てられていなかったこと。
3 支柱の上端部分の移動を防ぐ措置及び水平つなぎの変位防止の措置が不十分であり、支柱が作用荷重に耐えることができずに座屈したこと。

対策

1 型枠支保工の組立図を作成するときは、主要な部材の設置間隔、部材に継ぎ手や接合部を設ける場合の位置や具体的な接合方法(ボルトや釘の本数や間隔)を指定すること。
2 型枠支保工は、組立図どおりに組み立てること。
3 支柱の水平つなぎの変位を防止するための措置を確実に行うこと。
4 元方事業者はコンクリートの打設を行う前に型枠支保工が組立図どおりに組み立てられているか確認すること。
5 作業者に対する安全衛生教育を徹底すること。