倉庫新築現場における練炭使用による一酸化炭素中毒

発生状況

本災害は、コンクリート打設後練炭コンロで養生した防火水槽の内部に入り型枠支保工の解体作業を開始したところ被災したものである。
 災害の発生場所は倉庫の地下にあるコンクリート製防火水槽部分である。災害当日コンクリート打設後スラブ全体にかけられていたシートを取り外し練炭を取り出した。その後倉庫の基礎立ち上がり部分のコンクリートを打設後、防火水槽内部の型枠支保工の解体作業を行った。作業は、2名が防火水槽の内部に入りパイプサポートを取り外し、防火水槽の外で他の2名がそれを受け取るというものであった。作業開始20分後に、内部に入った1名が膝を落としてうずくまり、防火水槽の外で作業していた作業監視員を含む3人で救出したが、内部に入っていたもう1名も体の不調を訴えだした。救出後2名ともに意識がなく、病院へ搬送され一酸化炭素中毒と診断された。両名とも意識は回復し、翌日退院した。

原因

[1] 一酸化炭素による健康障害が生ずるおそれのある自然換気の不十分な場所である防火水槽内において、作業開始前に酸素濃度や一酸化炭素濃度の測定を行わなかったこと。
[2] 呼吸用保護具を着用していなかったこと。
[3] 一酸化炭素の危険有害性の認識が低かったこと。

対策

[1] 練炭等を使用する場合において、充分換気してから作業者を立ち入らせること。
[2] 酸素濃度、一酸化炭素濃度などの測定を行い、安全を確認してから立ち入ること。
[3] 一酸化炭素中毒が発生するおそれのある場所に立ち入る際は、適切な呼吸用保護具を着用すること。
[4] 一酸化炭素の危険有害性の認識を高めるため、十分な安全衛生教育を行うこと。

建築工事現場におけるピット内での酸素欠乏症

発生状況

本災害は、建築工場現場の地下ピット内の型枠解体作業を行うため、溜まっていた水をポンプで汲み出しながら作業の準備をしていたところ、ピット内の酸欠空気により被災したものであり、これを救助しようとした事業主も被災したものである。
 災害発生当日、被災者Aと事業主Bはピットの型枠解体作業にとりかかるためピットの蓋を開けたところ、ピット内に水が溜まっていたので揚水ポンプにより水を汲み出していた。
 10分程経過した後、ピット内部に溜まっていた水が減ってきたため、Aは型枠解体作業を開始しようとピットの口にはしごをかけてピット内に降りた。このとき、Bは地上にいて、作業に必要な工具などの準備をしていた。
 Bがピットの中を見ると、Aはピットの底の溝になっている部分に腰を掛けた状態で動けなくなっていた。Bは地上からAにピットから上がるように指示したが、自力で上がることができそうもなかったため、救出しようとピット内に降りたところ、同様に被災した。
 災害の発生したピットは、コンクリート打設養生のため、梅雨の季節に約2カ月間放置され、雨水が滞留しており、好気性菌による酸素欠乏状態であったと推測される。

原因

本災害は、作業を行う者に当該ピット内部分が酸素欠乏危険場所であるという認識がなかったことが、災害の発生を招いたと考えられる。そのため、作業を開始する際に、作業の危険性について関係者間での十分な連絡調整を図ることが重要である。関係者に酸素欠乏の発生の原因や発生しやすい場所及びその危険性等の知識があれば、酸素欠乏危険作業主任者の選任や酸素濃度の測定の実施などの対策が講じられ、災害の防止ができたものと考えられる。

対策

[1] 作業を開始する前に、当該場所の空気中の酸素濃度を測定すること。
[2] 当該場所の酸素濃度を18%以上に保つように換気を行うこと。
[3] 酸素欠乏危険作業主任者を選任し、所定の職務を行わせること。
[4] 作業従事者に対して、酸素欠乏症にかかる特別教育を行うこと。
[5] 緊急時の対応として、呼吸用保護具を使用すること。

防火水槽新設工事において練炭を用いたコンクリート養生箇所に立ち入り、一酸化炭素中毒となる

発生状況

本災害は、防火水槽新設工事において、練炭を用いたコンクリート養生を行っていたが、それとは知らずにコンクリート型枠解体作業を行おうと防火水槽内に入り、練炭の不完全燃焼によって発生した一酸化炭素を吸入し、被災したものである。
 この防火水槽新設工事は、床堀り、配筋、型枠組立、コンクリート打設、型枠解体等の工程で行われた。この工事が行われたのは寒冷地であったため、コンクリートが固まるまで十分な保温養生が必要であった。このため、コンクリート打設後、開口部をビニールで閉じ練炭を用いて保温養生を行い、養生開始日から1週間目に型枠解体作業にとりかかった。
 この工事を行っていた事業場は従業員が少なかったため、型枠解体作業は、急遽この事業場とは別の事業場で請け負うことになった。
 型枠解体作業を請け負った事業場の作業者は、作業開始に当たって、元請けの現場監督から練炭養生をしていることは告げられていなかった。
 まず入口を覆っていたビニールを外し、1名の作業者が作業用はしごを伝って水槽内に入ったところ直ちにうずくまってしまった。
 他2名の作業者が救出のため水槽内に入ったところ同様に次々倒れた。その後この3名は病院に運ばれ、一酸化炭素中毒と診断された。
 なお、呼吸用保護具および送風機等の換気装置は、元請け、下請けとも所持しておらず、水槽内で作業を行うに際し、酸素濃度および一酸化炭素濃度の測定を行っていなかった。

原因

[1] 水槽内で、練炭が不完全燃焼したこと。
[2] 水槽内で練炭を使用していることを事前に作業者に周知していなかったこと。
[3] 水槽内の一酸化炭素濃度について測定する等、安全確認をしなかったこと。
[4] 水槽内の換気を十分行うことなく、いきなり作業者を立ち入らせたこと。
[5] 被災者救出の際、適切な呼吸用保護具を使用しなかったこと。

対策

[1] 練炭等燃焼ガスの中に一酸化炭素が含まれているものに関しては、一酸化炭素中毒を含む酸素欠乏による危険性について、関係作業者に十分な安全衛生教育を行うこと。
[2] 練炭を使用し、燃焼させた場所には、一酸化炭素中毒の危険性がある場所であることを表示すること。
[3] 水槽内に立ち入る際は、事前に十分な換気を行い、かつ、水槽内の一酸化炭素等の濃度測定を行うことにより、一酸化炭素中毒の危険がないことを確認すること。また、必要に応じて適切な呼吸用保護具を使用すること。