配管ピット内における酸素欠乏症

発生状況

本災害は、工場新築工事において、既にコンクリートを打設し終わったトイレ用配管ピットの型枠解体作業において、作業者が型枠解体のためピット内に立ち入ったところ、酸素欠乏症により倒れたものである。
 災害発生当日、午前8時からの全体朝礼の後、職長Aが、当日の作業として1階女子トイレの配管ピットの型枠解体作業を行う旨を説明した。
 引き続いて、作業開始。まず、ピット内の様子を確認するため作業者Bがピット内に入ったが、変わった臭気を感じたのですぐ息を止めて外へ出た。
 そこで、Bは元請の作業者Cを呼び、送風機を持って来るよう依頼したが、それによる換気を待たず再びピット内に入った。そして、やはり臭気を感じ、急いで息を止めて、かろうじて外へ出た。その後、しばらく休息していたものの、次第に頭痛、吐き気がひどくなり、救急車で病院に運ばれ診断を受けたところ、酸素欠乏症と診断され、30日程度の休業を要するに至った。
 災害発生後、現場を調査したところ、ピット内は湿度が非常に高く、カビ臭があり、床、壁等には水滴が付着していた。また、型枠はかなりの湿気を含んでおり、随所で腐食し、菌類が発生していた。硫化水素濃度は、酸欠則に規定する10ppmを超えていなかったが、酸素濃度は16%程度であった。
 これらのことから、ピット内に酸素欠乏空気が発生した原因は、コンクリートの打設以来ほとんど密閉された状態が4カ月ほど続いており、また季節が夏ということで、連日の暑さにより、しみ込んだ雨水などに含まれる有機物が腐敗したり、菌類が発生したりすることにより、酸素が消費されたためと考えられる。
 なお、本災害が発生したピット内部は、労働安全衛生法施行令別表第6の第3号「ケーブル、ガス管その他地下に敷設される物を収容するための暗きょ、マンホール又はピットの内部」に該当し、事業者が同場所における作業を行うにあたっては、酸欠災害防止のため、酸素欠乏症等防止規則に規定する所要の措置を講じなければならない。

原因

[1] 雨水等がピット内にしみ込み、内部で微生物、菌類などが繁殖し、酸素が欠乏したこと。
[2] 事業者に、災害が発生したピット内部が酸素欠乏危険場所であるとの認識がなかったこと。
[3] 作業を開始する前に、ピット内部の酸素濃度の測定を行わず、酸素濃度が18%以下になっていることを確認しなかったこと。
[4] ピット内部を換気せず、作業者に空気呼吸器等を使用させなかったこと。

対策

[1] 酸素欠乏危険作業を行う場合には、測定器具を備え付け、作業を開始する前にピット内の酸素濃度および硫化水素濃度を測定すること。
[2] 上記の測定結果をもとに、作業場の空気中の酸素濃度を常時18%以上に、かつ硫化水素濃度を10ppm以下に保つように必要な換気を行うこと。
[3] 作業の性質上換気することが著しく困難な場合には、空気呼吸器等を備え付け、これを作業者に使用させること。
[4] 第2種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その指揮のもとに作業者に作業を行わせること。
[5] 酸欠作業に就かせる作業者に対し、酸素欠乏の発生の原因、酸素欠乏症を防止するための対策等について、特別の教育を行うこと。

トラッククレーンが横転し、挟まれる

発生状況

事故が発生した当日の作業は、地上から地下駐車場に通じる自転車・歩行者用通路のコンクリート打設を行うための型枠建て込みの作業で、作業者6名のうち3名が共同して国道側の通路壁型枠を起こす作業を行い、他の3名が壁型枠に補強用の角鋼管を取り付ける作業を行っていた。
 午後に入り、壁型枠を起こす作業を行っていた被災者(無資格者)は、地上部分に上がり、型枠材料を現場に搬入するため止めてあったトラッククレーンを、右側のアウトリガーのみを最大張出の状態で操作した。
 束ねた角鋼管(長さ:3.5mの角鋼管×50本、重量0.72トン)を地下通路部分につり降ろそうと、被災者自身が玉掛し、ジブを車両後方から右側方に旋回したところ、過荷重のためトラッククレーンが右に大きく傾いた。
 車両の右側でトラッククレーンの操作を行っていた被災者は、トラッククレーンのアウトリガーと鋼管で組み立てたフェンスに挟まれ被災したものである。なお、災害発生時のトラッククレーンの状態は、作業半径約7.6m、ジブの長さ約8.1m、ジブの傾斜角約20度であり、定格荷重は約0.3トンとなっていた。

原因

(1) つり荷の重量がトラッククレーンの能力に比較して大幅に上回っていたこと。
(2) 作業方法をあらかじめ決定していなかったこと。
(3) 無資格でトラッククレーンの操作を行っていたこと。

対策

(1) トラッククレーンにその定格荷重を超える荷重をかけて使用しないこと。
(2) トラッククレーンを用いて作業を行う際には、あらかじめ作業の方法を定めること。
(3) トラッククレーンを用いて作業を行うときには、当該トラッククレーンの能力に応じた資格を有する者に作業を行わせること。

玉掛け作業中にドラグ・ショベルが転落し、作業者を直撃

発生状況

本災害は、ホテル新築工事における測量において、測定のためのポイント上に敷いてあった工事用鉄板を移動させるため、ドラグ・ショベルによりつり上げ旋回したところ、ドラグ・ショベルのバランスが崩れ転倒し、玉掛け作業を行っていた作業者を直撃したものである。
 災害が発生した工事は、建物の新築工事に伴う外溝工事であり、事故当日は、フェンスを張るための土台となるコンクリートの型枠作業、コンクリートミキサー車を現場へ導き入れるための整地作業および測量作業であった。
 型枠作業に2名、小型ドラグ・ショベル(バケット容量0.25m3)を使用した整地作業に2名、そして測量作業に2名の計6名が作業を行っていた。
 整地作業および測量作業はそれぞれ別々に移動しながら行われていた。
 建物東側付近の水路について測量しようとしたところ、測量ポイントの一つが現場に入る車両運行のために敷設されていた重量1.4トンの大きい鉄板の下になっていた。
 このため測量用の杭を地面に打ち付けられず困っていたところ、整地作業が一段落し、所定の置き場に戻すために小型のドラグ・ショベルが移動してきた。
 測量を行っていた現場責任者は、ドラグ・ショベルを運転していた者と相談し、鉄板を小型ドラグ・ショベルでつり上げて移動させることになった。
 杭を打つためには敷設してある鉄板の5枚を移動させる必要があり、現場責任者が玉掛けの指示を行い、その指示により1人がドラグ・ショベルを運転し、整地作業の補助を行っていた者がワイヤーロープで玉掛けを行った。もう1人の測量を行っていた者は、少し離れたところで測量の準備をしていた。
 1枚ずつ3枚移動したところで、玉掛けの指示を行っていた現場責任者は、作業を見ていなくても大丈夫だと判断し、測量の準備にとりかかった。
 その直後、4枚目の鉄板をつり上げ旋回させたところ、ドラグ・ショベルはバランスを崩し、80cm下の水路の脇の整地した通路に倒れ込んだ。その時ドラグ・ショベルの倒れ込んだ場所で玉掛けを行っていた者が、ドラグ・ショベルの下敷きになった。

原因

(1) 鉄板を移動させなければならないという当初予定にない作業の必要性が発生したにもかかわらず、その作業の打合せ等を行わず十分な安全確保を行わなかったこと。
(2) ドラグ・ショベルを用途外の荷のつり上げ作業に使用したこと。
(3) 荷の重量に比し、ドラグ・ショベルの能力、安定度が不十分であったこと。
(4) 玉掛けが終了したにもかかわらず、作業範囲外に退避させていなかったこと。

対策

(1) 荷をつり上げて移動させるには移動式クレーン等を使用し、ドラグ・ショベル等の車両系建設機械による用途外使用は行わないこと。
(2) 移動式クレーン等が使用できない等でドラグ・ショベル等の車両系建設機械を使用し荷をつり上げることがやむを得ない場合には、荷の重量、旋回によるモーメントを考慮し、荷をつり上げ旋回させることで転倒することがないよう使用すること。
(3) 打ち合わせ等と異なる事態が発生した場合は、元請等関係者に連絡し、改めて協議し、十分な安全確認をした上で作業を行うこと。
(4) 作業範囲内には作業者を立ち入らせないこと。