
発生状況
本災害は、研磨作業および塗装の作業を行うために作業場内に置かれていた型枠材が強風にあおられて倒れ、塗装作業のため型枠材の側にいた作業者が型枠材と地面の間に挟まれて死亡したものである。
作業内容は、以前に護岸工事の型枠として使用され運び込まれていた型枠材を、次の工事ですぐに使えるように整備補修することであった。具体的には、型枠材のコンクリートと接する面のさびをサンダーによって研磨し、さび止めおよび型枠材とコンクリートとのはく離を促進する塗料をローラーを使用して塗布するものであった。
作業場所は、海岸に近い埋め立て地にある遮へい物のない空き地であり、海からの強風がまともに当たる場所であった。
事故当日、被災者は他の作業者1人(作業者A)と2人で、3個の型枠材の研磨作業を行うことを指示され、朝から研磨作業および塗装作業を共同で行っており、被災者は自分の担当の型枠材の研磨作業を終了した。作業は基本的にそれぞれの型枠材について各人が別々に行っていたが、Aの担当の型枠のさびがひどかったため、被災者はその型枠材の塗装の一部を手伝った。この作業の終了後、被災者は研磨の終わった自分の担当の型枠材に塗装をするため、型枠材に近づいたところ、強風により型枠材が倒れ、地面と型枠の間に挟まれて被災した。
倒れた型枠材は、H型鋼に厚さ約1cmの鉄板を溶接して作られたものであり、コンクリートと接する面と反対側の面にアングルによって型枠取付時の足場を取り付けられるようになっている。大きさは、縦7.8m、横2.2m、厚さ7.5cmで、重量は約3トンである。整備中および整備後、型枠材は長辺を下にして(接地面は幅約7.5cmのH型鋼)自立しており、特に転倒を防止するための措置はなされておらず、重心が高い位置にある極めて不安定な状況であった。研磨作業終了後、保管場所を移動する予定であった。
原因
[1] 自立させると不安定な形状の型枠材を、転倒防止措置を講じることなく自立させたこと。
[2] 風の吹いてくる方向(海側)に型枠材の各面の中で面積が最大である面(コンクリート打設面)を向けていて、風による転倒の恐れが強い状態であったこと。
[3] 型枠材の整備作業に関する安全な作業手順が作成されていなかったこと。
対策
[1] 自立させると不安定な形状の型枠材については、基本的に型枠材を寝かせて作業を行い、作業後の保管についても寝かせて保管することを原則とすること。
[2] 作業上、立てて作業、保管を行う必要のある場合は、型枠材に控えをとって地面に固定するか、他の安定したものに固定する等の転倒防止措置を講ずること。
[3] 型枠材の整備作業においては、作業手順書を作成し、作業者に周知徹底すること。
[4] 作業者に対して安全衛生教育を行い、平素より危険に対する認識と、それに対して対応できる知識を与えること。