後退してきたダンプトラックにひかれて死亡

発生状況

本災害は、既存の高速道から引込線を建設する工事において、付近で清掃作業を行っていた被災者が、後進で走行してきたダンプトラックにひかれ、死亡に至ったものである。
 工事の内容は、高速道の外側の1車線を通行止めにし、新たに作る引込線の場所の整地、既設のヒューム管の撤去、ブロック擁壁の設置および新たなヒューム管の敷設を行うものであった。
 災害発生当日の朝、現場の状況の確認を行ったところ、既設の道路面と新たに設置するブロック擁壁の基礎コンクリートの間が、約4mにわたって約70cmの深さでくぼんでいたため、ダンプトラックで砂利を入れ、作業ヤードを確保することとした。
 朝の打合せの際、ダンプトラックでの作業は、規制が1車線だけでダンプトラックがすれ違えなかったため、ダンプトラック1台で砂利を積み、採石場と工事現場を往復するものと決められた。また、道路公団からの指示により一般車両と反対向きでの走行は禁止されていたため、高速道の車線をおよそ100m程度後退して走行することになった。
 被災者の災害発生当日の作業は、午前中は前日行っていたブロック擁壁の基礎コンクリートの型枠解体と片付けを行い、午後は道路上の掃除を行うこととされていた。
 当日の午後、被災者が規制された高速道上で清掃を始めたとき、ダンプトラックを用いての砂利の搬入が始まった。ダンプトラックは高速道への入り口の広くなったところで方向転換して、後退しながら高速道内に入ってきた。運転手は周囲に多くの機械が動いており、また、砂埃がすごかったのでダンプトラックのバックミラーだけでなく、運転席の窓から顔を出し、後方を確認しながらゆっくりと後退したが、被災者に気が付かなかったため、ダンプトラックの後方で清掃作業をしていた被災者がダンプトラックの左側後輪にひかれた。

原因

(1) ダンプトラックの誘導者が配置されていなかったこと。
(2) 周囲で建設機械が作業をしていたため、騒音により被災者にダンプトラックのバックブザーが聞き取れなかったこと。
(3) 被災者がダンプトラックの運転手の視界の死角に入ってしまったこと。

対策

(1) ダンプトラック等を用いて作業を行う際は、作業者とダンプトラックが接触することを避けるような作業計画をたて、関係する作業者に対して十分に周知すること。
(2) 車両系荷役運搬機械に接触することにより、作業者に危険が生ずる恐れがある場合には、立入り禁止の措置を講ずるか、誘導員を配置すること。
(3) 作業間の連絡調整を十分に行うこと。

仮置きしてあった型枠材が倒れ、挟まれる

発生状況

本災害は、研磨作業および塗装の作業を行うために作業場内に置かれていた型枠材が強風にあおられて倒れ、塗装作業のため型枠材の側にいた作業者が型枠材と地面の間に挟まれて死亡したものである。
 作業内容は、以前に護岸工事の型枠として使用され運び込まれていた型枠材を、次の工事ですぐに使えるように整備補修することであった。具体的には、型枠材のコンクリートと接する面のさびをサンダーによって研磨し、さび止めおよび型枠材とコンクリートとのはく離を促進する塗料をローラーを使用して塗布するものであった。
 作業場所は、海岸に近い埋め立て地にある遮へい物のない空き地であり、海からの強風がまともに当たる場所であった。
 事故当日、被災者は他の作業者1人(作業者A)と2人で、3個の型枠材の研磨作業を行うことを指示され、朝から研磨作業および塗装作業を共同で行っており、被災者は自分の担当の型枠材の研磨作業を終了した。作業は基本的にそれぞれの型枠材について各人が別々に行っていたが、Aの担当の型枠のさびがひどかったため、被災者はその型枠材の塗装の一部を手伝った。この作業の終了後、被災者は研磨の終わった自分の担当の型枠材に塗装をするため、型枠材に近づいたところ、強風により型枠材が倒れ、地面と型枠の間に挟まれて被災した。
 倒れた型枠材は、H型鋼に厚さ約1cmの鉄板を溶接して作られたものであり、コンクリートと接する面と反対側の面にアングルによって型枠取付時の足場を取り付けられるようになっている。大きさは、縦7.8m、横2.2m、厚さ7.5cmで、重量は約3トンである。整備中および整備後、型枠材は長辺を下にして(接地面は幅約7.5cmのH型鋼)自立しており、特に転倒を防止するための措置はなされておらず、重心が高い位置にある極めて不安定な状況であった。研磨作業終了後、保管場所を移動する予定であった。

原因

[1] 自立させると不安定な形状の型枠材を、転倒防止措置を講じることなく自立させたこと。
[2] 風の吹いてくる方向(海側)に型枠材の各面の中で面積が最大である面(コンクリート打設面)を向けていて、風による転倒の恐れが強い状態であったこと
[3] 型枠材の整備作業に関する安全な作業手順が作成されていなかったこと。

対策

[1] 自立させると不安定な形状の型枠材については、基本的に型枠材を寝かせて作業を行い、作業後の保管についても寝かせて保管することを原則とすること。
[2] 作業上、立てて作業、保管を行う必要のある場合は、型枠材に控えをとって地面に固定するか、他の安定したものに固定する等の転倒防止措置を講ずること。
[3] 型枠材の整備作業においては、作業手順書を作成し、作業者に周知徹底すること。
[4] 作業者に対して安全衛生教育を行い、平素より危険に対する認識と、それに対して対応できる知識を与えること。