
発生状況
直径60cmのマンホールが1カ所ついた、内容積約6.8m3のコンクリート製建造物(減圧弁室)の内部で、型枠解体作業をしていた作業者が一酸化炭素中毒になったものである。
災害の発生した工事は、直径100mmの飲用水管を延長2,296mにわたり埋設し、水圧調節弁が設置される内容積約6.8m3の減圧弁室を2カ所に埋設するものであった。
減圧弁室は、外寸寸法縦1.9m、横2.9m、高さ2.25mの直方体のほぼ密閉式の建造物であり、すでに、1つ目の減圧弁室の作業は終了していた。災害発生当日の3日前に2つ目の減圧弁室のコンクリート打設作業が行われ、午後4時ごろ、コンクリート養生の目的で減圧弁室内部に練炭を入れた。練炭は2つのコンロに2個ずつ入れ、マンホールから針金でつり下げた。次いで、減圧弁室外側に保温の目的でビニールシートが掛けられた。
翌々日、外側の型枠が外され、2つの練炭コンロにそれぞれ1個ずつ練炭を補充して、再びビニールシートが掛けられた。
災害発生当日、被災者ら4名が減圧弁室の内側の型枠解体作業および同室埋設作業にとりかかった。
午前7時20分ころビニールシートと練炭を取り出したところ、室内に練炭の臭いがしたため、マンホールを開放し、しばらく作業を見合わせた。
午前8時ころ、被災者は作業指揮者の指示により、室内へ入り作業を開始したが、2~3分たったところで体がだるくなり、頭がボーッとしてきたため、外へ出てしばらく休養した。
約20分後に、作業指揮者は、減圧弁室下部の配管用の穴の型枠を外して内部の換気をしてから減圧弁室内の型枠解体を行おうと考え、休憩していた被災者に、下部の配管用の穴の型枠の取り外し作業を指示した。被災者はその作業を開始したが、5分ほどたったところで突然倒れた。しかし、顔は青ざめていたものの意識はあり、返答ができた。すぐに会社の車で病院へ運んだところ、一酸化炭素中毒と診断され、休業15日となったものである。
なお、1つ目の減圧弁室の作業の際には、練炭が燃え尽きてから1週間ほど放置した後に型枠解体を行ったため、一酸化炭素中毒は発生しなかった。
原因
[1] 作業者に対する一酸化炭素についての安全衛生教育が行われておらず、一酸化炭素中毒についての知識が作業者になかったこと。
[2] 作業場所の有害原因(一酸化炭素)を除去せずに作業者を作業させたこと。
[3] 一酸化炭素が滞留している場所で作業者に作業させるにあたり、適切な保護具を使用させなかったこと。
対策
[1] 作業者に対し、一酸化炭素中毒に関する労働衛生教育を行うこと。
[2] 作業場の一酸化炭素を換気により除去してから作業を行わせること。
[3] 防毒マスク等の呼吸用保護具を備え付け、必要に応じて使用させること。